黄金の羊亭新館

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第6話【人形遊戯】

再会、母よ ?

 

GM  さて、前回君たちがドーリーと会ってから三日後、君たちは無事に<看護都市>に帰ってきた。

ルミノール  おや?ファリーさんの姿が見えませんが?

GM  彼女は前回のトラップによる負傷が原因で、入院した(実際はプレイヤーが都合でセッションに参加できなくなった)。ちなみに、前回のトラップは、帰りに発動しない仕組みになっていたようだ。

ジー  道理で無事に街に辿り着けたわけだ(笑)。

アージス  あのトラップ、運が悪いと間違いなく死ねるからな(苦笑)。

GM  道中ルイーネは、自分が使える呪文のいくつかを思い出した。移動系、治癒系、情報伝達系をメインに、かなり高度な呪文まで使える。魔化呪文も多数習得しているね。他にも、ルークス語、カルシファード語、<悪魔>語、古代神聖語なども思い出した。

カガヤ  さすが、天才ね。

アージス  俺の立場がなくなりそうだ(笑)。

GM  でも、主体性がないし経験も不足している。自分から呪文を使うようなことは、滅多にしない。

カガヤ  それはこれから鍛えていくしかないわね。

ザイン  あまり戦闘的な技術は覚えて欲しくないけどね。それで、みんなはこれからどうする?僕はカレンさんの家に泊まらせてもらうけど。

カガヤ  子持ちのくせにヒモ?

ザイン  違う!だいたい子持ちじゃない!

ジー  似たようなもんだろ。

ザイン  まあ、恋人とか言われるよりはいいけどさ。感覚的には歳の離れた妹かな?

アージス  開き直ったな。

ルミノール  私たちは宿を取って泊まりますよ。

カガヤ  しばらくは、この街を中心にシャルルやバグシーザーの情報を仕入れることにするよ。お酒のおいしい店も探さないとね(笑)。

ジー  俺は懐が暖かいから、サリカの孤児院にでも寄進してくる。

 

 ザインを除く一行は、<看護都市>での活動拠点となる宿屋を適当に選ぶ。宿の名は<跳ねる飛魚亭>。その後、思い思いに街を歩く。ザインはルイーネと共にカレンの家へ。

 

ルイーネ  ねぇ、ザイン。私が人じゃないって知ったら、カレンお姉ちゃん私のこと嫌いになるかな・・・。

ザイン  あの姉妹は、そんな細かいこと気にしなさそうだけどね(苦笑)。僕も一緒にいてあげるから、話してみようよ。

ルイーネ  (心配そうな顔で)・・・うん。

GM  んで、ルイーネの秘密を知ったカレンの反応。

カレン  だから何?ルイーネはルイーネなんだろ?

ザイン  はい。まったくもってその通りです。予想通りの反応で良かった(笑)。

カレン  そりゃ、ちょっとは驚いたけど、予想はしてたし。ルイーネが戻ってきたんだったら、それでいい。そんなことより、昨日実家から連絡があった。明後日母さんが帰ってくるらしい。

ルミノール  「そんなこと」って(苦笑)。

カガヤ  あっさり流しすぎ(笑)。

ザイン  カレンさんもルイーネが傷つかないように気を使って話題をそらしているのかもよ。

カレン  それで、明後日ルイーネを連れて、市長宅へ行ってもらいたい。

ザイン  分かりました。カレンさんも一緒に来ます?

カレン  あたしは止めておく。母さんには顔を合わせ辛いんだ。

ルミノール  複雑な家庭の事情がありそうですね。

ザイン  そのことには深く触れないようにするよ。

 

 二日後、ザインはルイーネを連れ市長宅へと向かう。途中、一緒に行かないかとカガヤとルミノールを誘う。

 

カガヤ  一緒に行くのは構わないけど、ルミノールさんは医者だし信頼置けるってことで分かるとして、なんで私?

ザイン  ほら、ジョルジュのガヤン神殿の代表だし。

ジー  それは俺の役目だろう。

ザイン  最近の言動見てると、ジークって色々と危なそうだし(笑)

ジー  それは・・・キャラクターとしては否定したいけど、プレイヤーとしては納得するしかないな(苦笑)

アージス  納得するなよ(笑)

ルミノール  私も構いませんよ。

GM  んじゃ、4人は市長宅に着いた。サリカ大病院のすぐ近くにあって、けっこう大きな家だが造りは質素だ。まだ市長は帰ってきていないらしく、君たちはお手伝いに案内されて応接室に連れて行かれる。《思考転送》による連絡では、あと三分の一刻(約30分)もすれば帰ってくるとのこと。

ルミノール  では、もう街の中には入っているのですね。

カガヤ  すると今回のミッションは、街中で行方不明になった市長の捜索ね(笑)

GM  ところがぎっちょん。市長のヴァイス・ハイルミッテル様は黒塗りの三頭立ての豪華な馬車に乗って、無事市長宅にやってくる。

カガヤ  ぎっちょんって何(笑)

GM  んで、耳の良いカガヤには、お手伝いとのこんなやり取りが聞こえる。

お手伝いA  お帰りなさいませヴァイス様。

お手伝いB  ・・・おや?そちらの黒服の方々は?

ヴァイス  私が雇ったボディガードです。頼りになりますよ。

お手伝いA  あの、執事殿と魔術師殿はどちらに?

ヴァイス  彼らでしたら体調を崩しまして、途中の宿場町で療養しています。しばらくすれば帰って来るでしょう。

ザイン  怪しい。

カガヤ  怪しいわね。

ルミノール  怪しいですね。

留守番アージス  満場一致で偽者決定だな(苦笑)。

ヴァイス  娘が帰ってきているそうですね。どこにいるのです?案内してください。

お手伝いB  かしこまりました。

GM  しばらくすると応接室の扉が開き、軽いウェーブのかかったプラチナブロンドの髪にブルーの瞳、透き通るような白い肌の美人が入ってくる。ヴァイス市長は30代半ばと聞いてるけど、20代半ばでも通じるだろうね。カレンとはあまり似ていないけど、ルイーネやリリアは母親似みたいだ。ヴァイスの左右は、6人の黒服が固めている。

ルミノール  <輝く拳>団ですね。

ザイン  《幻覚》かなにかで変身してるのか。僕はルイーネを庇う位置に立ちますね。

GM  ヴァイスは部屋を見渡した後、ルイーネに視点を合わせてニッコリと微笑み、両手を広げる。

一同  (笑)

カガヤ  女の子と言う情報は持ってるみたいだけど、誰がルイーネかは知らないわけね(笑)

ヴァイス  よく帰ってきましたね。いらっしゃい、あなたの母ですよ。

GM  ルイーネはそんなヴァイスを見て、怯えている。

カガヤ  偽者確定ね。きっとルイーネは心でも読んだんでしょう。

ヴァイス  どうしたの?なぜ隠れるの?

ザイン  ルイーネの前にかがんで、どうして隠れるんだいと言いながら、小声であいつの考えてることを、僕に教えることはできないか聞きましょう。《精神感応》があればできると思うんだけど?

GM できるね。ルイーネは指先だけで呪文を使えるし、気付かれる心配も無い。発動判定はそっちで振ってくれ。

ザイン  成功しました。

GM  ルイーネが読んでいるヴァイスの思考が、君の中に流れてくる。

ヴァイス?の心  この娘がシャルル様が欲しがっている市長の娘か。こいつをシャルル様のもとへ連れて行けば、俺の出世は間違い無しだ!

一同  (爆笑)

ルミノール  分かり易い奴ですね(笑)

留守番ジー  ただの小物じゃん(笑)

ザイン  でも、こっちは三人しかいないし、今正体を突き止めるのは得策じゃないね。ヴァイスさん。

ヴァイス?  ・・・・・・え?あ、はい。なんですか?

留守番ジー  自分が変装している奴の名前くらい、すぐに反応しろよ(笑)

ザイン  ルイーネは今すごく緊張してるみたいです。今夜、カレンさんのライブが・・・GM、カレンさんがよく歌っている店の名前知ってていいですか?

GM  構わないよ。彼女性格的に自分が歌ってるところ見てもらいたい人だし。店の名前はワルキューレにしようか。(←マクロスΔのグループと名前が被ったのは偶然である)

ザイン  じゃあ、カレンさんのライブがワルキューレという店で開かれるので、そちらにいらしていただけますか?そこでしたらカレンさんもいますし、ルイーネも少し落ち着くと思います。

ヴァイス?  カレン?

ザイン  こいつ、そんなことも調べてないのか(苦笑)

カガヤ  黒服がいなければ、この場でぶちのめしたいわね(苦笑)

GM  (上手い具合に正体明かせれば、警備員が味方につくけどね。)

ザイン  娘のカレンさんですよ。

ヴァイス?  え・・・ええ、そうだったわね。そういえば、今日はカレンが演奏すると言ってましたね。分かりました。今夜、その店に行くとします。

ザイン  そういうわけですので、今日はこれで失礼させていただきます。場所を説明して宿に帰りますね。

GM  うむ。堂々と帰るなら、何の問題もなく飛魚亭に戻ることができる。

 

正体を暴け

 

ザイン  ジークとアージスに簡単に事情を説明します。相手を罠にはめたいから、協力してちょうだい。

アージス  いいだろう。

ジー  しかし、聞けば聞くほど馬鹿な相手だな(笑)

ザイン  まったくだよ。僕が作るシナリオのラスボスみたいだ(笑)。

 

 次にザインたちは、カレン宅に行って事情を話し、彼女と夫のレオンにも協力を求める。

 

レオン  分かった。ガヤンから手の空いている奴数人を回そう。

カレン  ワルキューレのマスターには私から伝えておく。母さんを偽者だと暴く手はずはあるのか?

ザイン  任せてください。ごく単純な方法ですが、奴なら間違いなく引っかかります。

カガヤ  秘密主義はよくないわよ。それでよく策に溺れた人のこと知ってるし。具体的に教えてちょうだい。

ザイン  それはですね・・・

 

 その日の夜、BARワルキューレは、誕生パーティー参加者に扮装したレオンを含めたガヤン信者3人と、カレンのバンドメンバー、ザインら一行で貸し切られた。

 

カレン  偽者とはいえ、母さんが私の歌を聞きに来るなんて初めてだな。

ジー  母親と上手く行ってないのか?

カレン  というか、あたしが一方的に苦手意識を持っているだけかな(自嘲)。さあ、そんなことより急いで準備しないとな。

GM  カレンたちは酒場の奥のステージに、演奏用の楽器を運び込むね。

ザイン  ステージが酒場の奥なら丁度良い。ルイーネはカレンさんたちに守ってもらおう。

ジー  あいつら戦えるのか?

GM  カレンさんは蹴打術の使い手でもある。ダーはジェスタの信者で、元防壁警備隊の分隊長をしていたほどの猛者。ニェットはナイフ投げとかできる。致傷力はゴミだけど。

カガヤ  ステージは奥なわけだし、それだけ戦えれば大丈夫でしょう。

GM  他に何か準備するものは?

ジー  金だらいに石を詰めて、紐を引っ張ったら落ちる仕掛けを作っておこう(笑)

アージス  何のためにだ?

ジー  相手を挑発するためだよ。

GM  どの位置に罠を仕掛けるかは決めておいてな。

ザイン  偽市長たちが店に入ってきたら、まず話をするだろうから、僕の立ち位置の少し前方に仕掛けよう。

GM  うむ。準備が整ったのなら、ヴァイス市長の登場だ。相変わらず黒服を連れているね。数は6人。

ザイン  作戦開始だ。ヴァイス市長、よく来てくれました。

ヴァイス?  ええ、もちろんです。

ザイン  (カレンたちを指して)彼女たちがカレンさんの仲間ですが、今日は肝心のカレンさんが遅れてきているんですよ。

ヴァイス?  そうですか、ではあの子が来るまで待ちましょう。

ザイン  残念でした。カレンさんはあのバンドメンバーの中にいるよ。

ヴァイス?  え?

ザイン  いい加減に正体現してくださいよ。

ジー  あんたが市長の偽者だってことは、すでに分かってんだよ。

ヴァイス?  な・・・何を根拠にそんな・・・

カガヤ  いくらなんでもそれに気付かないほど馬鹿じゃないでしょう?

ヴァイス?  ・・・くっ・・・理由は分からんが、これ以上誤魔化しても無駄のようだな。まさか、私の完壁な変身術が見抜かれるとは思ってもいなかったぞ。

ザイン  どこが完璧だ!

ルミノール  きっと完璧の璧が壁になっているのですよ(笑)

カガヤ  何でばれたのか分かってないのも良い感じね(笑)

ヴァイス?→ヘルム  ええい、この<顔無し>ヘルムを侮辱するか!幻覚がダメなら力ずくだ!黒服ども、金は約束の倍払う。こいつらを片付けろ!

GM  黒服たちは臨戦体制をとる。

ジー  チャンス。たらいのヒモを引きます。

GM  (ランダムに誰に当たるか判定して)あ、ヘルムに直撃した。

ジー  ヘっ、馬鹿が。

ヘルム  (顔を真っ赤にして)殺せっ!こいつらを皆殺しにしろっ!

GM  じゃ、戦闘開始。黒服のうち2人はNPCガヤン組が相手するから、残り四人とヘルムは君たちが戦ってくれ。カレンさんたちは・・・

ザイン  戦いなんかくだらねぇ!あたしの歌を聞け!とか言わない(笑)?

GM  カレンさんはそこまでキレた人じゃない(笑)。彼女たちはルイーネを守るために円を組んだ。

カガヤ  ルイーネはカレンさんたちに任せて大丈夫でしょう。私たちは目の前の敵に集中しましょう。

アージス  盾のない格闘家タイプなら、俺の《飛ぶ剣》の出番だな。

ルミノール  私のシャイニング・サンも「受け」しかできない格闘家には強いです。

GM  じゃあ、戦闘開始だ。

 

 第1ターン。先手を取るのは動きの速い黒服たち。黒服Aはルミノール、黒服Bはカガヤ、黒服CとDはジークと対峙。Aの蹴りは盾で流され、Bのパンチは刀で受けられ逆に手を切り裂かれ、CとDの攻撃はフルプレートを着たジークの装甲を貫けない。PCたちの反撃では、カガヤの奥義<血車>による連続切りで黒服Bの左手首を切り落とされ、ルミノールの頭部攻撃で黒服Aは気絶させられると散々。しかしジークの攻撃は、軽くさばくことに成功。

 

ジー  またかよ!

カガヤ  何も考えないで攻撃するだけじゃ、敵を倒せないわよ。

GM  しかし、こっちの攻撃も通用しない。次は頭部狙って全力攻撃技能+4の後ろ回し蹴りを叩き込むか。

ザイン  うわぁ、嫌な戦法。僕は邪術師に大振り攻撃します。

GM  どうでもいいが、ヘルムは魔術師だ。

ザイン  どっちにしても今は倒すべき敵。(ころころ)大振りだけど命中しかかった。どうせ《瞬間回避》されるだろうけど。

ヘルム  甘いな。

ザイン  あ、やっぱり《瞬間回避》?それとも《鉄の腕》?

ヘルム  それが甘いと言っているのだ。全ての魔術師が《瞬間回避》や《鉄の腕》を使えると思うな!

ザイン  ・・・使えないってこと?

ヘルム  その通り!しかも、手に持ったナイフでの「受け」の目標値は5!鎧はなし!どうやって避けろっちゅうねん!

ザイン  ダメージは7点だけど?

ヘルム  私の生命力は8しかない。防具もライトレザー。よって気絶ダメージだ。(ころころ)気絶した。

一同  ・・・・・・。

ザイン  弱すぎ。

GM  黒服に気を取られて、《動物作成》や《戦士作成》を使う余裕を与えれば、それなりに手強かったのだけどね(苦笑)。ちなみに《幻覚変身》の解けたヘルムは、線の細いそこそこイケメン。ただし禿げ。

 

 雇い主は気絶したが、戦いだしたら止められないのがこの黒服たちの特徴。アージスは《飛ぶ剣》を発動させ、黒服Cに狙いをつけた。

 第2ターン。先の予告通り、黒服CDはジークに対し全力攻撃技能+4頭部ねらい後ろ回し蹴りを放つ!両方命中するが、丈夫な頭蓋骨とフルプレートのお陰でジークにダメージは無し。ジークは反撃に全力攻撃で黒服Cの脳天をかち割った!

 

GM  む?その一撃で黒服Cは死亡。

ジー  (痙攣している黒服を見て)ハハハ、壊れた・・・このおもちゃ壊れたよ!

アージス  壊れたのはテメェの頭だっ!

 

 狂ったジークを助ける気がないのか、続くPCたちの攻撃は黒服Dにはかすりもしない。

 第3ターン。黒服Dは、ジークの頭部に威力の高い脛蹴りを叩き込み、ジークを気絶させる。しかし、3人の戦士に囲まれた黒服は、次のターンを待つことなく気絶させられた・・・。

 

GM  ガヤン組と戦っていた黒服も、捕らえられているね。

カガヤ  思ったよりたいしたこと無かったわね。昔戦ったときはもっと強かった気がするわ。

GM  前世の話だったら、あの時戦った奴とこいつらとじゃ格が違う。こいつらはただの下っ端。

ルミノール  以前私たちが戦ったときも、D・ストライカー以外は大したことありませんでしたからね。

ザイン  それにしても金で雇われて犯罪に手を染めたりして、これが今の<輝く拳>団の実体って知ったら、母さん嘆くぞ。

GM  いや、全く気にしないと思うぞ(笑)。もっとも、こいつらは乱暴が過ぎたため<輝く拳>団を追い出された連中だと後の取調べで分かるがな。

カガヤ  (嬉しそうに)じゃ、次はお楽しみの尋問ターイム♪この魔術師を簀巻きにしよう。

アージス  ジークはどうする?

ザイン  死なない程度に傷を治して、その辺に転がしておこう。目を覚ましても狂ったままかもしれないし。

気絶中ジー  ひでぇ。

ルミノール  私がヘルムを起こしますね。

アージス  俺は寝ている間に《読心》をかけておこう。維持はドロップ(梟の使い魔)の体力を使っても10分がせいぜいだな。

カガヤ  それだけあれば十分。ほら、さっさと起きろ。ベシベシ(蹴ったらしい)。

ヘルム  う~ん・・・ハッ!ここはどこ、私は誰(棒読み)?

GM  心の声は、ここは俺の演技力で乗り切ってやる。

一同  (苦笑)

カガヤ  はいはい、下手な演技はいいから、これから私の質問に答えなさい。

ヘルム  下手な演技だと?このヘルム様の演技が下手だと言うのか!

ザイン  うん。

ヘルム  おのれ、今に見ておれ。

カガヤ  あんたは何者?

ヘルム  <最北都市>ナバールの宮廷魔術師、<顔無し>ヘルム様だ!

GM  心の中では、宮廷魔術師「候補」となってます(笑)。通り名も自称。

ザイン  見栄っ張りな奴だなぁ(笑)。

カガヤ  本物の市長はどこ?

ヘルム  知らん。

GM  心の声は、シャルル様の配下が捕らえ、<最北都市>ナバールのどこかに監禁しているはずだとのこと。

アージス  俺の地域知識でどんな街か分からんか?

GM  アンリ連邦共和国の国土の中では、最北端に位置する街。寒冷で土地も痩せており、海は近いが年中荒れていて、近くに国や島がないため貿易や漁業もイマイチな貧しい都市国家。それでいながら、半独裁政権を確立している今の市長、キルス・ウォード氏は他の街からの援助も拒否している。最近じゃナバール領に入るためのチェックが非常に厳しく、傭兵を集めているとの噂もよく聞くね。

ザイン  戦争でもはじめる気かね。

GM  さあ?

ルミノール  何でそんな街にナバールの名前をつけたのです?

GM  <看護都市>レナと<監獄都市>ジュリアンの北にあるから。

一同  (笑)

カガヤ  尋問の続きをするね。なんでルイーネを狙ったの?誰かに頼まれた?

ヘルム  知らん。

GM  心の声はルイーネという娘をシャルル様が欲していたからだ。シャルル様に気に入られれば、街の官僚に引き抜かれる可能性が高くなるとのこと。こいつの独断らしい。

ザイン  シャルルはルイーネを狙っている邪術師だったよね。そうか、奴は<最北都市>にいるのか。

アージス  しかも、かなりの権力があるみたいだな。

カガヤ  こいつ、本当に何も知らないみたいだし、これ以上聞くことはなさそうね。

アージス  《読心》を切るぞ。最後に荷物だけ調べて、ガヤンに突き出そう。

GM  ヘルムの荷物の中で使えそうなものは300ムーナの現金と、3点分のパワーストーン。自由に使っていいとガヤンのお墨付きが出た。

ザイン  3点のパワーストーンは僕がもらっていい?

アージス  構わない。俺は5点のものがあるからな。

カガヤ  私は《閃光》以外使えないから必要ない。お金はみんなで分配ね。

 

レナとナバール

 

GM  さて、帰ってきた市長が偽者と発覚して一日経ったわけだが。

カガヤ  街の方はさぞ混乱しているでしょうね。

GM  それが、本物の市長はナバール側が拉致している可能性が高いので、市長が偽者だったと言う情報は伏せられている。

ザイン  どういうこと?

GM  この街の市長は老若男女問わず、非常に人気がある。んで、この街の住民は、反ナバール的思想を持つ者が多い。下手に情報公開すると、血気盛んな若者がなにやらかすか分かったもんじゃない。

カガヤ  じゃあ、私たちで助けに行こうか(笑)

GM  好き勝手にそんな行動起こそうとする連中もいるから、情報は伏せられたわけだ。

ルミノール  ふむ。なるほど。

GM  だからと言ってこの状況を無視するわけにもいかない。伏せられた情報もいつ流れるか分からない。しかし自治が認められている他の都市国家にしっかりとした証拠も無いのにガヤンを送り込むわけにはいかず。国お抱えの密偵もいるが、市長不在では勝手に動くわけにも行かず。

ザイン  あの魔術師の証言は?

GM  ヘルムが言っていることは、奴の推測に過ぎず、根拠も薄い。そこで、都市国家との繋がりはなく、事情も知り、実力も相応にある君たちに市長救出の依頼がきた。

ザイン  それは僕たちのほうから進言したいくらいだったんだけど・・・

カガヤ  ジークの頭は大丈夫?

ジー  いや、それがだな。グレートソードブレイカーを抜いた直後あたりから記憶が飛んでな。自分が何をやったのか分からねぇんだ。

カガヤ  じゃあ、ちょっと剣抜いてみて。

ジー  (グレートソードブレイカーを抜いて)・・・何ともないみたいだな。

ザイン  あれは戦闘時の狂気が起こした発作ということにしておこう(苦笑)。後はルイーネをどうするかだけど・・・。

カガヤ  連れて行く気?ナバールにはルイーネを狙っている張本人がいるのよ?

ザイン  今までに起こったことを考えると、この街に置いて行っても安全とは限らないよ。

アージス  手元に置いといたほうが安全かもな。

ザイン  う~ん・・・

ルイーネ  むぅ~・・・ザイン難しいこと考えているみたいだから、心を読んじゃえ。

ザイン  ちょっと待てい!

GM  ルイーネは《精神探査》を指先の動きだけで使える。止めることはできんよ。(ころころ)成功度は3。

ザイン  (ころころ)あ、抵抗はクリティカル。

ジー  無駄なところでサイコロ運を使って(苦笑)

GM  じゃあ、抵抗された上に呪文使ったのバレバレ?*1

ザイン  ・・・・・・ルイーネ?

ルイーネ  (ごまかし笑いを浮かべて)な・・・なぁにザイン?

ザイン  てい(チョップ)。

ルイーネ  あぅ。

ジー  そんなに心配なんだったら連れて行きゃいいじゃん。責任もって自分で守ればいいんだし。

ザイン  それもそうだね。後はルイーネの意志だけど・・・

GM  そりゃもうザインと一緒にいたいに決まってる(笑)

ザイン  そ・・・そうなんだ(苦笑)

カガヤ  じゃ、このメンバーで市長の探索、できれば救出のためにナバールに向かうということで良いね?

アージス  異論はないが、報酬は出ないのか?

GM  知事が市から出してくれると約束する。前金兼必要経費として2000ムーナ。成功報酬として10000ムーナ。

アージス  一人2000ムーナか。悪くない条件だな。

GM  命がけの仕事であることをお忘れなく。

ジー  命がけはいつものことだ。俺はその条件で飲むぜ。

ルミノール  私も異論はありません。

カガヤ  次はどうやって市長を探すかね。闇雲に探したところで、みつかりっこないわよ。

ザイン  ルイーネ、実の母親だし何か感じたりしない(笑)

ジー  んな非科学的な(笑)

ルイーネ  それは分からないけど、《方向探知》と《追跡》なら使える*2

ルミノール  どちらにしても科学ではありませんね(笑)。

アージス  その呪文なら俺も使える。市長の家から、何か借りてこよう。

 

 一行は市長宅のお手伝いから市長の私物を借り受け、アージスとルイーネはそれに《方向探知》をかける。

 

アージス  成功度は8だな。

GM  ルイーネは7か。かなり距離があったんだが、2人とも成功したな。市長は今、四角い白い部屋にいる。多分地下だ。結構広くて快適そうだが、殺風景なところだね。

ジー  それだけじゃどこなのか分からんな。

アージス  続いて《追跡》だ。成功度4。

ザイン  ルイーネの成功度はまた7。

GM  じゃあ、アージスは失敗だが、ルイーネは成功だな。《追跡》の呪文は術者を目標まで案内してくれる。場所はナバールの首都。

ザイン  場所は分かっても、ナバールに入ることができるのかな?

カガヤ  それは裏タマット神殿にでも行って聞いてみたほうが良いわね。誰か「裏社会」技能のある人は?

一同  ・・・・・・。

カガヤ  誰もいないの?

ザイン  レインならコネがあるけど、無事に会えるかな?

レイン  呼んだ?

ルミノール  早!

ザイン  さてはずっと聞いてたな(苦笑)

レイン  うん。ナバールへの侵入方法だったわね。

カガヤ  知ってるの?

レイン  うん。街道を通っていくと関所で止められるんだけど、裏道があってね。今から教えてあげる。

GM  「記憶力」もちのレインは、裏道の場所を地図に書き込む。

レイン  それで、ナバールの首都に入るまでは、ずっと裏道を通ってね。首都の街壁は南西の小門の警備員で、夜のシャストアの刻からアルリアナの刻の人たちは、お金を掴ませれば通してくれるから。首都に入ったら、南区にある「渇いた大地亭」っていう宿屋兼酒場があるんだけどね、そこのマスターはこの街の裏タマットのスパイだからそこに泊まるようにして。

ジー  ずいぶん詳しいな。

レイン  私は裏タマットが所持している情報を持ってきただけ。市長がいないと、うちらも色々と困るからね。ザインたちへの協力は惜しまないってさ。私はその橋渡し役だから、今回は「仲間」として登場したわけじゃないわ。

ザイン  なるほど。

レイン  「乾いた大地亭」のマスターへの合言葉は「蝙蝠は生きているか?」の後に「鼠の干し肉をご馳走したい」よ。これを言えば、向こうも協力してくれるから忘れないでね。

カガヤ  分かった。

レイン  最後に・・・

ザイン  ん?

レイン  ・・・気をつけて・・・ね?

ザイン  うん!

 

<最北都市>潜入

 

 一行は携帯食や毛布などの野外活動用装備を整え(ほとんどは支給品)、ナバールへと向けて出発する。

 レナから歩いて一巡り、一行はレインに教えてもらった裏通りよりナバール領へ侵入。さらにそこから歩いて三日、最北都市ナバールの街壁へと辿り着いた。

 

GM  首都に来るまでもそうだったが、街壁の周辺に住む人々の生活はかなり悲惨だ。人々の顔に生気はなく、身体は痩せ細り、纏っているものはほとんどボロ布みたいなもの。住んでいる家も、一部倒壊している程度なら良い方だ。ボロ布のテントじゃ、雪が降る寒さの中じゃきついと言うレベルではなかろう。

ジー  何とかしてやりたいのは山々だけど・・・

アージス  今の俺たちじゃどうしようもならん。

カガヤ  さっさとレナの市長を助けて、外交的に救助策を考えてもらうしかないわね。

GM  (思ったより冷静だな。)

ルミノール  都市への侵入はどうすればいいのでしたっけ?

アージス  その辺は俺が全部メモしておいた。夜のシャストアの刻からアルリアナの刻に、南西の小門の警備員に金をつかませりゃ侵入できる。

 

 一行は夜のシャストアの刻(深夜の日付変更辺り)まで、休憩しつつ身を潜めることにする。そして夜が深ける・・・

 

ルイーネ  ザイン、そろそろ時間だよ。

ザイン  ん、じゃあ行こうか。

GM  南西の小門というか、脱出用の扉だね。とにかく、そこには武装した小太りの男が一人いる。外の人々と比べ、肌の艶なんかは明らかに良い。

小太り  (陰険そうな声で)通行証はあるのか?

アージス  100ムーナ金貨を3枚渡す。これが通行証だ。

小太り  確かに通行証だな。よし、通れ。

GM  小太りの男は扉を開けてくれる。

ルミノール  行きましょう。

ジー  まず目指すは乾いた大地亭だが、今の時間空いているのかね?

カガヤ  それは行ってみないと分からないわね。

アージス  「方向感覚」のある俺が案内しよう。

GM  本来ナバール領の夜は暗い。法律で、夜のペローマの刻(夜9時頃)以降は魔法の光以外を使うことは禁じられているためで、しかも光の呪文の使い手から光を買うお金などない家がほとんどだからだ。しかし、首都<最北都市>ナバールは他の都市国家と同様に深夜の街にも明かりは灯されている。

ジー  しかも、まともな家もあるし、食料も豊富なんだろうな。

GM  まぁね。もっとも、ほとんどの家は集合住宅だがな。

ルミノール  それでも家があるだけマシです。

GM  ちなみに、壁の異常に多い街でもあり、地図とアージスの案内がなければ道に迷いそうだ。

ルミノール  街に攻め込まれたときの対策ですかね?

ザイン  そんなことより、早く乾いた大地亭へ向かおうよ。巡回中の兵隊にでも見咎められたら、ちょっとやばいと思うよ。

アージス  それもそうだな。急ぐか。

GM  (チッ! 時間をかけてくれれば、遭遇判定してもらったんだがな・・・)

 

 ザインの予想通り、移動に時間をかければ巡回中の兵隊に見咎められる可能性はあったのだが、急いで移動を開始したために一行は特に何事もなく<渇いた大地亭>へ辿り着いた。

 

ザイン  ノックしてみよう。

GM  するとしばらくして、中から渋い声がする。

  誰だ。

アージス  蝙蝠は生きているか?

  ああ、健在だ。

アージス  鼠の干し肉をご馳走したいんだが?

GM  すると入口が開いて、厳つい顔の中年が現れる。

中年  入れ。

カガヤ  入りましょう。

GM  中年は君たちを店の奥へと案内する。そこにはちょっとした応接セットがあるね。厳つい中年は温かいスープと、ウォッカを出してくれる。

カガヤ  わ~い、ウォッカウォッカ♪ストレートで飲む~♪

ルミノール  胃、痛めますよ(苦笑)

中年  ここに来るまで寒かっただろう。こんな物しかないが、まずは温まるといい。

ジー  そうさせてもらおう。

GM  食事中に、中年はミッティと名乗る。

ジー  ミッティ・・・ミッテイ・・・密偵か(笑)

ルミノール  重要キャラなのかどうか、判断に困る名前ですね(笑)。

ザイン  それで、ミッティさん。市長の居場所のことなのですが・・・

ミッティ  具体的な場所は分からん。だが、監禁しているのが宮廷魔術師のシャルルであるなら、奴の研究施設のいずれかにいるのは間違いないだろう。

カガヤ  その研究施設の場所は?

ミッティ 北区に三つある。

アージス  前回使ったときから時間も経ったし、今回は距離も近い。もう一度《方向探知》と《追跡》だ。

GM  両方とも成功?だったら、第二研究施設の場所から市長の反応がある。

ザイン  今日はもう休ませてもらって、明日そこへ向かおう。

ミッティ  動くなら夕暮れ時が良い。それと、これを貸しておく。

GM  ナバールの偽造住民証が人数分。

ミッティ  救出後、店による暇があれば返してくれ。

カガヤ  分かりました。

 

 翌日の夕暮れ時、一行は行動を開始する。

 

GM  昨日は暗くて気付かなかったけど、街のいたるところに市長のキルス・ウォードを称える垂れ幕や、彼の崇めるアルリアナの化身、漆黒の女神を称える旗なんかがある。

ジー  ○朝鮮だな。

カガヤ  ○朝鮮ね。

GM  (どうでもいいが、本当にあの国にはそんな垂れ幕があったりするのかね?)

ザイン  漆黒の女神?

GM  市長は20数年前その女神に命を救われ、それから何をやっても上手くいくようになったことから、そいつを自分が信仰しているアルリアナの化身だと思っているらしい。なんでもその女神は大熊を素手で殴り倒したとか。

ザイン  え~・・・っと・・・その女神に心当たりがある気がするのは気のせい?

GM  気にするな。

 

 巡回中の兵隊に呼び止められたりはしたものの、これといったトラブルもなく、一行は第2研究施設前へと辿り着いた。

 

カガヤ  見張りは?

GM  いないね。

アージス  入口のドアに鍵はかかっているか?

GM  魔法の鍵がかかってる。

ザイン  となると、粉砕するしかないね。みんなは周り見張ってて。

  お前たち、そこで何をしている!

GM  巡回中の兵士が2人、君たちのほうに向かってくるよ。

兵士A  ここは宮廷魔術師殿の研究所前だぞ。

アージス  魔術師が魔術師の研究所の前にいて何がおかしい。

兵士B  それもそうだな。

兵士A  だが、念のため住民証を見せてもらおうか。

カガヤ  見せましょう。ここで下手に争ってもしょうがない。

兵士A  ・・・なんだ、傭兵志願者どもか。だったら忠告しといてやるが、この街の中で変な行動は起こさない方がいいぞ。怪しい奴らは捕らえて尋問しろと言われているからな。

ルミノール  分かりました。以後気をつけます。

兵士A  分かったのならとっとと傭兵の寮へ帰れ。もうすぐ日も暮れる。

ジー  そうしよう。

ザイン  適当な場所まで移動してから、研究施設前へ戻りましょう。さっきの連中はいます?

GM  もういない。

ザイン  だったら、はやく扉を壊して侵入しましょう。

アージス  俺がドアの周りに《沈黙》の呪文をかけてやる。これで壊すときの音は漏れん。

GM  (チッ)

ジー  俺も壊すのは手伝うぜ。

GM  2人がかりで叩けば、扉はわりとあっさり壊れる。鍵は魔法のものだけど、ドア自体はただの木だからね。(でも、壊れたまま放っておけば、巡回の兵士は気付くわな。これは面白いことに・・・。)

ザイン  ドアが木でできているのなら、そんなに重くないよね?全員が中に入ってから《修理》の呪文をかけておこう。そうすればドアが壊されたことに誰も気付かない。

GM  (勘が良いなぁ・・・)

 

 一行はドアの向こうで呪文を使ったことによる疲労を癒した後、施設の奥へと向かう。

 

アージス  ここまで来れば、《方向探知》は目標の場所へ導いてくれるだろう。(ころころ)成功だ。

GM  うむ。予想通り、呪文は研究施設地下へと君たちを導いてくれる。呪文が導く先以外にも、部屋はあるが?

カガヤ  侵入がばれても怖いから、下手に探索しない方がいいわね。

ジー  賛成。

GM  (霊薬とかDOLL制御のマジックアイテムとかあったんだが・・・ま、その判断も正解だわな。)んじゃ、何度か階段を下りたところで、曲がり角の先に人の気配がある。

カガヤ  忍び足で様子を見ます。

GM  狭い通路の奥にあるドアの前に子どもが2人。無表情で不気味な子どもだ。短い杖、分かりやすく言えばトンファーのようなもので武装している。

ザイン  DOLLか。

ルイーネ  ・・・・・・

カガヤ  他に変わった所は?

GM  知力判定して。成功?だったら、壁にベルがかけられているのに気付く。

カガヤ  警報装置ね。あれを鳴らさせないように、倒す必要がありそうね。

ザイン  DOLLまでの距離は?

GM  5メルーほど。通路は二人並んで通れるけど、長さ2以上の武器を振り回すのは難しい。

カガヤ  それじゃ私とジークは役に立たないわね。

ルミノール  私が行きましょう。5メルーなら1ターンで移動できます。

ザイン  僕もだ。

ジー  俺もナイフなら使えるが・・・

アージス  最初からメインウェポンを抜くのは、負けパターンだぜ(笑)。

ジー  だから使わん(笑)ネットもあるが、遮蔽物に隠れて気付かれないように準備して狙ってってのは、さすがに無理だろう。俺は待機だな。

ザイン  いや、一方を仕留め損ねた時のために、後ろから来てちょうだい。

ジー  しょうがないな。

ザイン  じゃ、行くよ。イチ、ニ、サン!

GM  む!量産型ドールたちも君たちに気付いて、一方がベルの方に向かう。

ザイン  させない!

 

 ザインは量産型ドールAに体当たり。狙い通り転倒させる。そして、次のターン転んだ量産型ドールの右腕を、斧で切り落とす。

 

GM  幼児虐待だ~。

ザイン  うるさい!

 

 援軍を封じられた2人(体?)のドールは、3人の攻撃により、あっさり活動を停止する。

 

GM  2体のDOLLは全身が痙攣し、全身の穴という穴から緑色の液体を飛び散らせている。

ジー  これは・・・確かに気味が悪いな。

ルイーネ  ザイン、終わった?

ザイン  (ルイーネの目を覆って)見ちゃダメだ。ルイーネを抱き上げてそのままドアを開けます。

GM  うむ。ドアの先は、広い空間になって、活動していないドールが500体ほど所狭しと立っている。

ジー  こいつら、動き出したりしないだろうな?

ルミノール  一斉に襲ってこられたら、いくらなんでも勝ち目はありませんよ。

アージス  ドーリーじいさんの話じゃ、量産はできるが動かすことはできないという話だったがな。

GM  ちなみに、《方向探知》はドールたちの脇を抜けたところにあるドアを指している。

ザイン  変に触ったりしないように行くしかないね。

 

 ここのDOLLは動くことはないのだが、緊迫感を持たせるためテキトーな判定を何度か行いつつ、一行はさらなる奥へと進む。

  

GM  地下6階だ。呪文によると、このホールを抜けた先に市長がいる。

ザイン  なんかスムーズに行き過ぎてるよね。

カガヤ  おびき寄せられたとか?

GM  (運の助けもあっただろうけど、こっちの用意した仕掛けを軒並み避けたかクリアして来たからな。)安心したまえ。ホールには6人の無表情な子どもたちがいる。杖を持った奴が5人と、見たとこ武器らしきものを持っていない奴が一人だ。

ザイン  また量産型ドールか。こいつら説得や話術が効かないから面倒なんだよね。

GM  (うむ。私もそう思った。)で、一見素手が言ってくる。

ドール  警告します。ここから先はマスターの許可無き者を通すわけには行きません。ただちに退散しなさい。

ジー  しなかったらどうなる?

ドール  警告に従わない場合、侵入者とみなし力ずくで排除します。

カガヤ  (刀を抜いて)どうせ倒さないと奥に行けないなら早いほうがいいでしょ。

アージス  戦闘前に呪文の準備をして・・・

ドール  マナの動きを感知。標的は敵意ありと判断。これより攻撃に移行する。

ザイン  しまった。そんな機能があったのか。

GM  ドールは武器を構えて移動を開始。接敵するまで1ターンあるから、呪文の準備はできるよ。

ザイン  自分自身に《盾》をかけよう。

アージス  ジークに《倍速》だ。

カガヤ  《閃光》に集中。

GM  他に特別な宣言は無い?じゃあ、戦闘開始だ。

 

 一行はルミノールとジーク、1ターンで集中が完了するザインが前に出、呪文の集中をしている3人をカバー。6人のドールは、一行に接近して行動終了。

 接敵後、ジークとルミノールが杖ドール2人ずつ、ザインが杖ドール一人と素手ドールことドールリーダーと相対する。

 

ジー  クックック・・・今度のおもちゃはてめぇらかぁ?

カガヤ  またジークが壊れたよ。

 

 壊れてみても正面突破な戦い方は相変わらず。技能レベル、「受け」の目標値共にそこそこ高いドールには命中させられない。

 

GM  さて、素手のドールことドールリーダーが両腕を広げると、手の甲から鉤爪が生えてくる。なにやら黒い液体が滴っているね。

ザイン  毒爪?当たるとやばいな。

 

 と呟いたものの、呪文と魔法の盾、プレートアーマーで武装し、受動防御*3の目標値が11になっているザインに、そうそう攻撃は当たらない。ルミノールも、「受け」辛いフレイル系武器であるシャイニング・サンを振り回し、ドールに対し優位にたつ。

 そして

 

カガヤ  《閃光》いきます。

GM  カガヤの手からまばゆい光が放出される!・・・が!

カガヤ  が?

GM  光量調整機能のついた高性能マジック・アイは、その程度の光では潰されない。

カガヤ  卑怯~。

GM  量産型は戦争のために作られた道具だ。卑怯で結構。

カガヤ  他にできることも無いし、刀構えて前に出る。

 

 前に出たカガヤは、暗夜血風流奥義<闇の舞い>でドールを惑わせ、その隙に攻撃し、順調にダメージを与える。ザインも堅実にフェイントからの攻撃で攻め、ジークもアージスから<倍速>がかかった後は怒涛の連続攻撃で徐々にドールたちを押し始める。毒爪を光らせているドールリーダーは、ザインの武器の間合いに入り込もうとするのだが、盾に邪魔され中々踏み込めない(盾は「止め」の変わりに踏み込みの防止に使えることにしている)。他のドールも高いフェイント技能などを生かすことができないまま、6体いたドールの数も半減。このまま大した被害もなしに勝利できるかと思ったそのとき!

 

GM  杖で攻撃しても埒があかない。仕込みナイフでカガヤの重要器官でも狙ってみよう。(ころころ)クリティカル。ダメージ2倍。

カガヤ  え!?

GM  重要器官に8点の「刺し」だ。鎧抜けた分のダメージは3倍ね。生きてる?

カガヤ  鎧があるから死にはしないけど、まずいかも。

ザイン  ここは下がってください。後は僕たちで何とかなります。

GM  もう一方のドールは、フェイントのばっちり効いているルミノールの右腕でも狙ってみるか。

ルミノール  あ、当たりました。

GM  えーっと、ダメージはほぼ最大の12点。

ルミノール  それは(ころころ)右腕が完全に使えなくなりました。*4

 

 さらにこのターン、累積ダメージでジークが気絶する。

 

アージス  ここまで来てピンチか?

ザイン  いや。まだ大丈夫・・・と思う。

 

 ザインの予想通り、ドールの反撃もここまでだった。ルイーネに傷を癒してもらったカガヤの刀と、アージスの《飛ぶ剣》により、残った2体のドールも倒され、ドールリーダーは両腕を切り落とされてしまい戦闘不能になった。

 

SIGNAL

 

 一行は一旦休憩し、傷を癒します。

 

ジーク  うーん・・・今回の戦いも、何があったのか思い出せない(苦笑)

GM  ルイーネは、緑色の液体を飛び散らしているDOLLを複雑な表情で見つめている。

ザイン  大丈夫だよルイーネ。僕が守るから。

ルイーネ  ・・・うん。

ルミノール  どなたか《瞬間接合》*5の呪文使えません?

ザイン  使えたとしても、あの呪文のエネルギー消費は大きいからね。今回右腕を治すのは諦めた方がいいと思うよ。

GM  確かに、一応ルイーネが使えるけどエネルギー不足。

ルミノール  せめて、《接合》*6だけでもお願いできますか?

ルイーネ  うん。

GM  カガヤもダメージが大きかったからね。呪文で傷は癒えているけど、安静にしていた方がいいよ。

ジーク  この先にまだ戦闘があるとなると厳しいな。

アージス  呪文によると、市長はこの先の部屋らしいが。

GM  ホールから出たところの通路を右に行ってすぐ。距離にすれば10メルーほどしかない。

ザイン  まだ罠の可能性は捨てきれない。警戒しながらドアを開けよう。いいよね?

GM  いや、君たちが開ける前にドアが開く。そこには、鎌を持って目つきの悪い赤いメッシュの入った髪で赤い瞳のルイーネと、短剣を腰に下げて口元のニヤついた黄色いメッシュの入った髪で黄色い瞳のルイーネ、それに杖を持って落ち着いた雰囲気の青いメッシュの入った髪で青い瞳のルイーネが立っている。

カガヤ  え?

ザイン  ルイーネが3人?

GM  色違いの3人の自分を見て、ルイーネは身体を震わせながらザインにしがみついてくる。

ザイン  ルイーネを庇う位置に立ちます。

GM  そうしていると、青メッシュのルイーネが前に出る。

青ルイーネ  (恭しく頭を下げて)ようこそいらっしゃいましたルイーネ様。そしてルイーネ様のマスター。

ザイン  あの、君たちは?

GM  ・・・あ。

一同  ・・・・・・。

カガヤ  名前、決めてなかったな(苦笑)

GM  いや、青いルイーネ、赤いルイーネ、黄色いルイーネとしか考えてなかったから(笑)

青ルイーネ  今回は仮に Φ(ファイズ)、 Χ(カイザ)、 ⊿(デルタ) とお呼びください(←プレイ当時はリアルタイム)

ザインのPL  死んでいいよ君たち。

青ルイーネ  ひどい!一生懸命考えたのに!

ジーク  どこが一生懸命だ!

 

 気を取り直して

 

青ルイーネ  わたくしたちはルイーネ様を模して造られたプロト・ドールです。本来であれば、わたくしたちがあなた方の元へ出向くのが筋でしょうが、こちらにもそれができぬ理由がありまして、誘き出すような手段をとってしまい申し訳ありません。

ザイン  その理由って?

青ルイーネ  わたくしたちはマスターに逆らうことができないのです。

カガヤ  マスターってのは、シャルルのことね?

青ルイーネ  はい。存じていることかもしれませんが、わたくしたちのマスターはDOLLを戦争の道具として利用しようとしています。わたくしたちはそれが嫌で、自由を得るため密かに活動しているのです。

カガヤ  なるほど。

ザイン  それと、ルイーネとが何の関係があるんだ?

青ルイーネ  ルイーネ様の記憶には、DOLL起動の方程式が埋め込まれているはずです。その中には、DOLLたちのマスターを選択する方法もあるはずなのです。

ザイン  悪いけど、にわかには信じ固い話だよ。君たちがシャルルの手下じゃないという保証はどこにも無い。

青ルイーネ  その反応はごく当然でしょうね。こちらのせめてもの誠意をお見せするために、ヴァイス市長は解放します。それとナバールから脱出するには、東の正門を御利用ください。警備員に話をつけてあります。その他のルートでナバール市内からの脱出は難しいでしょう。

ジーク  信用できないな。

青ルイーネ  これに関しては信じていただくしかありません。

カガヤ  一応、「嘘発見」をしてみたいけど、できる?

GM  まあ、無表情な量産型と違って、プロトドールには表情があるから可能だ(ころころ)嘘発見の結果だが、嘘をついているようには思えない。

一同  ・・・・・・。

青ルイーネ  それでは、わたくしたちはこれにて退散させていただきます。ヴァイス市長はこの先の通路右側の部屋にいらっしゃいます。反対側のドアの先は緊急用の出口です。鍵は開いていますので。

GM  三色のルイーネは君たちの脇を通り過ぎていこうとするが?

ザイン  色々聞きたいけど、情報が整理できないから見送ります。

GM  手を出す人がいないなら、三色のルイーネはそのまま階段を上がって行き、姿を消す。

カガヤ  私の腕じゃ、嘘を見抜ききれなかった可能性があるけど・・・

ジーク  考えることはお前らに任せる。

アージス  罠だったら引っかかってみるのも手だな。

ルミノール  虎穴に入らずんば虎子を得ず、ですね。

ザイン  ここは敵地のど真ん中だよ?そんな中で罠にかかったら虎子を得る前に死ねる。

カガヤ  ま、今は議論するより市長に会うのが先でしょ。

ルミノール  それもそうですね。

ジーク  青いルイーネに言われた通りの部屋に入るぜ。

GM  そこは殺風景だが生活に必要なものは一通り揃った空間になっている。そして、部屋の中央のイスには、軽いウェーブのかかったプラチナブロンドの髪にブルーの瞳、透き通るような白い肌の美人が座っている。ヘルムの幻覚と姿形は同じだが、本物はそばにいると安心できるような雰囲気を持っている。ルール的には「カリスマ」の持ち主。

カガヤ  あの偽市長、本当に3流ね(笑)

ザイン  ヴァイス・ハイルミッテル市長ですね?

ヴァイス  はい。私を迎えに来てくださった方ですね?遠い所をわざわざありがとうございます(ペコリ)。

ザイン  え・・・ええ。・・・なんか調子狂うな(苦笑)

カガヤ  私たちはあなたを助けに来たのです。さあ、行きましょう。

ヴァイス  助けに・・・ですか?

カガヤ  ええ、あなたは誘拐されていたのです。

ヴァイス  誘拐・・・ですか?私は危機から逃れるために、あの子たちに匿っていただいていたのですよ?

カガヤ  え?

ルミノール  危機?

ヴァイス  はい。私は私の娘を誘い出すための人質として、捕らえられそうになったのです。その時あの子たちに助けていただいて、ここに匿われていたのです。

ザイン  娘というと、カレンさん?リリアさん?

ヴァイス  4年前行方不明になったルイーネです。・・・そういえばあの子たち、ルイーネにそっくりでしたが、あの子三つ子だったかしら?

ザイン  ・・・ルイーネもそうだけどさ、ハイルミッテル家の人たちって、どこかネジ一本抜けてるよね。

カガヤ  言えてる(苦笑)

ヴァイス  あら?その子も、ルイーネ似てますね。

ルイーネ  あの・・・その・・・

ザイン  あ・・・この子は・・・

ヴァイス  (両手を広げて)いらっしゃい。

ルイーネ  え?

ヴァイス  私には分かります。ルイーネなのでしょう?

GM  ルイーネは泣きながらヴァイスの元にかけより、ヴァイスはそれを優しく抱きしめる。そして、声を上げて泣きながら「お母さん」と連呼するルイーネを、ヴァイスは優しく包み込む。その後しばらくして、ルイーネは泣き疲れて眠る。

ザイン  あの、ヴァイスさん。この子は・・・

ヴァイス  本当のルイーネではないのでしょう?でもいいじゃないですか。この子はルイーネ。私の娘です。

ルミノール  よかったですね。良い人そうで。

ザイン  市長という立場の人にしては、良い人過ぎる気もするけどね(苦笑)

ジーク  感動の再会に水を差すようで悪いが、あまり長居するのもやばいんじゃないか?

カガヤ  それもそうね。ヴァイス市長。

ヴァイス  (ルイーネを抱いて)分かりましたそろそろ参りましょう。

ザイン  あ、ルイーネは僕が・・・

ヴァイス  4年ぶりに会えた娘なのです。どうか、私に抱かせてください。

ザイン  分かりました。

ジーク  さて、あとはどこから脱出するかだな。

アージス  青いルイーネの言っていた、非常用の脱出口という話も罠の可能性があるな。

ヴァイス  青いルイーネでしたら、信頼ができると思います。

カガヤ  根拠は?

ヴァイス  ほんの3巡りほどでしたが、あの子はいつも誠実でした。それではいけませんか?

カガヤ  分かりました。信じてみましょう。

 

 一行は、青ルイーネの提示した脱出ルートを使い、無事ナバール市内より脱出した。・・・・・・<乾いた大地亭>に偽造住民証を返すことなく。

 

ジーク  そういや、執事と魔術師は?

GM  ・・・あ、忘れてた。

カガヤ  え?どこにいるはずだったの?

GM  市長と同じ部屋。・・・まあいいや。市長と一緒に助けたことにしよう。

 

GMのうっかりを咎めつつ、次回 「魔王最期の日」 へ続く

*1:ルールミスです。高レベルの情報伝達系呪文は、術者がファンブルしない限り相手は呪文を使われたことに気付きません。

*2:《方向探知》は、物の所有者がいる方向を探る魔法。《追跡》はその対象の居場所を探る魔法。

*3:鎧や盾による回避値のボーナス。

*4:腕や足に大きなダメージを受けると、その部位が使えなくなる。生命力判定に成功した場合は一時的で済むが、失敗した場合は特殊な魔法や手術をしないと治らなくなる。

*5:完全に使えなくなった部位を、一瞬で治す魔法。

*6:完全に使えなくなった部位を治す魔法だが、治りきるまで時間がかかる。