黄金の羊亭新館

ガープスルナルのリプレイを公開しています

第3話「母の元へ」

プロローグ

 

シューコー・・・シューコー・・・

無気味な呼吸音が聞こえる・・・

 

ダレ?

 

夢の中にいるような感覚を覚えながら、少女は思った。

シューコー・・・シューコー・・・

 

ダレカイルノ?

 

その呼吸音は自分が発しているのだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

少女は水槽の中に浮いていた。口には酸素を送るためだろうか? パイプがはめられている。

 

ココハドコ? ・・・ワタシハダレ?

 

水槽の前に、1人の女性が立っていた。

 

アナタハダレ?

 

少女の考えに答えるかのように、女性は言った

「わらわは、おぬしの母親じゃ」

 

<風龍会>にて

 GM  さて、今回は前回の続き。君たちは、いつまでもイングリッドの家にいては危ないと、<風龍会>本部へやって来たわけだ。今の内に、成長してくれ。

ユズキ  「地域知識/ミディア」を覚えました。これで、この街の70%はうちのシマだと自信を持っていえます(笑)

GM  実際のシマは40%くらいだけどね(笑)

ヒスミ  「ナイフ投げ」取りました。手裏剣みたいにクナイを投げたいなぁ。

GM  クナイのデータはナイフと同じにしようか。

ヒスミ  あとは、体力を上げたいので溜めておきます。

イングリッド  一気に《飛行》まで覚えてみたわ。

GM  OK。では、ゲームを始めよう。前回、君たちは銀龍姫とか言う女の子に狙われることになった。

ユズキ  そうだ。その前に、ガイル似の男や無くなった魔剣の事件はどうなったのですか?

GM  ガイル似の男は見つかったんだが、捕まえる時に<風龍会><表裏のコイン>の構成員数人を道連れに自殺された。

イングリッド  じゃあ、そいつが何者なのかは分からず仕舞い?

GM  そうなるね。で、魔剣は見つからず。黒ローブが何者なのかも分からない。ただ、彼らが服用していたドラッグは、興奮状態にすることで痛覚を鈍らせ精神への抵抗が高まり、体力と敏捷力を増強させるもの。副作用として効果時間が切れるとしばらく幻覚に悩まされ身動きが取れなくなるのと、強烈な光や音に弱くなる。中毒性も高い。この薬は、<朝焼けの梟>がよく使うものだそうだ。

ヒスミ  麻薬です。<風龍会>のシマじゃ、麻薬はご法度です!

ユズキ  うちのシマを荒らす奴を、許すわけにはいきません。

GM  まあ、ばら撒かれたという話は聞かないけどね。

イングリッド  あなたたちの気持ちも分かるけど、まずは私たちの身の安全の方が大事なんじゃない? 銀龍姫が狙っているのは、私だけじゃなくてヒスミもなんだし。

ユズキ  そうですね。いずれにせよ<朝焼けの梟>とは決着をつけることになるでしょうけど。まずは、今後の方針を決めましょう。といっても、僕は<風龍会>に銀龍姫のことを調べてもらうくらいしか思い浮かびません。

イングリッド  一箇所だけ・・・少なくとも銀龍姫の手の届かない場所に心当たりはあるわ・・・

ユズキ  どこですか?

イングリッド  私のお母様の所。正直、行きたくない所なんだけど。

ヒスミ  イングリッドのお母様って、どこに住んでらっしゃるの?

イングリッド  フォーシーズン研究所よ。

ユズキ  あの、大きな研究所ですね。魔術師もたくさんいるみたいですし、たしかにここより安全かもしれません。それに、匿ってもらわなくても刺青や銀龍姫の話も聞けるかも。情報があれば奴らへの対応策が見つかるかもしれません。

イングリッド  お母様の知恵は、そこいらの天才のはるか上を行くわ。知識量も半端じゃない。話しさえできれば有益な話を聞けるはずよ。ただ、私の話を聞いてくれるかどうか・・・

ユズキ  仲が悪いのですか?

イングリッド  そういうわけじゃないけど・・・

ヒスミ  弱気になってイングリッドさんらしくないです。

イングリッド  そう・・・かもね。

ユズキ  ダメもとでも、行ってみましょうよ。

イングリッド  そうね。(ボソッと)それに、お母様なら姉さまたちのことを何か知ってるかもしれない・・・

ヒスミ  え?

イングリッド  なんでもないわ。

ヒスミ  じゃあ、お父様にフォーシーズン研究所まで入ってくるって、話してくるね。

GM  ゴウケンはOKを出してくれる。

ゴウケン  恩人の手助けをするのは、人として当然のことだからな。

ヒスミ  そうですね。

ゴウケン  ユズキよ。この霊薬を渡しておくから、ヒスミに何かあったら使うのだぞ。

ユズキ  これは?

ゴウケン  25000ムーナの高級霊薬だ。

イングリッド  それって(笑)

ユズキ  分かりました。お嬢のためだけに使うことにします(笑) 隠しておきましょう。

ヒスミ  じゃあ、しゅっぱぁーつ! の前に、お店にしばらく休むって言ってこよ。

 

 一行は、レベッカ、メイベル、月の他に、火(ヒスミの仲間集団の1人。他に、水、木、金がいる)も連れて、馬車に乗りフォーシーズン研究所へと向かう。

 

GM  途中、一泊するためにフォーシーズン研究所近くの街、アストリアに寄る。ここの<風龍会>支部はユズキのお父さんが率いている。

ヒスミ  ユズキのお父さんてどんな人?

GM  中性的な美形で、すらりとした体格の背の高い人。ヒスミより少し高いくらいかな? 魔銃のロングバレルを使うスナイパーだったけど、数年前足を怪我して引退した。歳は30前半。

ヒスミ  か・・・かっこいぃ~。ユズキぃ、挨拶していこ~。

ユズキ  けっ! あんな奴に挨拶する必要ないですよお嬢。僕より背が高くてお嬢に気に入られた時点で、親父は憎むべき敵になりました!

一同  (笑)

ヒスミ  お父さんの名前は?

ユズキ  でっかい柚子をバンペイユ(晩白柚)って言うそうですので、バンペイで(笑)

ヒスミ  かっこ悪(笑)

GM  通称はバンさんって所だな。

ヒスミ  あ、それならかっこいいです。

ユズキ  あんな奴、バンペイで十分ですよ。

一同  (笑)

ヒスミ  挨拶だけして行きましょう。こんにちはー!

バン  おや? ヒスミお嬢様にユズキ。今日はどうしたんだい?

ユズキ  けっ。気障ったらしいしゃべりかたしやがって(PLは笑)

ヒスミ  街に寄ったので、おじさまに会いに来たのです。これからフォーシーズン研究所に行くのです(ニコニコ)

バン  ゴウケン組長のお使いかい?

ヒスミ  いえ。お友達のお母様に会いに行くのです。

バン  そうか。遠いところ大変だな。

GM  バンはヒスミの頭をなでようとするが、躊躇する。

バン  おっと。ヒスミお嬢様も、もう子どもじゃない。頭をなでるのは失礼かな?

ヒスミ  そんなことないですよぉ。なでてください。

バン  そうか?(なでなで)

ヒスミ  (ごろごろと甘える)

ユズキ  こ・・・この野郎っ! お嬢より背が高いからって、調子に乗りやがってぇぇぇ!(魔銃を構えて震えている)

バン  どうしたのだユズキ? 機嫌が悪そうだが?

ユズキ  (無理に笑顔を作って)いえいえ。なんでもありませんよ、お父さん。

バン  そ・・・そうか? 微妙に殺気を感じるのだが・・・

ユズキ  そりゃそうですよ。もうこのクソ親父を撃ち殺したくて撃ち殺したくてしかたがありませんから!! ・・・と、心の中で。

一同  (笑)

イングリッド  仲が悪いんじゃなくて、一方的にユズキが嫌っているのね(笑)

ユズキ  親父が嫌いなわけじゃないんですよ。お嬢より背の高くてかっこよくて、お嬢に気に入られた男全てが嫌いなのです!

一同  (苦笑)

バン  では、ユズキ。ヒスミお嬢さんの護衛役。しっかりこなせよ。

ユズキ  もちろんですよ。(心の中で)言われなくても分かってるよクソ親父!

イングリッド  ブラックユズキ全開ねぇ(笑)

 

 2人は挨拶後他メンバーと合流し、翌日フォーシーズン研究所へと向かう。

 

剣 鬼 降 臨

 GM  さて、フォーシーズン研究所の敷地までもう少しというところまで来た。

ユズキ  あ、僕は馬車の上から周りを警戒していますね。

GM  さて、フォーシーズン研究所の周りには、結構広い人工林がある。

イングリッド  そういえば、ウィルがそこで死にかけたことあったわね。(龍の鼓動編ROUND2参照)

GM  その林に差し掛かろうというとき、後方から馬の嘶きと蹄の音が聞こえる。

ヒスミ  ユズキぃ、何か見えるぅ?

GM  うむ。気性の荒そうな大柄な黒馬に乗り、3メルーは余裕にありそうな大剣を持った、漆黒の武者鎧を着た奴が疾走してくる。

イングリッド  それって、ダイゼン・・・

GM  ま、そうイメージしてくれても構わない。そいつは大声で叫ぶ。

武者鎧  我が名はギンリュウキ!

一同  えっ?

ヒスミ  銀龍姫って・・・

イングリッド  あ、何となく分かった。「キ」の字が違うのよ。この場合は「騎」かしら?

ユズキ  僕は「鬼」かと思いました。

GM  「鬼」が正解。

銀龍鬼  我らが姫の命により、汝らの命、もらい受けるっ!!

GM  銀龍鬼は大斬馬刀を構え、馬車に向かってくる。

イングリッド  問答無用ってわけね。強そうだし、逃げるわよ。

ヒスミ  月さん! スピード上げて!

ユズキ  火炎・・・いえ、「べたべた弾」を足元に撃ちます! イングリッドさん、逃げやすい道を月さんに指示してください!

イングリッド  分かったわ。少し大回りになるけど、広くてカーブも少ない道を行く。

 

 かくて始まる大レース。小回り、スピードともに劣る一行の馬車だが・・・

 

ユズキ  馬の足元に「べたべた弾」を撃ちます。地面狙いですから、+4の修正入れてもいいですよね?

GM  いいよ。

ユズキ  でしたら、命中。

GM  銀龍鬼は「べたべた弾」着弾点を華麗な曲馬で回避。

ユズキ  ちっ! でも、着弾点を避けて移動する分、移動力が落ちるでしょう?

GM  その通り。

銀龍鬼  小癪な真似を・・・

 

 さらに・・・

 

GM  移動力を落とさずカーブを曲がる場合、直進の余剰移動分のペナルティ受けて、月の「御者」判定ね。基本目標値は13。

イングリッド  とは言え、移動力を落としたら追いつかれる・・・

ヒスミ  月さん、そのまま突っ切って! (ころころ)出目は8ですので、急カーブをまがるのに成功しました。さすが月さんです!

 

 こんな調子が続き、何度かあるカーブを次々とクリア。しかし、銀龍鬼も達者な馬術で「べたべた弾」をかわしつづけ突進してくるため、彼我の距離は離れない。

 

GM  そうだ。メイベルが怯えているが?

イングリッド  抱きしめてなだめるわ。大丈夫よメイベル。私が絶対守るからね。・・・そうだ。この子は私が守る。

GM  一応、暴走判定もしておいてね。

イングリッド  成功よ。

ヒスミ  暴走するとどうなるのか、ちょっと気になるなー(笑)

 

 コースが直線に差し掛かったところで、銀龍鬼が馬上で立ち上がった。

 

ユズキ  今なら当てられるか? 「火球弾」に入れ替えます。上手く行けば馬から叩き落とせる。(ころころのころころ)よし、自分で判断できたし、「準備」も「再装填」も成功。命中しかかってます。

GM  その火球は、大斬馬刀の一閃でかき消された。

銀龍鬼  脆弱なり! 次はこちらからゆくぞ!

GM  銀龍鬼は、左手で大斬馬刀を支え、右手で腰の曲刀を抜いて馬車の車輪目掛けて投げつけてくる!

イングリッド  斬艦刀大車輪ね(苦笑)

ヒスミ  ユズキ、撃ち落して!

ユズキ  はい!

 

 回転しながら飛翔してくる刀を「火球弾」で撃ち落そうとするユズキだが、狙いはわずかにそれてしまい刀は馬車の車輪を破壊する。8輪の馬車なのでまだ走ることはできるがバランスが崩れやすくなり、月の「御者」技能にペナルティが与えられることに。

 それでもなんとか「べたべた弾」とサイコロ運で切り抜けるが、人工林の3分の2まで来た所で魔銃を使いつづけたユズキの疲労が限界に達する。

 

ユズキ  (息切れしながら)この銃の・・・最大の欠点は・・・疲労がひどいことです・・・

ヒスミ  ユズキぃ、大丈夫?

ユズキ  大丈夫・・・です。まだ、いけます。(小声だが奮い立たせるように)お嬢は僕が守るんだ・・・

 

 さらに・・・

 

GM  さて、距離は短いがカーブが多く狭い道との合流点に着くな。そこには黒髪の少年がいる。なんか、刀を持ってるね。

ヒスミ  先回りされてたー!

GM  小回りの効く奴に先回りさせるのは、基本中の基本だ。

ユズキ  しまった。それくらい思いつくべきでした。

イングリッド  かわいそうだけど止まっている暇はない。月さん、そのまままっすぐ。そこの少年、どかないと轢き潰すわよ!

GM  少年は動かない。ひき潰したと思った瞬間、少年の姿は忽然と消える。後ろにいたユズキなら分かるが、馬車の後ろに《瞬間移動》でもしたかのように現れた。そして・・・だれかサイコロ1個。

ヒスミ  2です。

GM  だったら、馬を繋いでいるヒモの内、2本が切れている。紐が切れた馬は馬車の動きから外れる。馬車のスピードはさらに落ちてバランスも悪くなる。御者判定に-4ね。

ヒスミ  (判定して)それでも成功しました。さすがは月さん。こんな状態でもちゃんと操縦してます!

イングリッド  少年はどうしてる?

GM  追ってくる様子はない。

ユズキ  (疲労が限界に達した状態で動けるかの意思判定を行い、成功)まだ、もう1、2発ならなんとか魔銃が撃てるか・・・。

ヒスミ  ユズキ、無理しないで。

ユズキ  大丈夫です。お嬢。

 

 ユズキは最良のタイミングを待つため、あえて銀龍鬼を馬車に接近させる。

 

GM  だれかサイコロ1個振って。1なら周辺に木がなく大斬馬刀を振るい放題。2~4ならペナルティあるけど振れる。5、6なら木が茂っていて振るえない。

ヒスミ  6です!

GM  ちっ、ならば、銀龍鬼は馬上で跳躍し馬車の屋根の上に飛び乗る。

ユズキ  今だ! 着地でバランス崩しているところに、火炎弾を叩き込みます! ダメージは12点!

GM  (色々判定して)バランス崩はしたが、屋根の端を掴んで、落ちるのは阻止した。

イングリッド  月さん! カーブして!

GM  ちっ。そう来るか。さすがに振り落とされた。

銀龍鬼  むぅ!?

ヒスミ  (月の「御者」判定を行いファンブル)みんな、ごめーん(泣)

イングリッド  泣かなくていいわよ。今まで、よくがんばったんだから。

GM  じゃあ、銀龍鬼も振り落とされたけど、馬車も横転した。敏捷力-3か、軽業+2で判定。失敗すると、体をどこかでぶつけて1Dダメージね。あ、ユズキは失敗すると馬車の外に放り出される。

ユズキ  放り出されました。正直、もうまともに動けません。

イングリッド  私もかすり傷負ったわ。あと、メガネにひびが入った。

ヒスミ  ダメージありません。メイベルを抱えて、馬車の外に出ます。

イングリッド  ヒスミ、その子をお願い! 暴走判定は成功。

GM  む、つまらんな。振り落とされた銀龍鬼も立ち上がり、大斬馬刀を拾って君たちに近づいてくる。

ヒスミ  (にっこり笑って)大丈夫だよ、メイベル。

メイベル  (反応判定をして、結果は「とても良い」)う・・・うん。

ヒスミ  研究所に向かって走ります!

ユズキ  そうだ、最後の力で、空に向かって幻影弾を撃ちます。内容は、「HELP」

GM  なるほど。警備員の連中は(ころころ)お、気付いたか。

イングリッド  《飛行》の呪文に集中。お母様に助けを求めに行くわ。最初からそうしてればよかったけど、覚えたての呪文だったから、忘れてたわ(苦笑)

GM  (イングリッドが単身飛んでいった場合、途中の少年が邪魔したんだけどね。)

 

 イングリッドが飛んでいった後、レベッカ、火らが次々と馬車から跳び出し、銀龍鬼の足止めのために前にでる。

 

GM  あ、さっきの周辺の木々がどうなっているかの判定をもう1度。

イングリッド  ちっ、3よ。

GM  ならば・・・

銀龍鬼  向かってくるとはその意気や良し。されど、我が太刀に耐えられるかな!?

GM  銀龍鬼はレベッカと火に対して、大斬馬刀を薙ぎ払うように一閃する。2人とも防御判定を。

レベッカ  何とか、シールドバトンで「受け」たわ。

火(ヒスミのPL)  後退して、刀で「受け」た。

GM  だったら、2分の1の確率で武器が壊れるからサイコロ振って。それと(ころころ)ダメージは25点だから3メルーほど吹っ飛んでくれ。

レベッカ  シールドバトンが壊れた。こうなったら・・・

 

 まともに戦っても勝ち目は無いと、レベッカ人狼形態に変身。固有能力の加速*1を発動させ、かく乱戦法を取ろうとする。火は倒れたまま転がって距離をとる。

 

GM  銀龍鬼は、君たちのことなど歯牙にもかけず、お嬢を追って移動力9で疾走するぞ。

レベッカ  せっかくかく乱しようとしたのに、無視された?

ヒスミ  うわぁ? 追いつかれるぅー。

GM  その時、研究所の方から何人かの警備員がやってくる。

警備員  お嬢ちゃん、何があったのかね?

ヒスミ  おっきな剣を持った奴に追われてるんです。助けてください!

警備員  何? 分かった。君は下がっていなさい。

ヒスミ  あ! 相手は化け物です。近づかないようにしてください!

GM  その時、林の間を疾走する銀龍鬼が姿を表した。

 

 そのころ、イングリッドは、母親のいる研究棟へと辿り着いていた。

 

GM  バンダナつけた、全身刺青のエルファが迎えてくれる。

リネール02  おや、お客様ですか? って、ヒンメル先生?

イングリッド  お願い、お母様に会わせて!

リネール02  は?

ヒンメル  ほほほ。久しぶりに来たと思ったら、ずいぶんと面白い連中を連れてきたようじゃのう。

リネール02  あれ? マスター?

イングリッド  (怯えた声で)お・・・お願いですお母様。私の仲間を助けてください・・・

ヒンメル  見返りは?

イングリッド  わ・・・私が・・・私の身を、差し出します! ですから、お願いします!

ヒンメル  ふむ。もともと、わらわのものである、お主の身を差し出されたところで、わらわには何の益もないがのう?

イングリッド  そ・・・そんな・・・お願いです! どうか・・・どうか!

ヒンメル  まあ、よかろう。玄関で騒がれるのも、鬱陶しいしのう。

GM  ヒンメルは《瞬間移動》する。さて、もう少しで森を抜けるというところで、銀龍鬼は30名近い警備員と魔法使いに囲まれ、さすがに手間取っている様子。警備員側も、血気盛んな奴が数人突撃したら、竜巻切りで両断されかけたので、今はネットや飛び道具で牽制中。その時、銀龍鬼の前に、めがねを外して、髪を縦ロールにしたイングリッドが出現する。

ヒンメル  ほほぅ。なかなか面白そうな奴じゃが、わらわの敵ではないな。

銀龍鬼  むぅ?

ユズキ  イングリッドさん・・・無茶です・・・

 

 そこでユズキの意識は途切れた・・・

 

MOTHER.「M」を取ったら?

GM  さて、ユズキくんは目を覚ますとベッドの上で寝ている。

ユズキ  あれ? ここは?

ヒスミ  ユズキぃぃっっ! 飛び掛って抱きつこうとして、頭ぶつけるぅ!

ユズキ  (ヒスミのヘッドバットを喰らい)あだっ!

GM  ユズキくんは再び意識を失った。

ヒスミ  あれ? こらぁー! ユズキぃー! 起きろー!(ユズキの首をガクガク)

ユズキ  (目を回して)きゅう・・・

 

 気を取り直して

 

ヒスミ  心配したんだよぉ、ユズキぃ。でも、無事でよかったぁ。

ユズキ  僕なんかのために心配してくれて、ありがとうございます。

ヒスミ  ユズキは私の弟なんだからね! 心配するのは当然だよ!

ユズキ  ぐはっ! さり気に痛いこと言われた。そうか、弟か・・・

一同  (笑)

ユズキ  ところで、ここはフォーシーズン研究所なのですか?

ヒスミ  うん。そこの医務室。

GM  さて、目を覚ましたのなら、医務室の責任者が現れて、君ら全員ヒンメル先生に呼ばれていると言う。

ユズキ  ヒンメル先生?

ヒスミ  イングリッドさんのお母様。すごい人だったよぉ。あの銀龍鬼をやっつけちゃったんだから。

GM  いや、別にやっつけてはないがね。

ヒスミ  え? そうなの? だったら、どうなったの?

GM  ま、それはヒンメルの所に行ってからのお楽しみ。

 

 そんなわけで、ヒスミとユズキ、そして別室にいたラインはヒンメルの研究棟へ足を運ぶ。月と火は馬車の修理に行っているらしい。

 

GM  研究所には、全身刺青でバンダナつけた怪しいエルファ(リネール02)。チャイナ服を着た、かわいい貧乳の女の子(ティリン)。

ティリン  貧乳言うなー!

GM  (無視)メイド服のかわいいおちびちゃん(エリィ)。それに、銀龍鬼がいる。

一同  え!?

銀龍鬼  我が名は銀龍鬼。ヒンメル様に忠誠を誓いし者。

イングリッド  うわ、洗脳されてる(笑)

エリィ  (銀龍鬼によじ登りながら)うわぁ、おおきいですぅ!

GM  エリィが頭を掴むと、兜がポロリと落ちる。中身は空。

エリィ  はわわ? ベッツさんまた鎧になっちゃったのですか!?

銀龍鬼  我が名は銀龍鬼。ベッツではない。

エリィ  なーんだ。別人か。

イングリッド  鎧のゴーレムね。

GM  その部屋には他に、隅っこで小さくなって震えているイングリッドと、それをなだめるメイベル&レベッカ。それに、髪や瞳の色、髪型などは違うがイングリッドのそっくりさんがいる。

ユズキ  あなたが、ヒンメルさんですね。僕の名前はユズキ・フウレン。・・・(左手を出して右手を後ろに回して)おひけぇなすって。

一同  (爆笑)

ヒスミ  何で今ヤクザの挨拶やねん(笑)

ユズキ  いえ、キャラクターシート見たら、「礼儀作法/極道」しか持っていなくて(笑)

ヒンメル  ほほほ、今のはわらわも予想しておらなんだぞ。イングリッド、中々面白い奴らを連れてきてくれたのう。

イングリッド  は・・・はい・・・。

ヒンメル  それにしても、よく来たな。我が分身よ

ユズキ  分身?

ヒスミ  ・・・え? 私?

ヒンメル  うむ。おぬしの青い蝶の痣が何よりの印。

GM  ヒンメルが手をかざすと、指先から青い蝶が現れる。

リネール02  あ、それくらいでしたら私でもできますよ。幻覚で蝶を作ります。

エリィ  わーい。蝶々だー!(追いかける)

GM  で、ヒンメルの出した蝶は、みるみる人の形になる。鎖骨に蝶の痣がついてるね。

ヒスミ  ・・・え?

ユズキ  ・・・これが、お嬢の正体だと?

ヒンメル  そうじゃ。じゃから、おぬしとわらわは元々1つの存在。さあ、わらわの内に戻れ。

ヒスミ  (恐る恐る)戻ったら、どうなるの?

ヒンメル  わらわのキャラクター操作権が、おぬし(ヒスミのPL)に移る。

ヒスミ  ふらふら~~(笑)

ユズキ  ダメですお嬢ぉぉぉぉぉ!!(笑)

イングリッド  まさに悪魔の囁きね(笑)

ヒンメル  ま、冗談はさておき・・・

ユズキ  あ、冗談だったんだ(胸を撫で下ろす)

ヒスミ  えー? 冗談だったのー?

イングリッド  何よ、この見事に対称な反応は(笑)

ヒンメル  おぬしの母は先の即席分身などではなく、わらわが1から完全に創り上げた我が分身。わらわの妹とでも言うべき存在じゃ。

イングリッド  メイアさん?

ヒンメル  いや、別の妹じゃ。妹も弟も、わらわにはたくさんおるからのう。

ヒスミ  よく分からないけど、ヒンメルさんは、私のおばさ・・・

ヒンメル  (ギロリ)

ヒスミ  ・・・お母様のお姉様になるのですね?(笑)

ヒンメル  そうなるな。

ユズキ  では、この蝶の痣は、別に特殊能力は無いのですか?

ヒスミ  ちぇー。変身できないのかぁ。

ヒンメル  ・・・(ニヤリ)

イングリッド  あれ? てことは、ヒスミって私の従妹?

ヒスミ  あ、そうなりますね。わーい。お姉ちゃんができたー。

イングリッド  (ちょっと照れくさそう)

ユズキ  あ、そうだ。これ、うちの名物「ミディアばな菜」です(笑) どうぞ。

ヒンメル  おお。気が利くのう。遠慮なく受け取らせてもらうぞ。ティリン。茶を持ってまいれ。

ティリン  わっかりましたー。

ユズキ  それで、今日はお話を聞きに来たのですが・・・

ヒンメル  まあ、そう急くな。紅茶でも楽しみながら、ゆっくりと話そうではないか。

GM  ティリンが運んできたお茶は、香り色ともにかなりの高級品であることが予想できる。カップもそこいらのものとは格が違う。

ヒスミ  おいしそう・・・

ヒンメル  遠慮なく飲むが良い。お代わりはあるぞ。

ヒスミ  いただきまーす。

ユズキ  お嬢、カップを割らないように気をつけてくださいね?

ヒスミ  大丈夫だよー。ほら、敏捷力判定成功。

イングリッド  判定しなきゃならないあたりが心配なのよね(笑)

ヒンメル  それで、わらわに何を聞きたいのじゃ?

ユズキ  ヒンメル先生。レベッカさんたちが持っている刺青について何か知っていませんか?

ヒンメル  知っておることはいくつかあるな。なにせ・・・

GM  ヒンメルはイングリッドの後ろに回り、手を前に回し舐めるような手つきでイングリッドのお腹をさする。

イングリッド  くっ・・・

ヒンメル  わらわの娘も、持っておるしのう・・・。

ヒスミ  そういえば、イングリッドさんたちって<朝焼けの梟>なの?

イングリッド  いいえ。私は別系統で刺青を植えつけられたのよ。レベッカやメイベルもね。

ユズキ  僕はてっきり、闇タマから逃げてきた人たちかと思っていました。

イングリッド  逃げてきたには違いないけどね。別の組織からだけど。

ヒンメル  なーにくすぐられて格好つけておるのじゃおぬしは? うりうり。

イングリッド  くぅ・・・お・・・お母様、くすぐったいです。

ユズキ  あの・・・

ヒンメル  おお、そうじゃったな。刺青のことじゃったな。この刺青は、ある魔法の針で刺青の元となるモノ、動物でも<悪魔>でも道具でも神、精霊の類でもよいのじゃが、対象を針で刺すことでその力を針が吸収。彫り師の手で肉体に刻むことで、その力を行使することができるようになるのじゃ。

ヒスミ  力の行使?

ヒンメル  力の行使方法は、外見が変異するタイプ、刺青の対象を操るタイプ、刺青から連想する力だけを発揮するタイプなど様々じゃ。

ユズキ  刺青の力を得るためには、針が必要なのですね。

ヒンメル  そういうことになるな。

ユズキ  その針は一度きりしか使えないのでしょうか?

ヒンメル  いや、一度刺青を彫れば針から力は消え、再び他の力を吸収できるようになる。

ユズキ  刺青の力を針で抜くことは?

ヒンメル  可能じゃが、彫られた者から刺青が離れておる必要がある。大抵深く掘られておるから、皮膚を剥いだ程度では無理じゃがな。

ユズキ  じゃあ、銀龍姫が言った回収は可能なわけか・・・。あ、そうだ。銀龍姫という邪術師について心当たりはありませんか?

ヒンメル  銀龍鬼の頭を覗いた時にその名を聞いたが、個人的な知り合いではないのう。

ユズキ  ・・・ちっ、フィーの時みたいに、勝手に怒って倒してくれればって、少し期待してたのに(笑)

ヒスミ  それだと、ミディアの街が壊滅しちゃうよぅ(笑)

ヒンメル  ・・・ところで、イングリッドよ。

イングリッド  な・・・なんでせう?

ヒンメル  おぬし、わらわの所にメイベルを預けに来たのではないのか?

イングリッド  ええ、そのつもりでした。でも、止めます。

ヒンメル  何故じゃ?(ちょっと声が低い)

イングリッド  お母様の所に預ければ、絶対安全でしょう。でも、メイベルは私たちで守るとレベッカと誓ったのです。それを思い出しました。

ヒンメル  おぬしにできるか? 銀龍姫とやらを相手に。

イングリッド  (ヒンメルを正面から見て)分かりません。でも、守って見せます。お母様、あなたの娘にそれくらいの見栄は張らせて下さい。

GM  ヒンメルは、無言で君に近づいてくる。

イングリッド  (目を瞑り、歯を食いしばる)

ヒンメル  ・・・くぅぅぅ! 可愛い。可愛いのうおぬし!(抱きついて頭をくしゃくしゃ)

イングリッド  ・・・・・・へ? あ・・・あの、お母様? 予想外のことなので、ちょっとびっくりしてます。

GM  そして、いきなりイングリッドの唇を奪う。

ヒスミ  えぇー?

イングリッド  むぐ?

リネール02  (嘘泣きしながら)うう・・・これが親子愛なのですね。

エリィ  (ハンカチを持って)感動ですぅ。

ティリン  涙無しには語れません!

リネール02  幻覚で涙の池を作りましょう(笑) だばだー♪

GM  えーっと、ついでにかなり奥まで舌を入れて来て、下腹部・・・まあ、君の刺青があるあたりを優しく撫でる・・・「性愛術」の成功度は11。

イングリッド  (恍惚とした表情で)ン・・・

GM  で、ヒンメルの舌から、イングリッドの体内に強い魔力が流れ込んでくる。使い捨てで魔法使用時に疲労点の変わりに消費できる魔力が50点ほど手に入る。ヒンメルが唇を離すと、君は腰が砕けて座り込む。

イングリッド  ハァー・・・ハァー・・・

ヒンメル  おぬしの覚悟は分かった。今のはわらわからの餞別じゃ。遠慮なく受け取るが良い。

イングリッド  (立ち直って)ありがとうございます、お母様。でも、もし私が倒れるようなことがあれば、その時はメイベルをお願いします。

ヒンメル  い・や・じゃ♪

イングリッド  っ・・・!

ヒンメル  お主が倒れれば、もうメイベルを守る者はおらぬのう。

ユズキ  きっと、この人なりの励まし方なのですよ。

イングリッド  ・・・そうね。

ヒンメル  他に、何か聞きたいことはあるか?

イングリッド  銀龍シリーズについて、何か知っていませんか?

ヒンメル  銀龍鬼の頭の中を覗いた時に、銀龍騎と銀龍忌という名前を見つけたのう。

ヒスミ  他にもたくさんいそうです。「樹」とか。

ユズキ  「旗」とか。

GM  旗ってどんな奴だよ(笑)

イングリッド  「亀」とか(笑) ひっくり返ったら何もできなさそう(笑)

ヒスミ  あ、それいいなぁ。敵に出てきたら楽そうで(笑)

GM  格闘家の銀龍季とか、ロボットの銀龍機もよさそうだな(笑)

 

 他にも様々な銀龍シリーズのネタが出されたが、割愛。

 

ヒンメル  他に聞くことが無いのならば、ミディアの<風龍会>本部まで送ってやろう。

イングリッド  (・・・姉さまたちのことを聞こうと思ってたけど、お母様に頼りすぎるのはよくないわね。やっぱり、自分で探してみましょう。)

ヒスミ  わーい。ありがとうございます。

イングリッド  お母様、お邪魔しました。

ヒンメル  最後に聞くが、本当にメイベルを置いて行かんでよいのじゃな? ここならば、たとえ神でもメイベルを奪うことはできんぞ。

イングリッド  ・・・・・・

ヒンメル  ちょうど、ティリン考案の触手君1号の稼動テストもしたかったしのう。

イングリッド  絶っっっっ対に連れて帰りますっ!!

ティリン  あれは、先生が僕をいぢめるために作ったんじゃないですかぁー。ボクが考えたんじゃないよぉー!

イングリッド  ・・・でも、ありがとうございます。

ヒンメル  ? 何がじゃ?

イングリッド  色々です。

ヒンメル  何じゃ。言わぬと分からぬでわないか。

イングリッド  言いません。秘密です。

ヒンメル  ・・・しょうがないのう。では、おぬしらを<風龍会>本部へ送る。抵抗するでないぞ。

GM  ヒンメルが指を鳴らすと、君たちの目の前の風景が一瞬ぶれる。次の瞬間には、ヒスミやユズキには慣れ親しんだ場所にいるのだが・・・

ヒスミ  だが?

GM  足元に感覚が無い。しかも、下は池だ。

一同  (ぼちゃーん)

イングリッド  メイベル! メイベルは!?

ヒスミ  大丈夫です。私が支えました!

GM  すると、池の上からヒンメルの声が。

ヒンメル  (清清しく)ほほほ。すまぬのう。少々座標を間違えてしもうた。

ユズキ  絶対わざとだ・・・

ヒンメル  では、体に気をつけるのじゃぞ。

GM  そう言ってヒンメルは消える。

ヒスミ  へっぷし!

ユズキ  お嬢、今タオル持ってきますね。

 

ドキッ! 男だらけのパンツ大会

 

 変則的ではあるが、シナリオが一区切りしたので、CPを得る一行。

 成長作業を行いつつ服と体を乾かし、<風龍会>本部で今後の方針を考える。しかし、相手は神出鬼没で手下がどれだけいるかも分からない銀龍姫。

 結局、ヒンメルのところに行く前にも考えた「裏社会に情報を流し他の有益な情報が入ってくるまでは待ちに徹する」という結論に達した。

 

ヒスミ  ・・・あれ? そういえば、月さんと火さんは?

ユズキ  あ、フォーシーズン研究所に置いてきた(笑) 僕たちが帰ってきたことを知れば戻ってくるでしょうけど、一応アストリア支部に連絡入れておきましょう。

GM  了解。魔法使っても情報が伝わって帰ってくるまで、4日はかかるな。そんなことを話していると、時間はもう夜になる。なにか倒れる音がして、表が騒がしいよ。

ヒスミ  何々ー? 見に行くー。

GM  うむ。するとだな、フォーシーズン研究所前の森の中で出会った少年が、組員に囲まれている。

ユズキ  倒れる音って言ってましたけど、誰か倒れてます?

GM  うむ。入口の鉄の扉が細切れにされている。その向こうでは、門番が倒れている。血は出てないから、殴られたんだろう。あ、囲まれながら少年は扉を魔法で直したみたいだね。詠唱にジェスタ様がどうこうって言葉が聞こえた。

ヒスミ  あぁ!? あのファンシースキーなおじいさんに、何てことを(笑)

ユズキ  ジェスタ様の信者が扉を壊すなー! ザインじゃあるまいし、直せばいいってもんじゃないんだぞ(笑)

組員A(実はイングリッドのPL)  なんじゃこのガキャァ。ここがどこか、わかっとるんかい!

組員B(実はユズキのPL)  なめたまねしくさっと、ぶっ殺すぞワレェ!

一同  (笑)

少年  待って下さい。僕は、妹を探しに来ただけなんだ。

組員A  妹ぉ? ここにてめえなんぞの妹がおるかい! 分かったなら、さっさと帰れ!

組員B  帰らねぇってんなら、すこぉし痛い目見てもらうぜ?

少年  (ため息)止めといた方がいいよ。あなたたちでは、僕に触れることもできない。

ヒスミ  天然で挑発してます(笑)

組員B  んだと、ゴルァ!

GM  ゴルァは微妙に違うと思うが、組員はドスを抜いた。と、思ったら、ドスは根元から折られている。少年は刀を持っているんだが、それを抜いた様子は無い。

ユズキ  見えない刃?

GM  切られたのはドスだけでないらしく、ドスを抜いた組員ABのズボンがずれる。組員たちは慌ててズボンを直す。

組員  て・・・てめえ、何しやがった!?

ユズキ  ベルトが切られてる(笑)

ヒスミ  破廉恥だー(笑)

イングリッド  パッチワーク柄のパンツなんて、趣味が悪いわね(笑)

GM  勝手にパンツの柄が決めないで(笑) 君たちが騒いでいると、少年がそっちに気付いた。ヒスミを見て、すごく嬉しそうな顔をする。

少年  ヒスミ! やっぱり、研究所の前で見たのはヒスミだったんだね!

ヒスミ  へ? 私? 知ってる人?

GM  研究所の前であったのが初対面だと思うよ。もちろん幼い頃に会っていた可能性は捨てきれないけど。

ユズキ  く・・・この野郎! お嬢を呼び捨てにするんじゃねぇ・・・と、心の中で歯ぎしり(笑)

イングリッド  直接言ってやりなさいよ(笑)

ユズキ  だって怖いもん(笑)

少年  何言ってるんだよヒスミ。僕だよ、君の兄だよ。

ヒスミ  兄? え? 私にお兄さんなんていた?

ユズキ  いえ。お嬢は一人っ子ですよ。

イングリッド  その少年、どんな外見? 何歳くらいに見える?

GM  黒髪に黒い瞳。身長はユズキと変わらないくらい。童顔ってだけの可能性もあるけど、ヒスミより年上には見えない。

ヒスミ  年下のお兄さんだー(笑)

イングリッド  マニアックなキャラ配置を(笑)

ユズキ  そこの人、お嬢は一人っ子です。お兄さんなんていませんよ。

少年  それは・・・きっと記憶を操られているんだよ。

ユズキ  いえ、でも、僕はお嬢とずっと一緒にいました。お嬢は一人っ子のはずです。

少年  うーん・・・2人とも記憶操作されているとか?

ユズキ  えぇー?

少年  いや、さすがにそれは無いと思うけど、僕の記憶の欠片が、ヒスミを僕の妹だって告げているんだ。僕には記憶が無いけど、それは分かるんだ。

イングリッド  こいつ、かなり電波入ってるわね。

GM  ただ、瞳は純粋そのもの。嘘をついているのでもなければ、変なものに憑かれている訳でもなさそう。そのとき、少年の少し上に、黒翼の少女が現れる。

一同  銀龍姫!

銀龍姫  無駄よぉ銀龍騎ぃ。

ヒスミ  銀龍騎

イングリッド  同じ発音じゃ、判別しづらいわね。

ユズキ  これからは銀騎士とか、銀姫とか呼びましょう。

 

 セッション中はそのように呼ばれていましたが、リプレイではイメージ優先のため銀龍騎、銀龍姫と表記します。

 

イングリッド  この子も、あなたが操っているのかしら?

銀龍姫  操るだなんてひどいわぁ。私はこの子を助けてあげたんだからぁ。ねぇ、銀龍騎ぃ。こいつら、全員であなたの妹をあなたから離れさせようとしてるみたいよぉ。力ずくで奪っちゃいなさいよぉ。

龍騎  そうするしか・・・ないのか・・・(刀に手をかける)

ヒスミ  そんなこと無いよ。話し合おう? そうすれば、きっと分かり合えるよ。ね? そうしよう? お兄ちゃん!!

一同  (大爆笑)

イングリッド  (笑いながら親指を立てて)ナイスよヒスミ!

GM  あ~・・・そう言われると、フラフラと君の方に近づこうとするなぁ(笑)

一同  (さらに大爆笑)

イングリッド  (大笑いしながら)だめだー! こいつ妹属性持ってやがる!

GM  (何とか笑をこらえつつシリアスに)しかし、銀龍姫は良い顔をしない。舌打ちして指を鳴らすと、銀龍騎から表情が消える。

ユズキ  完全に操られた? こうなったら・・・(大きく息を吸って)であえであえーい!

GM  その声を聞き、刀や匕首武装した組員たちが、障子や建物の影から集まってきた。

ユズキ  こやつは恐れ多くもお嬢の兄を名乗る不届き者。切れ切れ、切り捨てーい(笑)

GM  「ははっ!」と返事をしつつ刀やドスを抜き、少年を取り囲んだ(笑)(BGMに「暴れん坊将軍殺陣のテーマ」を流す)

イングリッド  何でそんな曲を持っている!? いえ、そんなことより、私らが切られる側なの!?(爆笑)

ユズキ  今の内に逃げましょう。相手の力がまるで分かりません。

ヒスミ  え? でも・・・

イングリッド  組員が心配なのは分かるわ。でも、今はあなたが逃げるのが先決。捕まったら何されるか分かったもんじゃない。

ヒスミ  それだけじゃなくて、あの子のこと少し気になるから・・・

ユズキ  あのガキ、いつか殺ス!(笑)

銀龍姫  銀龍騎ぃ、こいつらはあなたから妹を奪おうとしてるのよぉ。大事なものを守るためにはどうすればいいか・・・分かるわよねぇ?

GM  組員3人が銀龍騎に切りかかる。しかし、銀龍騎は君らの方を向いたまま、切りかかってきた組員の後ろに《瞬間移動》でもしたかのように見える。そして、銀龍騎の刀から鍔鳴りの音が聞こえたかと思うと・・・

一同  (唾を飲み込む)

GM  組員たちの服が切り裂かれ、パンツ一丁になる!

一同  (大爆笑)

GM  その様子を見て、銀龍姫はまた舌打ちをしている。

ユズキ  完全に銀龍姫の思い通りに動いているわけではなさそうですね。

GM  (まぁ、ヒスミの精神的な揺さぶりが無ければ、遠慮なく、ぶった切っていたんだけどね)で、銀龍騎は短距離の《瞬間移動》を繰り返し、進行方向上にいる組員の服を次々と切り裂いていく。ただし、剣を抜いた様子はなく鍔鳴りの音だけが聞こえる。

ヒスミ  男だらけのパンツ一丁大会だー(笑) ポロリもあるよ?

ユズキ  そんなものはいりません(笑)

イングリッド  お母様の時といい、さっきの「お兄ちゃん」といい、今日のセッション何かテンションが変よ?(笑)

ユズキ  早く逃げましょう! お嬢が切られることは無いと思いますが、魔銃を切り裂かれたくありません! 館の外に出る抜け道ってありますよね?

GM  うん。ここから一番近いのは、組長の部屋のもの。

 

 一行は、レベッカとメイベルを連れて組長ゴウケンの部屋に直行。事情を話し、抜け道から逃げることにする。途中、ゴウケンの部屋に飾ってあった、大太刀(突き刺し用グレートソードと同じデータ)をヒスミが勝手に持っていったのは公然の秘密だ。

 

GM  ゴウケンは、敵の顔だけでも見てくると部屋を出る。組長が出て行った廊下から「お前は!?」という驚いたような組長の声の後、誰かが倒れる音がする。

ヒスミ  お父様!?

ユズキ  組長は殺しても死なない人です! まずは、お嬢の安全確保が先です! ・・・すみません組長。どうか、ご無事で。

 

 <風龍会>を脱出した一行は、ユズキの後援者でもあるショウの家に転がり込むことに。

 

GM  ショウさんは、アパートの一室を買って、そこをねぐらにしている。かなり散らかってるね。

ショウ  すまんな。最近シマウマの姿の怪人が暴れまわってるっていう妙な事件があって、掃除してる暇がねぇんだ。

ユズキ  いやそれ、犯人あなたでしょう?

ショウ  何故かみんな、俺を疑うから困ってんだよ。

イングリッド  何かの伏線かしら?

GM  いや。ただのネタだ。

イングリッド  あ、そう(笑)

ショウ  それで、俺に何の用だ?

ヒスミ  かくかくしかじかで事情を説明します。

ショウ  おいおい。たった一人で<風龍会>を半壊させたってか?

ヒスミ  私のお兄ちゃんだって、自分で言っていました。

ショウ  ヒスミ嬢の兄ねぇ・・・

ヒスミ  心当たりありますか?

ショウ  いや。ただ、ゴウケンの旦那、昔は遊びまわってたからな。いないという保証は無いな。どんな奴なんだい?

ユズキ  説明するので、モンタージュ写真をお願いします。

 

 一行はショウの仲間のガヤン信者に銀龍騎モンタージュ写真を書いてもらった。

 

ガヤン  ・・・おや? この人は・・・

ヒスミ  知ってる人?

ガヤン  知っているというか、会ったことはあるな。

GM  ちなみに、こんな顔ね(イラストを見せる)

f:id:NASA0623:20200306133520j:plain

一同  ザインじゃん!

ヒスミ  た・・・たしかに、あいつなら妹属性持ってる。

ユズキ  (頷いている)・・・って、あいつまた壁を壊して直してたのですか?(苦笑)

イングリッド  嫌な予感がするわ。以前このGM、ザインのPLにすごいこと聞いてたからね。

ヒスミ  何々?

イングリッド  時・・・

GM  おっとそこまでだ。もう時間も押して来たから、今日はここまでとする。

 

 次々と現れる強敵たち。<風龍会>本部を襲撃された一行に、ヒスミやメイベルを守ることはできるのか?

 そして、元PCを堂々と敵として出す外道GMに明日はあるのか?

 待て、次回!

 

ユズキ  あいつ、まさか新しい妹探して彷徨ってるんじゃないよね(笑)

GM  それはないから、安心しろ(笑)

ヒスミ  いもーとくれぇー(笑)

GM  バタリアンか(笑)

 

次回に続く

*1:10秒間だけ、1ターンに2回行動できる能力。