第３話【赤き血の輪舞】
【複数の事件】
ＧＭ さて、今日も今日とて、君たちは『黄金の羊亭』にいる。
ディック 前回、殺人犯とっ捕まえた報酬があるでな、貸し切りにして宴会するで。んで、余った分は酔っ払った勢いで、孤児院に寄付しとこう。
ルミノール それで、朝になって何故か財布が軽くなっていることに気付く…と（笑）
ディック おかしいなぁ、何で銭がたまらへんのやろ？
ジェイル その原因に気付かないのが、貧乏の最大の原因だろうな（笑）
ＧＭ ちなみに、ここ最近、サクラさんを見かけない。
ダンテス 彼女は、トリース森共和国へ行くといっていましたね。
ディック あの子、方向音痴やが、大丈夫やろうか？ サクラはんも心配やが、今は銭のために仕事せなな。酒場行って、変わった事件がないか調べてみるで。
ＧＭ ディックの本業は伝令じゃなかったか？ このところ、この街ではいくつかの事件が起こっている。一つはジョルジュの街の北、＜魔道都市＞マリクへ向かう山岳地帯の道に山賊が出る。しかも、ゴブリンや翼人*1といった亜人たちの山賊。
リネール ゴブリンどもは許せませんが、山岳地帯で飛行ユニットの翼人とは戦いたくはありませんね。私も飛ぼうと思えば、《化身》を使って飛べますが。
ディック 飛行適性Ｃで飛行ユニットに挑もうとするなや。わいもせいぜいＢがええとこやが。
ジェイル 俺は《飛行》が使えるがな。あの呪文は疲れるから嫌だ。
リューリック おお、ミノフスキークラフトだ（笑）
ルミノール 他の事件に関しては？
ＧＭ 二つ目は街の南。＜交易の門＞アストリアへ向かう道の途中、盗賊団が出没するらしい。青の月の信者が率いている、妙に統率の取れた盗賊団らしい。
リューリック 珍しい、青の月の盗賊団ですか。統率が取れているっていうのは、やっかいですね。
ＧＭ 噂では、率いているのは元軍人とのこと。で、三つ目は街中で起きている。上流階級の、しかも美人が五人立て続けに行方不明になっている。
ダンテス ほう。
ＧＭ 最後に、事件ってほどではないが、あくどい商売で有名な「アクトー商会」ってのがこの街に進出しようとしているという話があって、街の商店街の人々が心配している。
ジェイル 名前からして悪党だな（笑）
ＧＭ この街で商売しているわけじゃない君たちからすれば、今のところは関係ないだろうけど、地上げや独占売買なんかも平気で行う連中だ。放っておけば、何年後かには一般生活に支障が出るような可能性も、無いことはない。
ルミノール でも、今すぐ何とかしなければならないことではないですね。
ディック せやな。一番気になるのは南北の盗賊か。
リネール なるほど。南北の盗賊団を使って道を塞ぎ、自分の商会以外の物資を街に入らないようにしておいて、商売の独占を狙うつもりか。行方不明事件も、アクトー商会の手下の者を使って誘拐しておいて、上流階級の人々を脅す道具に使おうとしているに違いない（笑）
ジェイル それは考えすぎだな。
リネールの考えは、あながち間違っているわけでもありませんが、今考えたところで解るものではありません。
ＧＭ すべての事件に関して、調査依頼や退治依頼は出ている。
ジェイル 今のところ、どれを選んだところで大差はなさそうだな。そうなれば重要なものは報酬か。どれが一番高い？
ＧＭ 誘拐事件だね。ガヤンからの報酬はスズメの涙だけど、各家から成功報酬として提示している金額は、なかなかのものだ。具体的には１万ムーナ（約１００万円）を越える。
リューリック 娘の行方を探す金額としては、多いのか少ないのか判断に困りますね。
ＧＭ 誘拐されたと決まったわけじゃないからね。身代金を要求されたりしたのだったら、救出したときの話は変わってくるだろう。
ジェイル 俺は行方不明事件の捜査でかまわんぞ。５で割っても一人２０００ムーナになるからな。
リューリック 全員で捜査することに決まっているのかよ？
ジェイル 手伝う気はないのか？
ダンテス 私は手伝おう。まだ見ぬ美女と出会えるチャンスだしな。
リネール 私は革鎧を買うため（笑）
ディック ワイも興味があるでな。
ルミノール 街で起きている事件を、放って置くわけにはいけませんしね。私も手伝います。
リューリック 私はガヤンの仕事もありますからね。上司に話をしてみないと。
ＧＭ 君の直属の上司で、警邏部の部長をしているのはヤルキーガー・ナイッス神官という。
一同 （笑）
リューリック アクトー商会よりもすごい名前ですね。そんな奴が上司で大丈夫か私？
ＧＭ 恐らく君たちの想像どおり「怠惰」な人。でも、とてつもなく運が良いので、いつの間にやら神官になった人だ（笑）
リューリック ま･･･まあ何でもいいや。とにかく話をしてみよう。ヤルキーガー神官。街で起きている行方不明事件の調査をしたいのですが、よろしいでしょうか？
ヤルキーガー よきに計らえ。
一同 （爆笑）
ジェイル この男、ダメだ。
ディック いや～、意外と大物かもしれんで（笑）
リューリック なんにしても話は通ったわけだし、事件調査はしますよ（笑） もっとも、私は肉体労働専門ですがね。
ディック かまへんかまへん。ガヤン信者がいるだけで、捜査はやりやすくなるでな。いざというときは、戦士も必要になるやろうし。
リューリック 酷い言われような気がしますね。
リネール では、捜査開始と行きましょうか。まずは捜査の基本。第一被害者の家に行ってみよう。
ＧＭ 最初に娘が行方不明になったのは、カーナー家というサリカの名家。家主はこの街のサリカ神殿で、最高司祭をしている人だ。
ダンテス セミロングの金髪に、エメラルドのような瞳を持った美しい女性ですよ。
リューリック 知り合いかよ。
ダンテス 一緒にディナーを楽しんだ程度ですよ。
ＧＭ まあ、ダンテスならそれくらいやっててもおかしくはないわな。外見は今言ってくれた通りでかまわないし。ちなみに未婚の十八歳。
リューリック まずは家主に挨拶をしよう。会えますか？
ＧＭ うん。娘さんの行方を探そうとしているガヤンの者だといえば、時間を割いてもらえる。
ディック ワイも同席するで。
ルミノール 私も行きましょう。
リネール 相手に好印象を与えるようになる《カリスマ》の呪文を、リューリックにかけておきましょう。
ＧＭ 他の人は同席しない？ じゃあ、リューリックとディックはカーナー家の応接室に案内される。畳でいうと十畳ぐらいの質素な部屋に、高級そうなソファーがおいてある。調度品の類は妙に派手なものが多く、趣味が良いとはいえない。お茶菓子なんかも出されて少し待たされた後、一人の男が入ってくる。ややほっそりとしているが、上品な口髭が印象的な３０代後半か４０代の男性。どことなくサリーちゃんのパパに似てる（笑）
ディック サリーちゃんのパパやったら、口髭より髪形が印象に残るやろうけどな（笑）
リューリック あなたがカーナー家の家主様ですね。この度、あなたの娘さんの行方を調査するために伺わせていただきました、リューリックというものです。
ルミノール ルミノールです。
ディック ワイはディックや。さっそくやけど、娘はんがいなくなったときの状況を教えてほしいんやけど。
家主 うむ。娘はいなくなる数日前から様子がおかしくてな。食事もろくに口にしないようになり、話し掛けても返事もろくにせん。いつもボーっとしておった。ワシの勘ではあれは恋煩いだと思うのだが。うちの娘ももう十八になるというのに、気が強いせいか浮いた話の一つもなくてな。恋煩いであるならばこれほど嬉しいことはないと思っていたのだが、まさか家出をするなどと…
ＧＭ 家主さんは遠い目をしたまま、涙を流し始めます。
リューリック 思い込みの激しいおっさんですね（笑）
家主 家出であるならばそれでもよい。娘の人生は娘のものだ。わしがとやかく言う気はない。しかし、せめて居場所がはっきりしていないと、ワシはもう心配で心配で。
ディック 親バカなんか、放任主義なんかどっちや（笑） 家主はん、娘はんの居所を探るために、娘はんの部屋を見せてもらいたいんやが。
家主 （反応判定*2して、結果は「良い」）うむ。ガヤンの者がいるのならば、余計な心配は無用であろう。ただし、探索にはワシも立ち会う。
ディック まあ、問題はないやろ。娘さんの部屋に案内してもらえるんやな？
ＧＭ うん。わりと小さな部屋だが、綺麗に片付いている。調度品の趣味も良いね。まず目に付いて気になることは、窓が開いていることと、高級そうな大鏡にひびが入っていること。家主さんの話では、行方不明になった後、この部屋には一切手をつけてないらしい。
ディック 高そうな鏡やのに。もったいない。
ルミノール 窓があいていて鏡にひび…いま背筋にゾクッとくるものがありましたが。
ＧＭ うむ。ルミノール先生はファウンの「神学」…つまり、知力そのまま。他の人は「神秘学」技能があれば判定してくれ。
ディック そんな技能はないなあ。
リューリック はっはっは。知力基準の技能なんて私の専門外ですよ…ハァ。
ルミノール 私の知力判定は成功です。
ＧＭ では、ルミノール先生は気付く。この現場は「夜に目覚め暁に憧れる者」「死に損ないどもの王」ヴァンパイアに誘拐された現場に酷似している。
一同 ヴァンパイア*3！？
ダンテス ぬぅぅ。いくらなんでも相手が悪い。しかし美女のピンチを放っておくわけには…。
ＧＭ あんたは今ここにいないよ。家主さんも驚愕してるね。
家主 君、何かの間違いではないのか？ 娘がヴァンパイアにさらわれたなどと…。いや、間違いに違いない、間違いであってくれぇぇーー！！
リューリック 落ち着いてください。それを調査するために、私たちがきたのでしょう。ではディックさん、ルミノールさん。捜査に役立ちそうなものがないか探してください（笑）
二人が部屋を探索したところ、服などは綺麗にたたまれており、旅行用の鞄も置いたままになっていることが解った。娘の書置きもなく、とてもではないが家出したようには思えないという考えを固める一行。
ディックは探索中、鍵付きの日記と鍵を発見。それをこっそり持ち出そうとしたところ、家主に咎められる
家主 こらこら、勝手に持っていこうとするな。
ディック これはすまへんな。羽に引っかかってもうた。
他に手掛かりも見つからず、一旦退散し酒場に向かった三人は、捜査の途中経過を皆に話す。
リネール ルナルのヴァンパイアの能力はピンキリとは言え、強敵には違いないですよ。
ダンテス しかし、美女の危機を放っておくわけにはいきませんよ。
ＧＭ あれ？ ダンテス先生「女性に対する義務感」は持ってたっけ？
ダンテス いえいえ。この意見は女性の気を引く建前ですよ。元々正面から戦うのは私の役目ではありませんし（笑）
ＧＭ あ、そう（笑）
ディック 犯人がヴァンパイアや決まったわけやないけどな。それを知るためにも、家主に取り上げられた日記は欲しいで。
ルミノール どうすれば手に入りますかね。
ディック 忍び込むしかないやろ。リネールはん。あんさんそういうの得意でしたやろ？
リネール もちろん。「鍵開け」、「探索」、「忍び」、エルファですから「暗視」もありますしね。《化身》を使って空も飛べます。
ディック 完璧やな。いざって時のために飛べるワイが近くで待機しとくわ。ジェイルはん、あんさんも飛べるやろ？ 手伝ってくんなはれ。
ジェイル フン。仕方がないな。
ディック 思い立ったら吉日や、今夜決行するで。
【森の概念が崩れる時】
そんなわけで深夜梟に変身し、リアナ・カーナーの部屋に侵入するリネール。目的の日記は簡単に見つかったが、鍵の探索中に物音を立ててしまい、警備の者に気付かれてしまう。
警備員 物音はお嬢様の部屋からだ。お嬢様をさらったヴァンパイアかもしれん。油断するな。
リネール しまった。目的のものは見つけたし《化身》してとっとと退散しよう。（ころころ）げ！ 失敗した。
ＧＭ まだ２回は呪文を唱えるチャンスはあるが？
リネール （ころころ）失敗の（ころころ）失敗（苦笑）
ディック おいおい、大丈夫かいな？
ＧＭ そんなところでまごまごしていると、警備員が乗り込んでくるよ。
警備員 何者だ！？ そこを動くな！
リネール （すかさず）窓から飛び降ります！
ＧＭ ここ二階だし、下までの距離は結構あるよ。
リネール 絶望的な目標値だけど「軽業」の技能なし値で（ころころ）なんでこんな判定は成功するのかな（笑）
ジェイル その出目が先に出ていれば、今ごろはもう逃げ切れていただろうからな（笑）
警備員 庭に逃げたぞ！ 犬を放て！
リネール 庭に茂みがありましたよね？ そこに隠れましょう。
ＧＭ わかった。でも犬は君の匂いを嗅ぎ分け茂みに近づいてくるが？ いくら「動物共感」の特徴があっても、すべての犬が君に敵対しないわけじゃないからね。具体的にいうと、６匹中２匹が明らかに君を威嚇している。
リネール 《静かに》を使って大人しくさせます。（ころころ）どちらも成功。その隙にもう一度《化身》を （ころころ）失敗しました（半泣） まだ呪文を使うチャンスはありますか？
ＧＭ あるにはあるが、疲労は大丈夫か？
リネール 成功すれば、何とか体力は１点残ります。
ＧＭ 体力１だと疲れて一歩も動けなくなるが？
リネール う… じゃあ生命力を削って（ころころ）なかったら成功してたんだけどな～（半分あきらめモード）
ジェイル なんだか屋敷の方が騒がしいが、さてはリネールのやつ見つかったな。
ディック 助けに行きたいが、冷静に考えると、わいらリネールはんが屋敷のどのへんにいるか、わからへんのよな（笑）
リネールは茂み近くの塀をよじ登り、脱出しようとする。しかし、二度のチャンスを与えるも、（成功率約６２％で）両方失敗。しかし塀から落ちたとき、落下の衝撃を和らげる判定には（成功率約１６％なのに）どちらも成功してしまう。
そして最後の《化身》のチャンスも（成功率約５０％で）失敗し、警備員に囲まれてしまう。
警備員 そこの茂みにいるのは分かっている。大人しくでて来い！
リネール 茂みから顔を出します。
警備員 怪し･･･
リネール この森から出て行け。
ＧＭ は？
一同 （一瞬の間の後、大爆笑）
ＧＭ え～っと…（警備員の知力判定を行い結果は成功）。
警備員 何わけのわからんこと言ってやがる！（殴る蹴る）。
リネール うわぁあああ！
リネール。逮捕。
ディック ドツボなやっちゃのう（笑）
ジェイル 俺ら何も出来なかったな。帰るか。
翌日…
ＧＭ さて、リネールの罪状は住居不法侵入、窃盗の現行犯。盗んだものが日記だし、ストーカー罪も適用かな？あ、ちなみにダメージはぎりぎり気絶しない程度だから。
リネール うう…痛い。
ＧＭ で、翌日取調室で尋問を受けるわけだが。
リネール 弁護士を呼べ！ でないと私は何も話さないぞ。
リューリック ＧＭ。朝出勤すると、取調室にリネールがいるのですよね？
ＧＭ そうなるね。
リューリック じゃあ声をかけます。リネール。こんなところで何やってるんですか？
リネール ふぁっつ？ アナタは誰デスカ？ 私アナタなんか知りませんヨ？
ＧＭ 何で面白外人口調やねん。
リューリック 何言ってんだよリネール。昨日の件は上手くいったのか？
リネール あああ。せっかくリューリックに迷惑がかからないように誤魔化そうとしているのに。
ガヤン リューリック、あんた何か知っているのか？
ここで昨日のことを洗いざらい話すリューリック（彼は「正直」である）。侵入はリネールの独断ではあるが、盗もうとしたものが日記だけだったこと、相手側に怪我人や物的被害がなかったこともあり、事件解決のために止むを得ない行動であったと判断され、リネールの罪は罰金で済まされる。
ガヤン しかし、カーナーさんは捜査協力を約束してくれたんだろう？ わざわざ侵入する必要はあったのか？
一同 ……
リネール ない…
ルミノール 確か、言い出しっぺはディックさんでしたね。
ディック そういや、そんな気もするなあ（おとぼけ）
リネール その場の勢いに乗りすぎました（笑） リューリックが、日記を見せてくれと頼めば済むことじゃないですか。
リューリック じゃあ頼んできます。
ＧＭ うむ。素直に見せてくれといえば、難色は示すが見せてはくれる（笑） 鍵も渡されるね。
リューリック 中を見てみます。行方不明になる前一巡りほど。
ジェイル 行方不明になってからのことが書いてあったら怖いな（笑）
ＧＭ さすがにそれはない（笑） 行方不明になる前の一週間の間は同じことしか書いてない。
ディック （ナレーション口調で）私の背後に奴がいる。今奴はその鋭い爪で私を引き裂こうと…（笑）
ＧＭ ホラーじゃないんだから（苦笑） いや、ヴァンパイアが犯人ならばホラーか？まあいいや。とにかくその日記には一言。
【「今日もあの人が来てくれた」】
ＧＭ 毎日それだけ書いてある。
リネール ある意味お決まりのパターンでしょうね。霧なり蝙蝠なりに変身して、《魅了》して、部屋の中に誘ってくれるのを待つ。《魅了》は普段とは逆の行動を取らせようとすると抵抗されやすいから、部屋に入れてもらえるまで何日も通ったのでしょう。
ＧＭ （お、核心を突いてはいるが）何故、君はそんなことを知っている？
リネール あ、そうか。私、「神秘学」の知識はないですね。
ジェイル じゃあ、俺がそう推理をしたということで（笑）
ルミノール 私でもいいですがね（笑）
リネール となると、犯人を見つけるのは難しいことではないですね。リアナ嬢と同じ症状の人を見つけて、夜通し見張ればいい。
リューリック そうは言っても、そんな子がそう簡単に見つかるか？
ディック ダンディはん。この街の上流階級で、美人の娘さんがいる家は分からんか？
ディック 分かりますよ。ほら（ファイルを広げる）
ＧＭ （苦笑して）まあ、ダンテス先生ならばそんなものを持っていてもおかしくはないな。今度成長したら、「地域知識／街の美女の場所」を取っておくように（笑） で、現状で行方不明になっていない、条件に合う人物は一人。大手警備会社社長を務める、スミスさんのところの一人娘だ。今年成人したばかり。
ディック ダンディはん。あんたまさか…
ダンテス 断じて違うぞ！ 彼女は、今年成人するからチェックを入れておいただけだ。
ディック 冗談はさておき、リューリックはん。確かめるためにも、挨拶しに行きましょか。
ＧＭ 高級住宅街に住んでいるから、スミスさんの家はすぐに分かる。一応客間には通されるけど、スミス本人じゃなく執事らしき人が取り次ぐが？
リューリック こちらの情報を洗いざらい話しましょう。で、こちらのお宅のお嬢さんが、最近おかしくなっていないかと聞きます。
ＧＭ すると、執事の顔色が青くなるね。少々お待ちくださいと言って部屋から出て行く。しばらくするとパリッとした、黒服を着た男が出てくる。恐らく家主のスミスさんだろう。
スミス （慇懃無礼な態度で）アンダーソン君と言ったね。詳しく話を聞かせてもらおうか。
ルミノール ヘンなポーズで銃弾も避けそうな人ですね（笑）
リューリック 執事に話したことを、もう一度話します。
スミス 確かに、ここ数日うちの娘の様子がおかしい。分かった。警備の数を倍に増やそう。相手が本当に吸血鬼であるならば、それでも不安なくらいだがな。
ルミノール 私たちも夜勤警備をさせてください。
ディック 無料ってわけにもいかんけどな。
スミス それは願ってもいないことだ。警備員の平均給料分くらいしか払えぬが、よろしく頼めるか？
リューリック 任せてください。では、今から仲間を呼んできます。
こうして夜間警備に参加することになった一行。相手の活動が夜、さらにアンデットとなればもっとも頼りになるのが「暗視」を持つドワーフにして、アンデット退治のプロのファウン信者であるルミノール。
彼と「暗視」能力を持つエルファのリネール、警備員二人が、スミスの娘の部屋を警備。敵の目を欺くため、スミスの娘は自室ではなく客間に連れて行っている。そして客間の前の警備はリューリックとダンテス、ジェイルに警備員。客間の中はガヤン信者にして投極術*4の使い手でもあるスミスと、ジェスタ信者の警備隊長。ディックは屋根の上に上り、家全体を見下ろす位置に。
そして夜が深けていく…
ＧＭ ではディック。ちょっくら視覚判定してもらおうか。夜で暗いからミュルーンの君は…
ディック わいは梟族の血も引いとるからな。夜でも人並みに物は見えるで。
ＧＭ ふむ。じゃあ普通に判定を。
ディック （ころころ）クリティカル。何か見えたんか？
ＧＭ うん。なにやら不自然な霧が、漂いながら家に向かってきている。
ディック 霧？ まいったな、槍が通じん。しゃあない、その霧の動きを見張っとくわ。
ＧＭ そしてダンテス先生にリューリック。君たちのほうでも動きがある。客間の中から声がする。
スミス 待て娘よ、どこに行く気だ？
スミスの娘 どいてパパ…あの人が来てくれたのよ。
リューリック ダンテスさん。部屋の中に入りましょう。
ダンテス うむ。
ＧＭ 部屋の中では、窓に向かおうとしている娘をスミス氏が押さえている。外では、霧はまっすぐ客間のほうに向かっているね。
リネール 娘が、向こうが来たのが分かるっていう事は、逆もありえますね。部屋を変えた意味はなかったかも。
ディック 結果論やな。今それを論じてもしょうがないで。ルミノールはんとリネールはんに知らせに行くわ。
こうして客間に集結する一同。窓の外に漂う霧と対峙するものの、相手は武器の全く通じない霧の状態。ジェイルが《凍傷》で攻撃を仕掛けるも、霧には通じない。しかしルミノールの《死人祓い》*5は有効。霧はルミノールたちに近づくこともできなくなり、このままでは不利と退散することに決める。
ディック ワイが飛んで追いかける。前回拾った《持続光》の棒も持っていくで、見失うことはないはずや。
ＧＭ じゃあ視覚判定を。成功したなら、霧は街外れにある廃墟に向かっていくね。
ディック しばらく上空を旋回して、霧が別の場所に行かんか確かめるで。廃墟に向かったんはワイを騙すためかもしれんでな。
ＧＭ その様子はないね。
ディック ほな、スミスさん家に戻って報告や。
【血戦！】
ディックの報告を聞いた一行。さすがに夜ヴァンパイアを相手にする勇気はなく（もしあればそれは蛮勇だが）、廃墟の探索は翌朝行うことに決める。スミスさんの部下にガヤンへ連絡するように頼んではおいたが、援軍が当日の日中に来られる期待はできない。
ディック しゃあないな。ワイらだけで、できることはやってしまおう。
ＧＭ 朝日の中にあっても、その廃墟は禍々しさを残している。何かを探すなら「探索」か「追跡」で判定してみてくれ。
ルミノール （ころころ）「探索」で、私が一番大きく成功していますね。
ＧＭ じゃあ石畳の一つが、ごく最近動かされた形跡がある。
ルミノール 皆を呼んで、動かしてみましょう。
ＧＭ 石畳は簡単に動く。しかし、石畳の下から無数の蝙蝠が現れ君たちに襲いかかってくる！
リネール ぎゃあ！ 私（所持金不足で）鎧着ていないから「群れ」には弱い！
ルミノールとディックは盾で群れを殴り、リューリックがネットで捕獲する。蝙蝠が散らされた頃には、宣言どおりリネールの生命力は半減していた。革鎧しか着ていないジェイルとルミノールも傷を負う。
彼らの傷を魔法で癒した一行は、石畳の下のあった階段から地下へと進む。「閉所恐怖症」なリューリックは、地下に入ることに難色を示したが、ジェイルの《勇気》の呪文により一時的に恐怖症を克服し、地下へと向かう。
ディック 《持続光》の棒を構えとくで。
ＧＭ しばらく進むと、開いた場所に出る。妙に肌寒いのは地下だからというだけではないだろうね。六つの棺が等間隔に並べられているし。
ジェイル カタコンベか。
リネール 行方不明の女性って５人でしたよね？ それ＋ヴァンパイア本人で六つの棺ですかね？
ＧＭ そんなことを言っていると、部屋全体に響き渡るように声がする。
声 ようこそ招かれざる客よ。私の名はギルニス。この地下墓地の主だ。
リューリック 微妙に格好悪い名乗りだな。
ディック ギルニスはん。あんさんヴァンパイアやろ？
ギルニスの声 さて、どうだろうね。そんなことより、せっかく来てくれたんだ。少しは楽しんで行ってもらおうか。
ＧＭ という声と共に、君たちが下りてきた階段の上で、何かが動く音がするよ。
ダンテス 閉じ込められたか。
ＧＭ （実はブラフだけどね。）さらに、六つの棺の蓋がいっせいに開けられる！ そして棺の中から立ち上がるのは、青白いが美しい顔の、黒衣の青年が六人。皆同じ顔に見えるよ。
ギルニスの声 さて、どれが本当の私かわかるかな？
リューリック 分からないので近くの奴を切る！ 大振りになりますが命中しました。
ＧＭ すると男の形が崩れ、蝙蝠の群れとなって襲いかかってくる！
リネール 蝙蝠は嫌だぁぁ！
嫌だと言っても襲いかかってくる蝙蝠の群れ。ルミノール、ディックも棺の中に立っている男を攻撃するが、どちらも蝙蝠が擬態している偽者だった。
ギルニスの声 フハハハハ！ 高貴なるヴァンパイアにしてシャストア高司祭であるこの私が仕掛けたトラップ、貴様ら如きに解けるかな？
ディック 自ら正体をバラスとは、語るに落ちたな。所詮あんさんはその程度やっちゅうこっちゃ。
ジェイルがリューリックへの《怪力》に集中し、ダンテスがマントで、リネールが盾で蝙蝠を叩き落とす中、リューリックが４人目に切りつけるがこれも偽者。ここでリネールとディックが気付く。
ディック まさか、全部偽者か？ でもこの先に道なんて…
リネール ＧＭ、奥へ続く道ってありますか？
ＧＭ （聞かれるまでは、言わないつもりだったけど。）あるね。人一人が通るのがやっとの道だけど。
ディック 本体はその奥や！ 同じようなトラップがキン肉マン（黄金のマスク編）でもあったで（笑）
ディックのかけ声を合図に、奥へ走り出す一行。しかし、途中蝙蝠に群がられたリネールが大怪我を負い転倒。それを近くにいたルミノールが助けに向かい、二人は一時的に戦線離脱。リューリック、ディック、ジェイル、ダンテスらが向かった先には、またも六つの棺の上に六人の青年が立っていた。
ギルニスの声 さて、今回の偽者は私がさらってきた娘達だ。彼女達はまだ生きている。間違えて攻撃をすると、大変なことになるよ。
リューリック くそ！ どうすればいい？
ダンテス 生きているのなら、私の流し目でなんとかならないか？
ＧＭ 「生きている」とは言ったが、「意識がある」とは言っていない。
ディック ウィザードの旦那。《生命感知》とかは使えへんのか？
ジェイル おお、その手があったか。
範囲内に生き物がいないか調べることができる《生命感知》の魔法は、特定の対象のみを調べるよう使うこともできる。ジェイルの魔法はギルニスの居場所を正確に割り出すことに成功。そこにリューリックが切りかかるが外れ。しかし幻覚は解け、ヴァンパイア・ギルニス本体が姿を現す。
ＧＭ インタビュー・ウィズ・ヴァンパイアのアントニオ・バンデラスみたいな、野性的魅力を持った美丈夫だ。
ダンテス フッ！ だが私の魅力の前にはかなうまい。
ＧＭ 単純に「性的魅力」のレベルだけならば、こっちのほうが上だがね。基準となる生命力が違いすぎる。容貌は美形止まりだけど、カリスマ4レベルも持ってるし。
ダンテス なんだとー！？
リューリック 無駄話はいいから攻撃する！
しかし、圧倒的速さでギルニスが先手をとり、圧倒的な機動力で一気に距離を詰める。そして圧倒的攻撃力から放つ全力攻撃の狙いの先は･･･
ＧＭ 両手に広げたシャストアのマントで、ダンテス先生にフェイント即攻撃。
ディック 両手に広げたマント…変態やな（笑）
ダンテス （ころころ）レイピアで「受け」ようと思ったけど、全然ダメだ。
ＧＭ ダメージは１４点。「切り」攻撃ね。
ダンテス うおお！ 何だそのダメージは！？ 死んではいないが、気絶した。
ギルニス フッ…貴様も美しいが私はもっと美しい。
ダンテス 貴様のほうが「性的魅力」は上だからなチクショウ。
リューリックは隙だらけのギルニスに対し、お返しとばかりに全力攻撃。手痛い傷を負わせる。ジェイルの《凍傷》も成功しダメージを与える。ディックは相変わらずパワー不足。重要器官を狙うも、ダメージが通らない。
リネール ヴァンパイアに重要器官ってあるのですか？
ＧＭ 心臓に白木の杭を刺すと即死すると言うくらいだから、心臓はあるだろう。
ギルニスはリューリックを攻撃。スケイルアーマーを紙のように切り裂き、リューリックを気絶させる。ディックは前線が崩れるの恐れ、全力防御。ジェイルの《凍傷》はサイコロの目がふるわず抵抗される。そこでようやくルミノールが駆けつける。リネールは怪我を負ったため、途中に置いてきた。
ギルニスはディックに対しフェイントをかけるが、効果はなし。その隙に後ろに回ったルミノールの対アンデット用武器、イブニングスターがうなる。
ＧＭ 最初のリューリックの連撃が効いてる。その一撃で死亡判定だな。まあ生命力も高いし、そう簡単には（ころころ）逝くときは逝くもんだ（笑）
ルミノール アンデット滅すべし！
ギルニス おのれ！ 私はまたファウンの前に敗れるのか！ だが私を倒したところでこの街は…ぐわぁぁぁ！！
ＧＭ ギルニスは塵になった。
ルミノール じゃあその塵を小瓶に詰めておきましょう。あ、今は無理でも今度ここの土に聖水を振りまいておきます。
ＧＭ （チッ！ ここの穢れた土の中に自分の細胞の一部を隠していたから、いずれ生き返られるはずだったのに…）
ディック それもいいけどな、ダンディはんとリューリックはんの傷の手当てを頼むで。
ルミノール はいはい。
ＧＭ （あれ？ ギルニスの最後のセリフ、誰も気にしてない？）
ディック 娘はんたちの息はあるんかいな？
ＧＭ あ、うん。「口付け」の痕はあるけど、生きてるよ。ルミノール先生が診断すれば分かるけど、三人は三回のうち一回、二人は三回のうち二回だね*6。三回のうち一回ならば、わりと簡単に癒すことができる。リアナ・カーナーさんは一回だ。
ディック 全員花嫁にしようとしとったんか。欲張りなやちゃなあ（笑）
ＧＭ （やっぱり誰も気にしてないのね･･･シクシク）ちなみに彼がつけていたシャストアのマントは壮マハノチ*7のものだ。
ダンテス それは素晴らしい。私がもらっておこう。
ヴァンパイア・ギルニスは滅んだ！しかし、この物語はまだ終わりではない。
【血痕結婚を前提に】
ＧＭ さて、ヴァンパイア退治の噂はその日のうちに街中に広がる。君たちは一躍有名人だね。報酬も契約どおりの１００００ムーナの他に、各方面から１０００ムーナほど。面倒なんで、全部金貨でいいや。
ダンテス これだけ金があれば、しばらくはタバコを買うのに困ることは無さそうだな。
ディック ワイらが有名になった祝杯や！ ジャンジャン飲んでジャンジャン食え！（関係ない人たちをも巻き込んで、宴会を開いている）
ＧＭ このパーティ、ディックがいる限り商売敵から恨まれることはなさそうだなぁ（笑） そうそう、ヴァンパイア戦の時に一撃で大ダメージを受けすぎたダンテス先生とリューリックは、サリカの病院に入院してくれ。
リューリック あれ？ 呪文で傷は癒されたのでは？
ＧＭ 傷は癒えても、失った血が完全に戻るわけではないと思うよ。かすり傷をチマチマ受けたのならばともかく、死亡直前まで追い込まれるような一撃では出血も酷かろう。 ＧＵＲＰＳにおいて剣などで「切る」ことによる負傷の概念は「線」に対して行われる質量攻撃だけど、内出血はするだろうし。
ディック なるほど。納得やな。
ＧＭ 少なくとも僕のキャンペーンでは、「呪文で傷は癒えても、入院したほうがいい」状況があって、しないと、生命力と体力が一時的に下がる。で、二人は一緒の病室に入れられるね。
ダンテス 女の子達が私を待っているというのに、こんなところで時間を浪費することになるとは。フー…（タバコを吸う）
リューリック 病室でタバコを吸うな！
ダンテス まったく、ガヤンってのは硬い奴等ばかりで困る。
ＧＭ いやいや、ダンテス先生の場合、君が怪我したことを聞いた女の子達が看病に来るよ。ほとんどが「君のことはただの遊び」と割り切っている娘達。
恋人Ａ あんた、敵に接近しすぎてやられたんだって？
恋人Ｂ まったく。ケンカ弱いんだからムチャしすぎだよ。
ダンテス 女性を助けるためならば命でもかけるさ。
リューリック （ボソッと）嘘をつけ…。
ＧＭ で、たまにダンテスのことを本気にしていた娘が現れたりして、目に涙を浮かべて走り去ったりする（笑）
ダンテス ま…待ってくれ！ これは誤解だ！
恋人Ａ いいってダンテス。放っておきなよ。
恋人Ｂ ああいう娘は、後々厄介だよ。
リューリック （ボソッと）最低だなこの男…。
ＧＭ リューリックの方は、同僚がひやかしには来るが、全員野郎だ（笑）
ダンテス チッ！ ガヤンなんか連れてくんな（タバコを吸う）
リューリック だから病室でタバコを吸うな！
ＧＭ そんなある日、一人の女性が病室に現れる。
ダンテス フフ。また私の可愛い子猫ちゃんかな？
ＧＭ いや。リアナ・カーナーさんだ。リアナさんは妙にもじもじしながら、リューリックのほうに近づいて来る。
ダンテス フム？ では、私は席を外すとしよう。そして病室を出るふりをして隣の病室に行って聞き耳を立てます（笑）
リューリック 何？ 私はひょっとして道化？
リアナ あの、リューリック・アンダーソンさんですね？
リューリック は…はい。そうですが…。
リアナ 父から聞きました。私を助けていただいたと。聞いた話とは少し印象が違いますが…
リネール 家主と会ったときは私が《カリスマ》をかけていましたからね。
リアナ 私は強い男性が好きなのです。それに家柄ルックスともに悪くありません。それで…その…
リューリック どきどきしながら、次の言葉を待ちます。
リアナ ええい！ 遠回しな言い方は好みじゃない！ リューリックさん、私と結婚を前提としたお付き合いをしてください！
一同 おお！
リューリック えーと、突然のことで戸惑いながら、とりあえず頷いておきましょう。
ダンテス フフフ。これは面白いことになってきた。
ＧＭ とか言いながら隣の病室から出ると、君が入った部屋とは逆の隣りの病室からカーナー家の家主が。
一同 （爆笑）
ダンテス おお！ これはお父様。嬉しいことになりましたね。
家主 貴様に父といわれる筋合いはないが、嬉しいことになってくれたわ。結婚式は早いほうがいいな。娘と相談して日時を決めて、場所はサリカの本神殿を使おう！ わしに任せておけばこの街始まって以来、最大の結婚式を挙げてやろうではないか！
リューリック おっさん、気が早すぎだよ（苦笑）
ディック 将来のパパンに向かっておっさんはないやろ（笑）
ダンテス これから先、楽しみですね（ニヤリ）
ダンテス先生の含み笑いを残しつつ、 次回へ続く
*1:銀の月を崇めるコウモリ人間。ミュルーンのような大型の蝙蝠ではなく、特撮の怪人のような風貌。
*2:NPCがPCにどのような反応を持つかランダムで決める判定。容貌が良かったりカリスマを持っていたりするとボーナスが付く。
*3:ドラキュラ伯爵に代表される吸血鬼。ルナル世界では特定の月を崇める種族ではなく、様々な種族が吸血鬼に血を吸い尽くされることで生まれる怪物。
*4:「ゴーセス」と読む、警察柔道に似た実戦的な逮捕術。
*5:アンデッドにダメージを与え、術者に近づけなくする魔法。
*6:ヴァンパイアの口づけ、つまり吸血行は、血を吸い尽くしたのちに自分の血を一滴分け与えることで、対象もヴァンパイアにすることができる。１度に全ての血を吸った犠牲者は、干からびたゾンビのようなスレイブヴァンパイアに。２度に分けて吸うと、外見はそのままだが自意識は持たず、主の奴隷人形となるレッサーヴァンパイア。３度に分けて吸うと、自我も持ち性格だけが邪悪になったヴァンパイアとして生まれ変わる。なお、この血を吸い尽くす行為が、何日かに分けて行わなければならないのか、それとも一日で出来てしまうのかの明確なルールは無い。過去のルナルサーガリプレイを読む限りでは、１巡りに１回程度と見るべきだろうか。
*7:シャストアのマントの原料となる水竜。年をとればとるほど大きく頑丈な皮が取れるようになる。
