黄金の羊亭新館

ガープスルナルのリプレイを公開しています

第11話【或る貴族の館にて】

 

【城壁都市へ】

GM  突然だが、今回はリネールから始まる。

リネール  あ~、なんだか嫌な予感が・・・。

GM  君が半壊した高級住宅街を歩いていると、顔見知りとばったり出会う。

リネール  あ。

クリークス  あ。

二人  ・・・・・・。

リネール  逃げます。

クリークス  逃がすか!

リネール  クリークス! 私は無実だといっている!

クリークス  そう主張するのなら、ジャングの裁きを受けろと言っている!

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通行人A(ディック)  お、兄ちゃん。女に追いかけられているのか?

通行人B(リューリック)  ヒューヒュー、羨ましいねぇ。

通行人A(ジェイル)  ちゃんと認知してやれよ!

リネール  うおぉ!私とクリークスはそんな関係じゃない! 大体最後のはなんですか(笑) 適当な路地に入って、《幻覚》で気をそらしたり、積んである物を崩しながら逃げます! ・・・しまった、路地に入ったから《幻覚》で作った自分の偽者を、別方向に逃がす作戦が使えない。

ディック  まるっきし、刑事ドラマの追われる犯人やな(笑)。

リューリック  そっちをじっくり見ているのだから、《幻覚》出してもどっちが本物か分かるだろ(笑)。

GM  それなら彼我の距離が縮まることはない。しかし、クリークスは一旦立ち止まる。

リネール  お、あきらめてくれたか?

クリークス  自分に《韋駄天》。フルパワー!

リネール  うわっ? しまった!

GM  さすがに移動力の差がここまで大きくなると、逃げ切るのは難しいだろう。

リネール  クリークスに弱点とかはないのですか?

GM  大きな音や騒がしいのを極端に嫌う。むしろ、そういうものに恐怖を覚える。

ディック  「騒音恐怖症」か。可愛い弱点持っとるやんけ。

リネール  よし。ならばミュルーン伝令ギルドへ行きましょう。近くにありますか?

GM  えっと・・・(地図を見て)あるね。

リネール  そこに入って、財布をテーブルに投げる!

ディック  おや? リネールはん。どないした?

リネール  その財布の中身は自由に使ってくれ! その代わり、今ここで大きな声で騒いで欲しい!

ミュルーン  なんやて?よっしゃ、皆騒いだろうやないか!

GM  すぐにクリークスが入ってくるが・・・

クリークス  く! 耳障りな!

GM  彼女は耳を押さえて立ちすくむね。

リネール  その隙に裏口から逃げる! と、見せかけて、ギルドの中に隠れています。

ディック  ねぇちゃん、どうなはりましたか?

クリークス  くっ・・・ここに全身に刺青の怪しいエルファがこなかったか?

ディック  そいつでしたら、裏口から逃げましたで。

クリークス  礼を言う!

GM  クリークスは気力を振り絞り、よろけながらも裏口へ向かう。

ディック  リネールはん、大丈夫でっか?

リネール  ・・・クリークスもう行った?

ディック  あきまへんでリネールはん。あのねぇちゃんとどんな関係かは知らんが、ちゃんと認知してやらんと。

リネール  だから、クリークスとはそういう関係じゃないんですって!

 

 その日の夜、一行は今後の行動を決めるため、手近な酒場に集合し、テーブルを囲む。

 

ディック  ワイは、他の街にも行ってみたいと思っとる。

ルミノール  いままでずっとジョルジュにいましたからね。アストリアに来たのを機に、それもいいかもしれません。

リネール  私は正直、ヒンメルが近くにいるこの街にいたくないですね。

リューリック  私は子どもが生まれるまでに、ジョルジュに帰られれば、かまいません。

ジェイル  俺はあまりアストリアから離れられん。一年分くらい所長の薬を買えるのならば話は別だがな。

GM  あ、そうそう。前回、邪術師のアジトにあった活動資金10万ムーナの内、一割が君たちへの報酬として回された。

ジェイル  ということは、一人2000ムーナ?

ディック  ずいぶん気前のええこったな。

GM  そりゃ、<悪魔>教団を潰したわけだからね。

ジェイル  じゃあ40本は買えるな。それだけあればしばらくは大丈夫だな。

ディック  ほな、決まりやな。どこに行くかやが・・・

 

 あまり遠出をしすぎるとリアナ(リューリックの妻)の出産に間に合わなくなる可能性があるため、候補に上がったのが、ジョルジュから歩いて十日の距離にある<城壁都市>ドーガ。同じく七日の距離にある<魔道都市>マリクか、<歓楽都市>ミディアの三つ。

 マリクは魔術師達の研究所が乱立する街で、危険そうなのでパス。ミディアはカジノなどが多い街ゆえ、リューリックが妊娠中の妻を置いて遊びほうけていたと思われるのが嫌だという理由で却下。消去法で<城壁都市>へ行ってみることになる。

 

リューリック  あ、アストリアを離れる前に、私が殺した少女の家に謝罪に行きます。何を言っても言い訳にしかならないでしょうが。

GM  その家の主人は、君を見据えてこう言う。

主人  帰れ。私は君を許せるほど寛容ではない。

リューリック  しかし・・・

主人  私に殺されないうちに、帰れ!

リューリック  しょうがないので帰ります・・・

GM  家の中には君を恨めしそうな目で見ている少年もいる。奥さんらしき人のすすり泣きの声も聞こえるね。

リューリック  うう・・・心が痛む・・・

GM  (チッ! 罪悪感の欠片も無ければ、暗殺者でも送り込んでやろうと思ったのだがな。)

 

 翌日、一行は<城壁都市>ドーガへと向かう乗り合い馬車に乗った。

 

GM  <城壁都市>ドーガは、巨大な城壁そのものが、街になっている。この城壁自体は400年程前に、王都防衛用に造られたものだが、中に街が出来たのはここ100年の間らしい。想像できるだろうが、街の人のほとんどがジェスタ信者だね。

ルミノール  万里の長城みたいなものですね。

GM  横の長さは短いし、分厚さはそれより上だが、似たようなものを想像してもらえばいい。乗り合い馬車に揺られて2巡り、遠くにそれらしき壁が見えてくる。

ディック  辿り着くんは、後1日くらいかかるんやろ?

GM  その通り。でも道中に何かあるわけでもないのでショートカット。全高10メルーほどの巨大な壁、<城壁都市>ドーガが目の前に広がっている。

リューリック  私は初めて見ますが、さすがに大きいですね。

リネール  中には入れるのですか?

GM  緊急時でもない限り、昼のリャノの刻が終わるまで城門は開いている。ただし、国家や街に対して敵意を持っている者は、城門にある《敵感知》のマジックアイテムに反応する。

ディック  それは大丈夫やな。ジェイル以外は・・・。

ジェイル  いくら俺でも、国は敵に回さん。軍隊でも手に入れば別だがな(笑)。

ルミノール  やっぱり危険かもしれませんねぇ(笑)。

GM  君たちの心配はよそに、無事中に入れる。中はドワーフの地下都市みたく、自然の光はほとんどなく魔法の光で満たされている。ただ、住民のほとんどは人間だけどね。

リネール  森の民であるエルファがここで暮らすのは、いろいろ辛いでしょうね。

ルミノール  私には住み心地が良さそうですね。 

 

 一行はドーガの観光を始める。城壁内での人々の生活を見学し、城壁の外周を眺め、塔に登り、城壁の上を歩いた。城壁の形をした名物ドーガ饅頭や城壁のように固いドーガ煎餅も食べた。

 そんなことをしながら一巡り近くが過ぎたある日のこと・・・

 

GM  ディック。君がブラブラしていると、遠くが何やら騒がしい。

ディック  お、何や何や?

GM  見ると、超美人な白鳥のミュルーンが人間の男たちに追われているではないか!

ディック  白鳥のミュルーンと一緒に走るで。

白鳥のミュルーン  ん? おお、ディックやないか。こんなところで奇遇やな。

ディック  おろ? ・・・白鳥で超美人って、ニーチェやないか。こんなところで何しとん?

ニーチェ  女の子がごろつきに絡まれとってな。助けてやったらごろつきの仲間が追ってきたんや。鬱陶しいで、人気のない所におびき寄せてぶちのめした挙句、金品全部強奪したろうかと思っとんや(笑)

ディック  ほう。それはいい手やな(笑)

 

 袋小路に追い込まれたふりをした二人は、見事なコンビネーション攻撃でごろつきどもを撃退。

 

ディック  金目のものの強奪だけは勘弁したる。

ニーチェ  せやから、金置いてけば逃がしたるで。

リューリックの電波  それは脅迫と言います(笑)。

ごろつき  (財布を置いて走り去りながら)チクショー! てめえらのことなんか、三歩歩いて忘れてやるー!

ディック  おお、珍しい捨て台詞や(笑)。

ニーチェ  で、ディックはんは、なしてこんなところに?

ディック  ウチらは観光や。しばらく遊んだらここで一仕事して、ジョルジュに帰るつもりやがな。

ニーチェ  観光? お金持ちやなぁ。ウチは仕事の関係でここに来とんねん。

ディック  そうか。あんま根詰めん方がええで。

ニーチェ  忠告おおきに。でも、兄貴の仇を討つためには、金と力がいるんや。分かっとくれ。

ディック  「敵討ちなんかやめろ」言うわけにもいかんしなぁ・・・。ほな、体にだけは気ぃつけてな。

ニーチェ  そっちもな。ほな、機会があれば、またな。

 

 ディックはニーチェと別れ、他のメンバーと合流し酒場に繰り出す。

 そして、十日が過ぎた・・・

 

リューリック  さて、そろそろ一仕事終えて帰らないと、家内になに言われるか分かったもんじゃない(笑)。

ディック  このまま帰ったら、「仕事でドーガへ行っていた」言う言い訳もできんしな(笑)。

ルミノール  結婚生活からの逃避もこれまでですね(笑)。

リューリック  だから、そういうわけじゃないって。

ディック  ほな、酒場へ行ってどんな依頼があるか確認してみるで。

GM  酒場に回されている依頼は三つ。一つめは最近ドーガ近くに、多足のもの*1が掘ったと思われる穴が見つかり、その探索メンバーを募集しているそうだ。拘束期間は、最低4巡りは覚悟して欲しいとのこと。二つめは、イワーノ・ギュンターという貴族の警備依頼。場所はここから歩いて2日ほどのところにある、貴族の別荘。拘束期間は4巡り。三つめは、翼人の山賊退治。

ディック  三番目は却下やな(笑)

GM  むぅ・・・

リネール  多足のものとは関わりたくないですね。

ルミノール  私もです。

ジェイル  俺は見てみたいがな。無理にとは言わんが。

ディック  ワイも銀の月と関わるのは反対や。これで三対一やで、多数決で決めるなら貴族の警備確定やが?

ジェイル  しょうがないだろうな。貴族の護衛にも興味はある。

リューリック  私は皆さんに任せます(笑)。

ディック  ほな、確定やな。ギュンターはんとやらの別荘に行くで。

GM  ういうい。伝令ギルドに依頼を受ける旨を伝えて、4日以内に別荘に来て欲しいとのこと。あ、依頼の締め切りは3日後だね。報酬は4巡りの間の飲食は向こう持ちで、一人800ムーナ。

ディック  報酬も条件も充分やな。ほな、早速伝令ギルドに伝えてくるで。今日中に出発するでええな?

リューリック  問題無いですね。

GM  (ほう。せっかくギュンター家について調べる期間を与えたのに、使わないわけね。それはそれで別にいいけどね。)

 

【怪しい貴族の館】

GM では、ドーガを出て二日目の昼頃に別荘に着く。山間にある大きく立派な洋館だが、かなり古い印象を受けるし、外の手入れが行き通っているようには見えない。心なしか、天気も悪くなっているような気がする。

リネール  嵐が来て、帰られなくなる可能性がありますね(笑)。

ルミノール  洋館の中で殺人事件が起こるのですね(笑)。

ディック  犯人はお前や!(指を突きつける)。

リューリック  フハハハ! ばれてしまっては仕方が無い(笑)。

GM  そのネタは研究所でやったから、もうやらん(笑)。冗談はそれくらいにしておいてだ、別荘の塀は高いし、上には侵入防止の大きな棘がある。大きな正門は閉まっているね。

ジェイル  フン! 出迎えもなしか。

ディック  ギュンターはん! 警護の依頼を受けに来たリューリックの仲間の者やが、開けてくれんか?

GM  すると、背骨の曲がって気味の悪い顔の小男が現れる。手に大きな鋏を持っているところを見ると・・・

ルミノール  シザーマンですね。チョキチョキと(笑)。

GM  (ギクッ!)いや、違う。庭師だろう。

庭師  ようこそいらっしゃいました。今門を開けますので、少々お待ちを・・・

GM  気味の悪い音を立て、門は開くね。

庭師  中で執事のジーヤ様がお待ちです。どうぞ、お入りください。

リューリック  言われた通り、別荘の中に入りましょう。

GM  別荘の中は外と比べると、ずいぶん手入れされている。お手伝いらしき人に応接室に案内されると、中にはパリッとした服装のドワーフがいるね。武装はしていないけど、その筋肉と身のこなしを見る限り、ドワーフ拳撃術の使い手だろう。

ルミノール  あなたがジーヤさんですね。

ジーヤ  その通りです。この度は、我が主の護衛を引き受けていただき、感謝いたします。

リネール  早速聞きたいのですが、あなたの主は、誰に何故狙われているのですか?

ジーヤ  私の主イワーノ様は、4巡り後にギュンター家当主となられるお方です。それを良しとしない連中がいる。

リューリック  そいつらの手から、イワーノさんを守ればいいのですね。

ジーヤ  無論何も起きなくても、報酬はお渡しいたす。むしろ何も起きない方がよいのですがな。それと、もう一組警備員を雇っていまる。彼等と協力して護衛に当たっていただきたい。護衛の間寝泊りする部屋は、こちらで用意させていただきました。他に質問は?

ディック  イワーノはんに会わせてもらえんか?

ジーヤ  イワーノ様はお体を崩しておられる。元々ひ弱な方でな。今は大事をとって誰にも会わせるわけにはいかん。

リネール  ふぅん・・・。

ディック  明らかになんかあるな。今はつっこんで調べる時や無いやろうけど。

GM  他に聞くことが無いのなら、ジーヤさんは退室する。

リューリック  じゃあ、私たちのほかに雇われた警備員達に会ってみましょう。

GM  面倒なんで、ロールプレイでの自己紹介はすっ飛ばす。サリカの飲んだくれ神官坊主に、その奥さんのリャノ信者の魔法戦士。アルリアナの魔闘家、剣も使える魔術師。

リネール  飲んだくれ神官は、ディックさん(のプレイヤー)の将来の姿ですね(笑)

ディック(のPL)  失敬な。私はすでに飲んだくれ坊主だ(威張り)

GM  威張らないでくださいよ(笑)。

ルミノール  リャノ信者の奥さんって・・・。

GM  性格のイメージは「お残しは許しまへんで」だね(笑)。

ルミノール  やっぱり(笑)。

GM  あと、ニーチェを加えた5人が冒険者のメンバーだ。全員の体力が人並みか、それ以下なのが特徴だ(笑)。

ディック  槍の達人のニーチェがエースストライカーナわけやな。

リネール  戦闘ではイマイチ頼りになりそうにありませんね。回復呪文使いがいるのは助かりますが。

リューリック  昼夜でローテーションを組んで警備に当たりましょう。

リネール  できれば、朝昼夜の三組が理想ですが、人数が足りませんからね。

 

 一行はニーチェたちと相談し、暗視能力を持っているものが多いPCたち*2が夜を担当することになる。

 

ニーチェ  ほなディックはんら、夜は任せたで。

ディック  おう。梟族の血も引いとるワイの実力見せたるわ。もっとも、人並みに夜でも見えるだけやけどな(笑)。

リネール  ミュルーンが盗賊に向かないのは、唯一その点だけですからね。

ディック  まったくや。

リューリック  これから先夜勤ですからね。今のうちに夜型人間になれるようにしておきましょう。

ジェイル  要するに、寝るんだろ?

ルミノール  私もそうしましょう。

GM  部屋にはお手伝いBが案内してくれる。十畳間にベッドが二つ付いたなかなか豪華で綺麗な部屋だ。あ、二人で一部屋ね。

ディック  何があるか分からんで、2人と3人で分かれて泊まるで。

 

 戦力的なバランスを考え、リューリックとリネール。ディック、ルミノール、ジェイルでそれぞれ一部屋を使うことにした一行は、夜の警備のために昼寝をはじめる。

 

GM  じゃあ、リューリックとリネールが正門。他の三人が裏門周辺の警備をするわけね。

ディック  うむ。暗視の無いワイとリューリックはんは《持続光》を常に持ち歩いとるで。周辺の見回りも、お互いが見えない位置に行くことはしないで。

GM  了解。ろくに虫や動物の声も聞こえない暗い夜。暗闇に浮かぶ洋館の不気味さも相まって、いかにも何か出てきそう。しかも、たまに微震のようなものをかんじる。しかし、今夜は特に何も起きない。朝食時に昼組みと一緒に食事をとって警備の交代だ。ちなみに、昨日の夜もそうだったけど、食事はなかなか豪勢でおいしい。

ルミノール  これだけでも、依頼を受けた価値はあります(笑)。

GM  そんなことが4日ほど続く。微震も相変わらず。

ディック  大きな地震でもくるんかいのぅ。

GM  特に警備体制を変えていないのなら、裏門に怪しい人影が向かってくる。4人だ。

ディック  何もんや?

GM  その声に彼らは答えない。外見は黒のロングコートにグラサン。黒い帽子を目深に被っている。丈夫そうなブーツも黒く、グローブに縫われた金糸の太陽の紋章だけ色が違う。

ディック  夜間迷彩か?

ルミノール  拳につけた太陽の紋章。<輝く拳>団ですね。

ジェイル  格闘家の集団か。近づかれなければ、どうということはないな。

 

 問答無用で襲いかかってくる敵に立ち向かう一行。アルリアナ蹴打術とガヤン投極術を習得した格闘家たちは、後ろ回し蹴りや腕関節技を使う強敵・・・になるはずだったのだが、いかんせん相性が悪い。ディックは守りに徹し、ルミノールは受け流しを行いづらいフレイルタイプの武器で攻撃。ジェイルは遠距離から《凍傷》で攻撃し、二人は逃がしたものの残り二人はあっさりと、お縄につく。

 

ディック  さて、なんでここを襲撃したんか、キリキリ吐いてもらおうか。

黒服  俺は何も知らん。ただここを襲えと命令されたまでだ。

ジェイル  《嘘発見》の呪文を使おう。

GM  黒服は嘘を言ってはいないようだ。

ディック  むぅ。ただの下っ端かいな。

ルミノール  誰に命令されたのです?

黒服  我らのリーダー、Dストライカーからだ。あの男は強いぞ。我らが失敗したらあの男が動くことになっている。見たところ雇われ警備員のようだが、悪いことは言わない。すぐにこの仕事をやめて帰るがいい。

ジェイル  負けたくせに、何ナマ言ってやがる!(踏む)

 

【D-巨漢の魔人】

 

 一方その頃、正門の二人は・・・

 

GM  二人とも視覚チェック。

リューリック  へヴィプレートなので、全然周りが見えていません(笑)。

リネール  一応成功しましたが?

GM  では、リネールは後ろからこっそり近づく人物にギリギリになって気付く。リューリックは不意打ちされるまで気付かないね。リネールは背面攻撃のペナルティは受けるが、回避行動は取れるよ。

リネール  うわ!? (ころころ)ギリギリで回避成功。

GM  (ころころ)むう、ダメージが低い。リューリックにはかすり傷も与えられん。

リューリック  リュードくんを抜きながら振り向きましょう。

GM  そこには、両手に鉄爪を着けた、仮面の男が二人。

リューリック  バルログ

GM  夜間迷彩の黒装束を着ているが、イメージはそんな感じだ。美形ではないが。で、その鉄爪二人は、問答無用で君たちに襲いかかってくる。

リネール  なに? 私一人でこいつ一人と戦えと?

リューリック  とっとと一人倒して援護に行くから、それまで持ちこたえてくれ。

 

 しかし、鉄爪たちは強かった。高い「空手」技能に加え、我慢強く、戦闘即応も持っている。さらに多彩な格闘動作を使い、リューリック達を苦しめる。鎧の硬いリューリックは攻撃が命中してもダメージが通らない場合もあるが、リネールはそうはいかない。鉄爪Bの後ろ回し蹴りを顎に喰らい、意識が朦朧としたところに爪の一撃を受け気絶。

 リューリックは鉄爪Aをなんとか気絶させることに成功するが、Bに向き合ったところで自分も気絶する。

 

裏口のルミノール  ダブルKOですね(笑)。

GM  そんなことを言っている裏口組。突如向こうが明るくなった。

ディック  ゲッ! まさか青いドーム?

GM  違う。なんかスポットライトみたいな感じだ。

ジェイル  スポットライト?

GM  で、そのスポットライトに照らされ、一人の巨漢が歩み出てくる。

巨漢  てめぇら! 戦闘員とはいえ、四人とも撃退するとは、なかなかやるじゃねーか!

GM  矢尾一樹みたいな、大きくてよく通る声だ。

ルミノール  今度の相手は強そうです。今のうちに筋力の霊薬を飲んでおきましょう。

ディック  今度は名乗ってくれそうやな。あんさんの名前と、あんさんらの目的を教えんか!

巨漢  俺の名は、Dストライカー! メイア様の、メイア様による、メイア様のために動く漢だ!

ジェイル  メイア? 今まで出てきた奴にそんな奴はいなかったよな?

ディック  うむ、記憶にない。

GM  Dストライカーは、さっき逃げた二人と一緒に、8メルーくらいの距離まで近づく。ド派手な鎧に、ド派手なマントを羽織り、髪は逆立てている。なかなか端正な顔だが、両目の下に爪で引っ掻いたような赤いメイクを入れている。

ディック  派手な兄ちゃんやな。メイア様とは何もんや?

GM  Dストライカーは、ニヤリと笑う。

D  それは俺を倒して聞きだしてみな!

GM  マントを投げ捨てダッシュ!この程度の距離、こいつの移動力をもてすれば一気に詰められる。

ジェイル  早!

D  大振りになるが関係ねぇ! そこの鳥にドロップキックだ!

GM  (ころころ)あ、命中しかかった。ちなみにこの攻撃、止めたり受けたりしてもそっちが転倒する可能性あるから。

ディック  とはいえ、よけるんは難しそうやな。転ぶの覚悟で盾で止めたる。(ころころ)止めたけど、転んだ。

GM  ドロップキックは使ったほうも転倒するよ。

ジェイル  馬鹿かこいつ? 敵陣突っ込んできて隙だらけになってどうする。

ルミノール  では、倒れた男の喉を狙って攻撃しますね。(ころころ)命中。ダメージは9点ですよ。

GM  なるほど。だがその程度のダメージ、この男の頑強と筋肉の前には(ころころのころころ)ルミノールのシャイニング・サンは、Dストライカーの首の薄皮一枚傷つけただけだ。

一同  何ィ!

D  ハッ! その程度か?

正門のリネール  「筋肉鎧」ですか!?

GM  ふはははは、その通り! 敵だけがこんな特徴を持つのがずるいと思うならば、モンスターの特殊能力とでも思えい!

ルミノール  別にずるいとは思いませんが・・・

ディック  化けもんやな。

 

 ジェイルの《凍傷》もDの「強靭精神」の前には無力。黒服たちもディック達に近づくが、まだ攻撃射程内までは遠い。

 Dとディックは膝立ちになり、ルミノールはDの頭部めがけてシャイニング・サンを振り下ろす。しかし、その攻撃もDの脳みそまで筋肉な頭には通じなかった。・・・いや、Dの知力は人並みだが。ジェイルは近づいてくる黒服Aに《凍傷》を使い、一撃で気絶させる。黒服Bはジェイルに接近。蹴りを放つも、《瞬間回避》でよけられる。

 次のターン、Dは立ち上がり、ディックの首に組み付く。

 

ディック  くっ・・・窒息させる気かいな?

D  そんな地味な戦法は使わん!

 

 ルミノールは防御を捨て渾身の一撃をDに放つが、それでもかすり傷程度しか与えられない。ディックはくちばしでDの目をつつこうとするも外れ。ジェイルは黒服Bに《凍傷》を放つも抵抗される。黒服は防御を捨ててジェイルに全力攻撃。ダメージを与える。

 

 

D  喰らえ! D・ダイナマイト・ボム!

GM  ディックを吊り上げ、体を反転させる。そのまま自分の全体重をかけて地面に叩きつける!

ディック  うおぉ! ノーザンライトボム!?

GM  扱いは首折りなので、ダメージは首にいく。鎧の防護点は半分ね。(ころころ)あれ? ダメージがイマイチ。8点。

ディック  格闘家の攻撃で8点ダメージがイマイチかい!

ルミノール  しかし、そのモーションでは自分も倒れませんかね?

GM  ご指摘の通り、倒れます。

ジェイル  倒れた程度じゃ不利にならないってか?

ディック  実際、不利なんはこっちみたいやしのう・・・。

 

 ルミノールは倒れているDの脳を狙うが、Dの鉄のように鍛え上げられた腕は、その攻撃を受け止める。ジェイル馬鹿の一つ覚えで黒服にダメージを与え、黒服の反撃で負傷する。

  Dとディックは膝立ちになり、ルミノールの攻撃はDには効かず、ジェイルは黒服を気絶させる。

 次のターン。 Dのパンチを顔面に喰らったルミノールも気絶。ディックは後ろからDを刺すも、やっぱり効かない。ジェイルはディックを目標に《すばやさ》を集中。Dはディックに組み付き、ディックは再び目を狙って嘴でつつこうとするも外れる。ジェイルは《すばやさ》の発動に失敗し、もう一度集中を開始。ディックはDに投げられるも、またもダメージが小さく、気絶ダメージにも達しない。ディックは膝を立て、ジェイルは《すばやさ》の発動にまたも失敗。呪文をかけやすくするため、ディックに近づく。

 

GM  あれ? ディック後ろ向いて膝立ち?

ディック  むぅ・・・後ろから殴られるとやばいのう。

GM  じゃあ、Dはディックの両腕・・・いや、両羽を掴もう。そのままそのまま首に、全体重をかけ膝蹴りしてやる。

ディック  ぬぅ? カーフ・ブランディングか!?

GM  その通り! 倒れたところに、テキサスクローバーホールドをかけてやる(笑)。

ディック  テキサスってどこやねん(笑)。

 

 しかし、カーフ(略)のダメージにより、テキサス(略)を決めるまでもなく、ディックは気絶。Dとジェイルの一騎打ちとなる。

 

ジェイル  さすがに勝ち目はなさそうだな。変身しよう。

GM  狼に変身した君を見て、Dは楽しそうな顔になる。

D  狼男か。楽しませてくれよ!

 

 いくら素体能力が高くとも、接近戦用の技能を持たないジェイルがプロレスラーのDストライカーにかなうはずもない。《凍傷》がクリティカルし、ダメージを与えたきり、ろくな反撃もできないまま追い詰められる。

 

ジェイル  しょうがない、壁を登って逃げ・・・

D  その前に足をつかんでやる。そのままジャイアントスイングに持ち込もう。

ジェイル  ま・・・待て!ロープロープ(笑)。

D  チッ、しょうがねぇなあ。

GM  Dは手を離す。

ジェイル  た・・・助かった・・・。

D  フン。思ったよりこっちの被害もでかいな。このままじゃ作戦遂行は不可能か。

GM  Dは笛のようなものを吹くと、気絶している黒服四人を引きずって立ち去る。

ジェイル  なんだったんだ一体?

 

 ジェイルは昼組みを起こし、気絶したみなの手当てを手伝ってもらいつつ、状況を説明。正門の方に見回りにいった昼組はリューリックとリネールを発見する。もう少し発見が遅かったら、出血多量で命が危なかったかもしれない状況だった。

 別荘の中には侵入された形跡もあり、Dの笛は、撤退の合図であったと一行は推測する。なんとか全員の傷を癒し、一息ついたところで、ジーヤが現れる。

 

ディック  ジーヤはん、敵は思った以上に強力や。なんとか戦力の増強を頼めんやろか?

リューリック  私たちの報酬は多少減ってもかまいませんから、お願いします。

ジーヤ  うむ。ワシとしても、イワーノ様を守れなければ意味がない。伝令を飛ばそう。しかし、増援が来るまで三日はかかるぞ。

ルミノール  それまでは、なんとか我々だけで耐えましょう。

ディック  敵の衣装は、昼間は目立つでな。恐らく仕掛けてくるんは夜やろう。昼組から何人か回ってほしいんやが・・・

リネール  あの服装は、向こうの作戦の可能性もありますよ。敵襲があったら大きな音を出すなりして、別荘内に知らせるというのはどうでしょう。

ディック  うむ。そっちの方がええな。ワイが罠技能で引っ張れば音のなる鳴子でも作っとくわ。

ルミノール  後は、メイアという人がだれかですね。

リューリック  そんな名前の人に心当たりは?

ジーヤ  全く無いな。

リネール  ・・・まさか・・・ね。

 

【全てを飲み込むもの】

 その二日後、闇夜に隠れた鉄爪が仕掛けた爆薬により、壁の一部が爆破された。爆発による人的被害はなかったが、鉄爪を追ったディックが毒付きの投げナイフで負傷。その後に起こった襲撃は、警備員総出で(Dストライカーがいなかったこともあり)なんとか防ぎ切った。

 そして翌日の昼、警備の増援が来る。

 

ルミノール  どんな人たちが来たのですかね?

GM  あ~・・・、サンプルキャラの中から、ランダムで選んでくれ(笑)。

ディック  適当じゃのう(笑)。

 

 

 援軍に来たのはアルリアナ信者の格闘家、まだ少年と言える年齢のジェスタ信者の魔法戦士、彷徨いの月を崇める昆虫人フェリアの心の声使い、タマット信者のレンジャーの4人。回復呪文使いはいないが、戦力は昼組より上。

 彼らは朝組ということで警備に当たることとなった。

 

リネール  心の声使いは嬉しいですね。Dストライカーを操られれば、かなり有利になります。

GM  (あいつの抵抗値は「強靭精神」によるものだから、総合的に抵抗値は高いんだけどね。)

ディック  これで戦力も整ったな。それでやジーヤはん。士気を高めるために、イワーノはんに会わせてもらえんか?

ジーヤ  いや、それはできません。イワーノ様はご病気なのです。

ルミノール  病気でしたら、私にも医師の知識がありますよ。

ジーヤ  それには及びません。専属の医師もいます。

ディック  せやけど、守る対象を知っておくことは、警備員には重要なことやで。それに挨拶するだけや。病気が悪化するような真似は誓ってせえへん。

ジーヤ  むぅ・・・仕方がありません。特別に君たちだけには会わせましょう。

GM  君たちは別荘二階の一番奥にある部屋に案内される。

ジーヤ  イワーノ様、失礼いたします。

声  良いぞ良いぞ。

GM  部屋の中には16、7くらいの青年がいる。青白い顔で体も細く、確かに健康状態は悪そう。あ~と、ルミノール。ちょっと知力チェック。

ルミノール  ・・・成功ですが?

GM  シャイニング・サンに反応がある。ただし、今までと違い微弱で震えている感じだがね。

ルミノール  反応はどこから?

GM  それは分からない。近くに「何か」がいるのは確かだろうがね。

ルミノール  こっそり「アンデット感知」をしてみましょう。

GM  アンデットの気配はない。

ルミノール  おやぁ?

GM  ルミノールが悩んでいる間、ジーヤはイワーノに君たちの紹介をするが、イワーノは頷いているだけでだ。

ジェイル  操り人形か?

ジーヤ  さあ、イワーノ様。もうお疲れになられたでしょう。この者達を引き下がらせます。

イワーノ  良いぞ良いぞ。

一同  ・・・・・・。 

 

 イワーノの態度と、シャイニング・サンの反応をいぶかしむ一行。警備の合間にいろいろ調べてみる。すると、建物の外観からイワーノの部屋の上に隠し部屋らしきものがあることと、シャイニング・サンは、イワーノ周辺でのみ反応することがわかる。

 

リューリック  これは、何かある。

ディック  今度Dストライカーか鉄爪が来たとき、ワイらだけで少し話を聞いてみたいな。

 

 その後、二日間は調査も進まず、襲撃もなく、平穏な時間が過ぎていった。しかし三日目、警備開始からは10日目の朝、巡回していたディックとリネールが、正門前で倒れている格闘家とジェスタの少年を発見する。

 

ディック  鳴子を鳴らすで!

リネール  呪文で傷を癒します。

GM  癒すも何も外傷はない。

ディック  呪文かなんかか?

リネール  分かりませんが、私には治せそうにありません。

ディック  しゃあないな。二階に向かうで。

リネール  同じく。

 

 途中リューリックと合流し、三人で二階、イワーノの部屋へ向かう。

 

GM  イワーノの部屋には、倒れて動かないイワーノと、天井を見上げている漆黒の少女がいる。よく見るとイワーノの首筋からは半透明の管のようなものが天井に伸びているね。

リネール  やはり、あなたがメイアさんでしたか。

漆黒の少女(以下メイア)  ・・・遅かった。ここまで成長しているとは・・・。

リューリック  今回も、何か知っているようですが・・・

メイア  ・・・逃げろ。

GM  漆黒の少女は木製の窓をぶち壊して、そこから飛び降りる。

ディック  相変わらずな人やな。

リューリック  この管、切っていいのかな?

リネール  そんなことより逃げましょう。いままで、あの人の警告はいつも正しかった。

ディック  そやな。

GM  君たちが部屋を出ようとしたそのとき、イワーノの部屋の天井に突如ひびが入り、今までで一番大きな微震を感じる。

リューリック  本気で逃げましょう。

GM  その揺れに気付いて、隣りの部屋からジーヤさんが出てくる。

ジーヤ  お前達、こんなところで何を・・・

GM  そういったところで、天井が崩れる! そこから現れたのは、よく分からない肉の塊だ。イワーノを飲み込むと、徐々に膨れ上がっていく! そして部屋の中にあるものを、次々と取り込んでいくね。そんな肉の塊にジーヤは近づく。

ジーヤ  イワーノ様、もう少しの辛抱なのです! もう少し待てばあなたは完全に蘇られる。今動いてしまっては・・・

リューリック  じいさん離れて! 肉の塊に切りつけます!

GM  その攻撃で肉片は飛び散るけど、君の剣を取り込もうとする。体力にペナルティ受けて判定ね。

リューリック  うおぉ! こんなところでリュードくんを失ってなるものか! (ころころ)成功!

リュード 助かったぜブラザー。

GM  肉の塊は、蠢きながらどんどん肥大していくね。ジーヤも取り込まれた。

ディック  ワイは飛んで下に行く。寝てる連中を起こしてくるで!

リネール  私たちは階段から行きましょう。

 

 ディックは裏門にいたフェリアと盗賊、裏口を巡回していたルミノールとジェイルに現状を手短に報告し、皆を起こして逃げるように言う。最初は戸惑っていた4人だが、窓からあふれ出てくる肉の塊を見ては戸惑っているヒマなどない。五人で協力して鳴子によりすでに目を覚ましていた警備員に事情を説明し、最低限の荷物を持って別荘の外へ避難した。

 

 

GM  ギリギリ・・・ってこともないね。肉の塊の増殖スピードは遅い。割と余裕で裏口から脱出できた。

リューリック  じゃあ、私たちも・・・

GM  いや、リューリックとリネールは階段を下りたところで二人のお手伝いに出会う。

リネール  逃げてください、ここは危険・・・

GM  お手伝いは、手に持った短剣で君たちに切りかかってくる!

リューリック  何をする!?

GM  よく見ると、そのお手伝い二人には、鱗で覆われた尻尾が生えている。口は耳まで裂け、舌先は二つに分かれ、目は爬虫類のように冷たい。

リネール  爬虫人に変異しかけた人間か?

リューリック  じゃあ、あの肉の塊は銀の月関係?

GM  そんなこと言っているヒマはあるかな? 後ろからは蠢く肉の塊、正面からは短剣を持った半爬虫人が迫ってくるよ。

リューリック  しょがない。悪いが倒させてもらう!

 

 短剣以外にたいした装備のない半爬虫人だが、強靭な生命力と硬い鱗を持ち、リューリックとリネールがいくら切りつけてもなかなか倒れなかった。ようやく倒したその頃には、蠢く肉の塊はすぐ後ろまで来ている。正面玄関から脱出するために走る二人。しかしその二人の前に更なる邪魔者が立ち塞がる。

 

GM  元庭師の小男は、背中に甲羅のようなものを背負っている。人間の体との接合部分からは触手がにょろにょろと出ているね。庭師は大鋏を鳴らしながら、ただでさえ不気味な顔に不気味な笑みを浮かべて近づいてくる。

リネール  半多足のもの? 銀の月には違いないですが・・・

リューリック  だから、考えるのは後だ!

 

 しかし、この半多足のものは強かった。硬い甲羅は、リューリックの上質のグレートソードブレイカーをも受け付けず、触手で動きを封じておいて大鋏で切るという戦法で、プレートアーマーをも切り刻む。

 

リューリック  やばい! 肉の塊がすぐ後ろまで来てる!

リネール  何とかして触手だけでも切らないと・・・

GM  (えっと・・・移動速度がこうで距離がこれ、集中時間がこれだから、そろそろか。)その刹那、漆黒の何かが目の前を横切る! 次の瞬間君たちが見たものは、吹っ飛ぶ半多足のものと、優雅に着地する漆黒の魔鳥の如き少女。

リネール  メイアさん!?

GM  え~と(ころころのころころ)具体的には、半多足のものは、54点のダメージを受けて、12メルーほど吹っ飛び4メルー先にあった壁の染みとなりました。

リューリック  なんですかそのダメージは!?

リネール  ・・・あ、そうか!ガープスマーシャルアーツのマンガルール!

GM  うん。<強打>+<八艘飛び>*3で一時的に体力を6倍まで跳ね上がらせ、【飛翔蹴り】*4を放った。跳躍距離が20メルーほどだったんで、12D+3の攻撃だ。

脱出済みルミノール  ライダーキックですか!?

リューリック  す・・・すごい! マジで惚れた! 一生あなたについて行きます!

脱出済みディック  お前はんは奥さんがおるやろ(笑)。

リネール  あの時(セッション5)戦わなくて良かった・・・。

メイア  早く逃げろ。我も、そうそう都合よくは助けられん。

GM  メイアは人間離れした脚力で正門から去っていく。具体的に言うと13(100メートルを7秒切る)。

脱出済みジェイル  オリンピック世界記録を出せるな。

リネール  どうして私たちを助けてくれたのか気にはなりますが、今は逃げましょう。 

 

 正門に回って、ジェスタの少年と格闘家を目覚めさせていたディック達と合流し、計14人の一行は、肉の塊に追われながらも、山の上へ避難しようとする。

  

GM  途中で、茂みの中から鉄爪の二人が出てくる。

リューリック  こんな時に!

鉄爪A  待て。我ら、もう敵ではござらん。

ジェイル  じゃあ、何をしに出てきた?

鉄爪B  火薬を使って、奴を吹き飛ばす。

ディック  おう、やってくれ!

GM  鉄爪たちは肉の塊に向かって走り出す。しばらくするとかなりド派手な爆音が響く。

ジェイル  やったか?

GM  と思って振り向くと、肉の塊は10分の1ほど吹き飛ばされて、もだえているようにも見える。爆炎で燃え移った炎も広がっていくけど、肉の表面から生えた触手によって消されると、また動き出すね。

ディック  だめか。でも、炎は効くんやな。

 

 計14人の一行は、別荘が見渡せる丘の上に辿り着いた。

 

GM  別荘全てを飲み込んでもなお肥大化を続けていた、蠢く肉の塊は、一辺が1000メルーを超えるサイズにまでなった。

リネール  1000メルーって、1メイル(1キロメートル)ですね。なんて大きさですか・・・。

GM  肥大化はそこで一旦ストップ。肉の塊は非常にゆっくりとだが君たちに近づいてくるね。

ジェイル  何故こっちに来る?

ルミノール  おなかが減っているのかもしれませんよ。

ディック  なんにせよ、こっちに来るなら好都合や。みんな、街のない方にこいつをおびき寄せといてくれ。ワイはドーガに行って応援を呼んでくる。

ルミノール  街の無いほうというと・・・

ディック  (地図を見て)理想は、ここのゴードン山脈やな。GM、近くに渓谷は無いか?

GM  てか、今いるのがゴードン山脈。ライアン渓谷ってのがあるけど、歩いて一日以上かかる。

リネール  肉の塊は、こっちが歩くのよりずっと遅いのでしょう? だったら、奴の動きをよく見ていれば大丈夫ですよ。

ディック  他に、近くの街のえらいさんにコネなんかがある言う人は、事情を説明して大量の油と火、それに人手をもろうて来てくれ。ライアン渓谷の上が集合場所や。奴が谷に入ったところを火あぶりにしたる。

 

 ディックを始め、数人が<城壁都市>ドーガ、<中継都市>ジョルジュ、<魔道都市>マリク、<聖都市>エリスと言った近隣の大都市や、特に名も決めていない町や村に急ぎ救援を要請に走る。情報伝達のための、飲んだくれサリカを含んだ、残ったメンバーは、蠢く肉の塊と着かず離れずの距離をとりながらライアン渓谷へと向かう。

 

GM  さて、渓谷目指して山を登っている途中、突如影がよぎる。

リューリック  何だ?

GM  数人の柄の悪そうな翼人が、空中から弓や槍で君たちを狙っている。

翼人A  俺たちは泣く子も黙る山賊よ! 怪我したくなければ身包み置いて行くがいい!

ルミノール  翼人の山賊が出るのは、ここでしたか。

リネール  あなたたち、そんなことを言っている場合じゃないですよ。あれを見てください。

翼人A  なにぃ?・・・って、なんじゃありゃあ!?

翼人B  あれは・・・まさか伝説に聞く、くぁwせdrftgyふじこlp;?

リューリック  は? 何と言いましたか?

GM  人間やドワーフの声帯では発音不能な言葉だ。

移動中ディック  きっと「なにであれ」って意味やな(笑)。

リネール  知っているのでしたら教えてください。あれはなんなのです?

ジェイル  逃げるのに精一杯で、奴がなんなのか考えていなかったな。

翼人B  あれは、四大元素のどこにも属していない、異界より来たりし神。龍からも元素神からも嫌われ、消滅させられたものどもだと聞く。

リネール  しかし、あいつの周辺に半爬虫人や半多足のものなどもいましたが?

翼人B  やつらは、半端に全ての要素を兼ねそえているから、嫌われたと言う説もある。

リネール  なるほど。では、風の元素神を崇める者として、奴を倒すのに協力してはもらえませんか? 倒したあかつきには、傭兵としてやっていけるよう、街に進言することを約束しましょう。

翼人A  いや。俺たちは好きで山賊やっているだけだし。

翼人B  しかし、あれを野放しにしておくのは、翼人としての名折れ。協力しよう。

 

 翼人の山賊たちにも火と油を持ってきてもらうように頼んだ一行は、再び渓谷を目指す。そのころ、<城壁都市>に向かっているディックは、蠢く肉の塊の通った後に多足のもののような甲羅のついた鳥や、半アメーバ状になった鹿などを見つけ、奴が生態系をも狂わせる危険な存在であることを認識する。

 リネール達は、蠢く肉の塊の移動力から、奴がライアン渓谷に着くには十日はかかると計算、実は優秀な飲んだくれサリカの《思考転送》で、街に救援要請に向かった人たちに伝える。

 一方、生命力が高く、長距離を走る技能も持つディックは、ほぼ丸一日かけて走り続け<城壁都市>に辿り着く。

 

ディック  ジェスタの本神殿に駆け込むで。

GM  この街のジェスタ本神殿って言うと、街の最高政府機関だな。観光していたときに来たことがあるだろうが、今日の本神殿はなんだか妙に慌ただしい。

ディック  お? ひょっとしてもう、あのバケモンの情報が入っとる?近くの人に聞いてみるで。

GM  ディックの予想通り、ゴードン山脈で確認されたUMA*5について、対策会議が行われているらしい。

ディック  こいつはチャンスやな。こっちの情報と作戦をありったけ流して、救援を要請するで。

 

 ディックの情報により動き出す<城壁都市>のジェスタ本神殿。即座に動ける人員と、油の輸送や人員の移動に使う馬車、相手のサイズを考え、上空からも油が撒けるように、ミュルーンや翼人、魔術士も、すぐに集まれる者だけでも雇い入れたとして、準備に最低五日、移動に最低三日はかかると言う。

 

ディック  ワイが一日かけて走ってきたで、残り後九日か。ギリギリやな。

 

 準備はジェスタ本神殿の人々に任せ、ディックは休息を取る。

 一方、蠢く肉の塊をおびき寄せている一行は、ローテーションを組み仮眠を取りながら、順調にライアン渓谷へと向かっていった。

 それから八日後・・・

 

GM  蠢く肉の塊は、体のほとんどが谷に入った。奴が通った道は、ぺんぺん草一本生えていないありさまだね。

ディック  生態系も狂っとるしのう。

リューリック  各都市に要請した人員や油の方はどうなっていますか?

GM  喜びたまえ。いま、渓谷の上には君たちのピンチを救うために現れた、24人の赤き勇者が・・・

ディック  ネタはええから、状況を説明せい。

GM  正確な人数は不明。しかし、百や二百とかいうけちな人数じゃない。油も大量に集まったし、それを撒くための飛行部隊や、大型のウォーターシューターなんかも用意された。火は魔術師もいるし大丈夫だろう。

ルミノール  これなら何とかなりますかね。

GM  しかし、あのサイズ化物の全体に油を撒くのは、時間がかかる。かといって、中途半端じゃ倒せない。だから、油を撒き終わるまでの間時間稼ぎをしてくれとのこと。

ジェイル  時間稼ぎ?

GM  うん。蠢く肉の塊は、何百メルーもある触手を伸ばして近くにあるものを飲み込もうとしているんだ。実際、低空で油を撒いていた者が何人か飲み込まれた。大型ウォーターシューターも狙われているっぽい。

リューリック  しょがない。やるしかないか。

ジェイル  触手に《凍傷》は効くのか?

GM  サイズがばかでかいからね。消費は1000倍くらいか?

ジェイル  援護呪文に徹するか・・・

GM  上のほうから「後10秒持ちこたえてくれ!」という号令が聞こえる。

ディック  10秒やな。

GM  君たちには、4本の触手が襲いかかってくる。さて、戦闘開始だ。

 

 戦いは熾烈を極めた。単調な攻撃しか行わない触手だが、その巨大さゆえ攻撃が当たればダメージも大きく、回避するのも難しい。PC達は一つの触手に集中攻撃を行い3ターン目には倒すも、次のターンには、本体から新たな触手が生え、攻撃を仕掛けてくる。さらに、5ターン目、触手が変異を始め、それぞれが地水火風の特性を持った攻撃を行い始める。

 そんな中、ルミノールが気絶し、触手に絡みつかれる。意識はあったが触手に絡まれたリネールと共に、蠢く肉の塊本体に取り込まれそうになる。普段の行いの違いからか、PC達はルミノールを助けることに専念、何とか救出に成功。

 しかし、リネールを助ける暇無く、10ターンが過ぎた・・・

 

リネール  無理してでも助けてくれませんか?

ディック  いくらなんでも、そこまで本体に近いと無理や。

リューリック  すまないリネール。君のことは忘れない。

GM  (お? こりゃあ、あの言葉を伝えるには良いシチュエーションだな。)上から聞こえる、「今だ!火を放て!」の号令一過、火矢や《火球》、爆裂弾が放たれ、油を射出するウォーターシューターの前に松明が掲げられ、炎の橋ができ蠢く肉の塊を襲う。欽ちゃんでも呼びたくなるような状況だ。

リューリック  はあ?

ディック  気にしたらあかん。ただのギャグや。

GM  君たちは、ルミノールを抱え燃え上がり暴れる触手を潜り抜けた。しかし、リネールは炎の中に取り残された。

ジェイル  成仏しろよ。

リネール  仕方がありません。覚悟を決めましょう・・・

GM  熱と煙で意識が朦朧とし始めたとき、君を締め付けていた触手が引きちぎられる。正確には、半ばで弾け飛ぶ。

リネール  何だ?

GM  そこには触手に拳を叩きつけている、漆黒の少女が。

リネール  メイアさん?

GM  メイアは動けない君を軽々と抱える。そこで君の意識は途切れる・・・

 

【貴様は姉上の・・・】

GM  さて、リネールを義性にして山頂に逃げ切った君たちの前には、名も知らぬはぐれ神が、燃えてもだえる風景が広がっている。

ディック  リネールはん、良い奴やったのにのう。

リューリック  死んでしまった奴は、皆良い人になる(笑)。

ジェイル  それで、この肉の塊は死ぬのか?

GM  燃えている途中にも火は浴びせられ、《爆裂火球》なんかも投げ込まれているし、徐々に小さくなっていくのは確か。攻撃の手を休めなければ、いずれは消滅するだろう。

ルミノール  犠牲は大きかったですが、一件落着ですね。

GM  リネール以外にも、火をつけたときに逃げ切れなかった者や、時間稼ぎの時に触手に潰された者もいる。正確な人数は分からんが、確かに犠牲は大きかっただろうね。

ルミノール  せめて、冥福を祈りましょう。(十字を切る)

GM  さて、次にリネールが目を覚ましたのは洞窟の中だ。火が焚かれていて、近くに漆黒の少女が立っている。

メイア  ・・・目を覚ましたか。

GM  漆黒の少女は立ち去ろうとするね。

リネール  待ってください、何故、私を助けたのです?

GM  メイアは振り向きもせず言う。

メイア  貴様は、姉上のお気に入りだからな。

リネール  ・・・・・・

この場にいない一同  ・・・・・・

リネール  いやだぁあ!あんな奴に気に入られたくねぇえ!

 

リネールの絶叫を聞きつつ、次回へ続く

*1:銀の月を崇めるヤドカリ姿の源人の子。高度な化学の利器を発明することができるが、発明するだけで量産などはできない。

*2:ルミノールとリネールは種族としての能力。ジェイルも変身すれば暗視能力が付く。

*3:どちらも武術の達人のみが使える特殊能力。<強打>は攻撃力を<八艘飛び>は跳躍距離を大きく伸ばす。

*4:武術の達人のみが使える跳び蹴り。跳躍距離に応じて威力が上がる。

*5:未確認生命体。ルナル独自の言葉ではない。