第4話【<膿の王>】
先遣部隊出発
GM さて、前回、ダンケル商会より保護した少女が、ハイルミッテル家当主の三女、ルイーネではないかと言われてから十日。ガヤン本神殿で、彼女を<看護都市>に護送する計画が着々と進められている。
カガヤ ふぅん、そんなことがあったんだ。
ルミノール それで、そのルイーネさんはどこに?
GM 彼女は護送隊本隊に連れられ、後から<看護都市>レナに来る。
ジーク その本隊と一緒に、ザインも来るわけか。
GM そう。それで、君たちには先遣隊としてレナへ行って欲しいとのこと。最低限の旅費は都市持ちで、報酬も出る。ちなみに、安全を考え信頼できる人物にしか先遣隊、護衛隊の依頼はしていないそうだ。
カガヤ 私は問題ないよ。元々この街に止まっている理由があるわけでもないし、信頼されているってのも悪い気分じゃないしね。
ルミノール 私は、リアナさんにジークさんについて行ってやってくれと頼まれましたので、ついて行きますよ。
ジーク おふくろも余計なことを。俺の場合は、交換捜査員として向こうに行くことになったからな。先遣隊には、ついでに参加と言うことになるんだろう。
アージス 俺もこの際、ジョルジュから出てみようと思う。
カガヤ じゃ、全員で行くわけね。
ジーク ところでGM。交換捜査員と言うことは、レナ側からも誰かガヤン信者が来るんだよな?
GM うん。(ランダムキャラ作成表を使い)なんでも、物凄く視力の良い知能派のガヤン信者が来るらしい(笑)。
ジーク やっぱ俺はお払い箱か。
アージス 普段、サリカ神殿に行っているのがまずいんじゃないか?
ジーク お、そうだ。サリカといえば、いつも窓の外を見ている娘に、挨拶だけはしておこう(笑)。
GM うい。窓の外を見ている少女は、顔は見たことはあるが話したこともない君の訪問に驚く。
ジーク 顔見せ程度のつもりだからな。名前も名乗らないし、聞く気もない。本当に挨拶だけして帰る。
カガヤ 何がしたかったの君は?
ジーク 顔ぐらいは覚えておいてもらおうかとね。
GM じゃあ、話を戻そう。先遣隊の役目は、行く先々による町や村で、野盗や山賊が出ないかの簡単な調査を行う。
アージス もし、山賊やら野盗やらが出るとしたら?
GM 速やかにその町のガヤン神殿や、ジェスタ神殿に、後に来る本隊の護衛を依頼する。
ルミノール 本隊に護衛はついていないのですか?
カガヤ 片道30日もかかるのに、ずっと着いて来られる護衛はそんなにいないでしょう。
GM そういうこと。本隊護衛は、交換捜査員に任命されたガヤン三人とザイン。あと、サリカの看護士が一人。
GM もう一つの任務は、<看護都市>レナのハイルミッテル家やガヤン神殿に事情を説明し、受け入れ態勢を整えてもらうこと。
カガヤ 向こうで厄介な事件でもあるなら、解決の手伝いをしろってことね(笑)。
GM そういうことその2。じゃあ、準備ができ次第出発してくれ。
ルミノール クロスボウ用の矢と、5点分のパワーストーンを買っておきます。
ジーク 上質のラージナイフを一本買っておく。
GM OK。上質程度なら、1日探せば見つかる。
アージス メインウェポンがパワーアップだな(笑)。
ジーク うるさい!
カガヤ 私は特に買うものはないな。念のため非常食を買い込んでおく。あ、お酒もたくさん買わなくちゃ(笑)。
アージス 俺は食料だけにしておこう。
GM 準備が終わった翌日。君たちは乗り合い馬車でレナに向かった。乗客の少ない乗り合い馬車は、荷物の輸送なんかも行うけど、今回は無し。馬車には君たち5人と、交換捜査員のガヤン1人の他に、小さな子ども連れの綺麗な女性がいる。
アージス 子連れ?
ルミノール 親子ですかね?
カガヤ その人に声をかける。こんにちは、私はカガヤ・ユキノハ。あなたは?
GM 女性はニッコリ笑って言う。
女性 この子も私も、あなたの好きなように呼んでください。
ジーク 怪しいな。
カガヤ 怪しすぎて疑う気にもなれないわね(笑)。じゃあ、奥さんって呼びますね。私たちは<看護都市>レナまで行くんだけど、あなたは?
女性 それは奇遇ですね。私もレナまでです。
ルミノール 警戒しておいた方がいいかもしれませんね。
一行は謎の母子と一緒に、馬車の旅をする。途中で野盗、山賊の噂も聞くことなく、<冒険者都市>カインへ辿り着く。そこで、2人のならず者風の男が、一緒に馬車に乗り込んだ。
GM ならず者2人はカガヤや謎の女性に、始終いやらしい視線を向けている。
カガヤ これ見よがしに刀の手入れをしておこう(笑)。
ジーク 狭いんだから、刃物を振り回すな(笑)。
GM すると、ならず者の視線は謎の奥さんに集中するが、奥さんは全く気にしていない様子。
カガヤ もし何かされそうになったら、私に言ってください。力になります。
奥さん (ニッコリ)ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。
GM その二日後の夜。小さな町で宿に泊まった君たちは、謎の奥さんが泊まった部屋の方から聞こえる断末魔に気付く!
カガヤ 駆けつけます!
ジーク 同じく。
GM すると、そこには喉を真一文字に切り裂かれた、ならず者2人と、その返り血を浴びた血まみれの奥さんが・・・
カガヤ な・・・何があったのですか?
GM という夢を見た。
アージス 夢オチかい!
ジーク しかも、集団悪夢。
GM その翌日の朝、ならず者2人の姿が見えない。謎の女性は、服装が変わっている。
一同 ・・・・・・
アージス 何者だ、この奥さん。
GM しかし、その謎は解けぬまま。<看護都市>レナまで後2日。街道を馬車に揺られていると、馬が嘶き、突然馬車が止まる。
ジーク (大きな声で)何があった?
御者 人が倒れとるんです!誰か来てください!
ルミノール 行きましょう。
アージス 俺も行こう。
GM 街道から少し離れたところに、確かに人・・・血まみれのエルファが倒れている。
ルミノール 大丈夫ですか?いま、回復呪文を・・・
奥さん 無駄ですよ。彼は最期の力を振り絞ってここまで来たのでしょう。
アージス いつの間に後ろに!?
GM いつの間にか(笑)。確かに、血まみれのエルファはまだ息はあるが、もう助からないだろうね。医学知識が豊富なルミノールがよく見れば分かる。
ルミノール しっかりしてください!
エルファ (空気が漏れるような声で)・・・レナにいる・・・クリー・・・クスか・・・ケインに・・・伝えて・・・くれ・・・。奴がそうだった・・・<膿の・・・王>バグ・・・シー・・・ザー・・・。
GM 血まみれエルファは事切れる。
ルミノール 分かりました。必ず伝えます。(十字を切って)エルファ式ではないので申し訳ありませんが、安らかにお眠りください。
ジーク バグシーザー? 虫獅子(笑)?
アージス 固有名詞だろ。たしか、前回ケルベロスとか言うゲルーシャがそんな名前を言っていた。
カガヤ <膿の王>は、前々回の敵の親玉だったよね。きっとそいつの名前ね。
ルミノール このエルファさんの死因は?
GM 腹部にある大きな爪痕だろう。かなり大型でパワーのある鉤爪じゃないと、こんな傷はつかないだろうね。
奥さん それに、その爪は毒を持っていますね。傷口の一部が異常に化膿しています。
アージス あんた、本当に何者だ?
GM 女性はニッコリ笑うだけで答えない。
ルミノール エルファがどちらの方向から来たかは分かりますか?
GM 血が点々と続いているから分かる。北のほうに見える森だ。歩いて一刻かからないだろう。
アージス ここからレナへは西へ2日だったな。
カガヤ せめて、エルファの形見でも持っていってあげたいんだけど?
GM 逃げる途中に捨てたか落としたか、何も持っていない。
カガヤ しょうがない遺髪をもらって、レナへ向かおう。
ルミノール せめて埋めておいてあげたいのですが。
奥さん 止めておきなさい。彼らは人の手のかかったな埋葬は好まないでしょう。放って置いて自然に帰してあげましょう。
ルミノール それもそうですね。
ジーク 一応、途中のサリカ神殿かガヤン神殿に、街道で死人が出たことを伝えておく。
我ら森の防衛隊
GM そんなことがあって2日、君たちは無事<看護都市>レナへと辿り着いた。街のどこにいても見られる、巨大なサリカ大病院が、この街の名物にして<看護都市>たる所以だ。ところで、謎の奥さんはレナに着くなり姿を消す。
カガヤ もう気にするのは止めよう。わけ分かんない。
ジーク まずはガヤン神殿に挨拶に行こう。
カガヤ 私もついて行こう。
アージス そういや、カガヤさんもガヤンだったな。俺はやる事が無いからな。近くの喫茶店にでも入って、まったりしていよう(笑)。
ルミノール 私はジェスタ神殿に挨拶だけしてきます。
GM 一緒に馬車に乗ってきたガヤン信者もついて来る。受付のウダッガー・アガラ・ナイッス氏が、西区分神殿の責任者のところへ案内してくれる。
ジーク こんな所にもいたか、ナイッス一族(笑)。
カガヤ 私は神殿に働きに来たわけじゃないけどね。挨拶だけはしておこう。
ジークとカガヤは、責任者であるガヤン神官と面会。歓迎の言葉と共に、街道で見つかったエルファの死体の事件を任される。
カガヤ ところで神官さん。この街にクリークスか、ケインというエルファはいますか?
神官 うん。2人ともフォレストガード隊の幹部だね。
ジーク フォレストガード隊?
神官 30年程前に結成された、エルファたちによる自警団みたいなものだよ。円環を嫌った若いエルファたちが何人も参加している。総勢で100人くらいかな? 街の東側に本部があるから、行ってみると良い。きっと街道の殺人事件の捜査協力もしてくれるでしょう。
カガヤ 分かりました。
ジーク ああ、それと、ジョルジュのガヤンから預かってきた手紙を渡す。
神官 市長の娘さんのことですね。ハイルミッテル家には、神殿のほうから話をしておきましょう。
カガヤ お願いします。じゃあ、2人と合流してから、早速捜査に当たろうか。
ジーク おう。
GM じゃあ、合流できた。
ジーク かくかくしかじかで、協力して欲しい。
ルミノール 私は構いません。
アージス 俺もOKだ。捜査協力すれば、多少の報酬くらいは出るだろう。
ジーク 決まりだな。じゃあ、フォレストガード隊の本部とやらに行ってみるか。
GM 街の東側は、自然林が生い茂っている。いかにもエルファがいそうって感じ。
カガヤ 話を聞くためにも、中に入ろう。
ルミノール そうですね。
フォレストガード隊本部に入った一行は、偶然出会ったジャングエルファから、ケインとクリークスの場所を聞き出す。ついでに2人の評判を聞いてみると、ケインは悪い奴ではないが変わり者。クリークスは十数年前友人を失い、退廃的な雰囲気の女性であるとのこと。
ルミノール クリークスって、どこかで聞いたことがあると思えば、リネールさんの「敵」だった人ですね。
ジーク 知り合いか?
ルミノール 直接会ったことはありませんがね。
ジーク んじゃ、まずはケインって奴に会いに行くか。変わり者って言う話だが、どんな風に変わってんのかね。
アージス 年中黒いマントを着けているに違いない(笑)。
GM そのネタはよく分からんが、ジャングエルファに聞いたとおりの場所に、一人の青年エルファがいる。木の枝の上で寝てるね。
カガヤ (大きな声で)こんにちは~。私たち~、あなたに話があって来ました~。降りてきてください~。
GM 返事は無い。その代わり、後ろの木陰から人影が飛び出し、手に持った剣でカガヤに切りかかる!
カガヤ 刀を抜いて「受け」る!
GM こっちも本気で切りかかってきたわけじゃないんで、簡単に受けられる。切りかかってきた人物は、エルファにしちゃずいぶんと筋肉質で、頬に十字の傷があるプファイトエルファの青年だ。話に聞いたケイン・フォレストガードだろう。
ケイン なかなかやるじゃんか。これをやろう。
GM ケインはバッチみたいなものをカガヤに渡す。なんかよく分からんマークが書いてある。
カガヤ これは?
ケイン 友情の印だ。一部の奴らは「お友達マーク」なんて呼びやがる。
ジーク なるほど。確かに変な奴だ(苦笑)。
ケイン それで、俺に何の用だ?
ルミノール 実は、街道で亡くなられたエルファから、あなたに遺言がありまして。
ケイン ほう。
ルミノール 「奴がそうだった<膿の王>バグシーザー」と。あと、これは彼の遺髪です。
ケイン わざわざすまないな。礼と言っちゃなんだが、これをやろう。
GM お友達マークを渡される。
ルミノール もらっておきましょう(笑)。
ジーク それで、その言葉はどういう意味なんだ?
ケイン なんだ若造。俺にタメ口聞きやがって。
ジーク なんだ、やろうってのか?(剣に手をかける)
ケイン はっ! テメェの自慢の剣を《爆砕》されたくなかったら止めておきな。
ジーク チッ! こいつも魔法使いかよ。
カガヤ 2人とも落ち着け。私たちは、殺されたエルファの事件の捜査をしているのです。何か知っているのでしたら、教えて欲しいのですが。
ケイン 教える分にゃ問題はねぇ。ただ、若造にタメ口たたかれるのが嫌なだけだ。
ジーク 安心しろ。テメーとはもう口をきかねぇ。
GM ケインが何かを引っ張ると、樹上からたらいが落ちてきて、ジークの頭に命中する。
ケイン ククク・・・。
ジーク テメェ・・・いつか殺す。
アージス 2人とも大人気ない奴だな。俺もしばらくは黙っておくが(笑)。
ルミノール ジークさんは私がなだめておきますので、カガヤさんは話を聞いておいてください。
カガヤ 分かった。ではケインさん。事件についてあなたの知っていることを教えて欲しいのですが。
ケイン ああ。死んだあいつらは3人チームである事件の調査をしていたんだ。その事件は、4年前と、半年前に起こった行方不明事件のことだ。あいつらは、少なくとも半年前の事件の裏にゲルーシャどもが関わっていることを知ってな、怪しいエルファたちのことを調べていたんだ。
アージス 怪しいエルファ?
ケイン ああ。4人組で、リーダーはジャング氏族のじいさんで、名前はレオ。それに女エルファ・ウィザードのドッグ。他の2人はプファイトとカアンルーバの氏族らしいが、名前は分からん。
カガヤ その4人が怪しいという理由は?
ジーク (ボソッと)どうせ直感とか言うオチだろ。
ケイン 理由はいくつかある。事件前後に、マチスの森に現れた余所者であること、森に来たのはいいが、何をするわけでもなく居着いているだけのこと、旅人風の怪しい二人組みの人間が、よく会いに来ていることの三つだ。
ルミノール なるほど。疑うには十分すぎるほどですね。
ジーク 全部状況証拠だがな。
ケイン それで、今回殺されたあいつは、友人2人とその4人組を監視していた。その結果が・・・。
ジーク 死んじまったってか。なさけねぇ。
GM そこまで言うなら、君の顔面に、プファイトの実が飛んでくるよ。
ジーク 失敗。ダメージは無いが転倒した。
カガヤ ルミノールさん。そいつ動かないようにしておいて。
ルミノール 分かりました。
カガヤ それで、その4人組を監視していた人の遺言が、「奴がそうだった」ですか。
ケイン ああ。証拠は無いが、死んだ仲間の最後の言葉だ。森の連中を動かすには十分だろう。
カガヤ フォレストガード隊は動かないのですか?
ケイン うちらは円環を捨てて、人間と共存していこうと言うエルファの集団だからな。森の連中はちっとばかし仲が悪いんだよ。分かるだろ?
カガヤ なんとなく。
ケイン じゃ、何か聞きたいことがあればまた来てくれ。俺はしばらく昼寝する。
GM と言って、枝の上に置いてあった自分の人形を引き摺り下ろし、自分は寝息を立て始める。
カガヤ 確かに、かなり変わったエルファね(笑)。
ジーク ただの変人じゃねえか。
ルミノール それで、これからどうします? 私は、クリークスさんからも話が聞きたいのですが。
アージス 俺は例の4人組に会ってみたい。
カガヤ 私もマチスの森にいる4人組が気になる。
ジーク 俺はもうどうでもいい。情報収集は任せた。
ルミノール では、多数決でマチスの森に行きましょう。
何でこんなところにいやがる!
一行は、<看護都市>レナから、北東に二刻(3時間)ほど歩いた場所にある、マチスの森へと向かった。森に辿り着いた一行は、そこに住むエルファたちに、話に聞いた4人組と会わせてくれと頼むが、円環を重要とする彼らは、森の外から来た一行を毛嫌いし、話を聞こうともしてくれない。「この森から出て行け」の一点張りである。
ルミノール リネールさんの専売特許を真似するとは、許せませんね(笑)。
GM 特許とってるのかよ(笑)。
カガヤ でも、エルファさん。その4人組も森の外から来た連中だよね?
エルファ 確かにそうだが、我々には同族への義務感がある。エルファでもないお前達とは違う。
カガヤ でも彼らは氏族の役割も果たさず、ただ森にいるだけって話でしょ。それがあなたたちの言う円環?
エルファ むぅ・・・
一行(というかもっぱらカガヤ)は、4人組も円環から外れた存在じゃないかと主張しつづけ、なんとかエルファたちを折らせることに成功。話をするだけという条件で、4人組のもとへ案内される。
カガヤ 元々話を聞きにきただけよ。
GM 森の中の開けた場所に、4人組のエルファがいる。一人は倒れた木に腰掛け、目深にローブを被った老エルファ。その隣にエルファウィザードと思しき女。後の2人は、全身に包帯を巻いた奴と、ずいぶんと筋肉質なエルファ。そのうちの一人は、アージスとジークは見たことがある。
アージス 俺とジークだけが知っているエルファ・・・地下であった女ゲルーシャか?
GM 君たちを見ると、女エルファがニヤリと笑う。
女エルファ こいつらですよレオ。不思議四天王を倒すために仲間一人を平気で見捨てた奴らは。
レオ ほう。
ジーク あんな奴は仲間じゃねぇよ。
一同(ジーク除く) おいおい!
GM その言葉を聞くと、レオと言われた老エルファは笑い出す。
レオ ハハハハハ! 面白いぞ貴様。どうだ、わしらの元に来ないか? 貴様のような奴は暗黒面に落ちた方が力を発揮するものだ。
ジーク (グレートソードブレイカーを抜いて)あいつを殺してくれたことは感謝するが、それは断る。
GM 君たちを見張っていた3人のエルファの内2人は、4人組と君たちの会話に困惑気味。しかし、次の瞬間、その困惑は驚愕に変わる。4人組のエルファの瞳が、漆黒に染まっているのだ! しかも、見張り3人のうち一人の瞳も漆黒に変わり、見張りに襲い掛かって一人を切り倒している。
カガヤ (刀を抜きながら)まさか、そっちから正体を現すとはね。
女エルファ→ケルベロス 私とレオはしばらく手を出さん。見事<鉄の爪>と<無口>を倒してみよ。
GM レオの左右の、エルファの姿をしていた者は変異を始める。筋肉質だった奴は両手から鉤爪が生え、包帯巻いていた奴は、全身の包帯が全身についた口に食い破られる。無数の口には、鋭い牙が生えている。さらに、森のそこいら中から、争うような音が聞こえてくる。
ルミノール 多くのゲルーシャが、森に紛れ込んでいたみたいですね。
アージス 援軍は期待するなってことだな。
GM 戦闘前に、全身口だらけのゲルーシャの口が、とても文章では書けないような奇怪な笑い声を上げる。全員+2で恐怖判定を行ってくれ。
恐怖判定に成功した一行は、ゲルーシャ2人との戦闘を開始する。ジークとカガヤは鉤爪を持ち、能動防御が高そうな<鉄の爪>を2人がかりで、ルミノールは相手が剣しか持っていないことから、フレイル型の武器には弱いだろうと踏み、全身が口の<無口>に挑む。
この戦いは意外とあっさり決着がついた。軽い連続切りを放つことで、相手の「受け」を使わせるカガヤの<血車>を回避しきった<鉄の爪>は、次なるジークの攻撃を受けきれず、意識が朦朧としたまま波状攻撃を喰らい撃沈。<無口>は魔法で作った<闇>の中にルミノールを捕らえることに成功し、毒付きの鋭い牙で傷を負わせるも、運の助けもあり闇の中にもかかわらず的確なルミノールの攻撃の前に撃沈する。
ジーク で、あんたらはこいつらより強いんだな?
レオ ククククク・・・ハーッハッハッハッハッハ! いいぞいいぞ、そうでなくては面白くない。貴様らのような奴らを力ずくでねじ伏せ、暗黒面に落すことほど楽しいことは無いぞ。
カガヤ 余裕を持っていられるのも、今の内よ。
レオ その言葉、そっくりそのまま返してやろう。どれ、見せてやるとするか。<膿の王>バグシーザー様の本当の姿をな!
ルミノール え?
アージス 何!?
ジーク まさか・・・
カガヤ こいつがバグシーザー!?
驚愕する一行の前で、バグシーザーは変身を開始する。頭上から一行を見下ろす顔には、三つの漆黒の瞳、口には、剥き出しの鋭い牙、鉄の板をも刺し貫きそうな巨大な二本角。毒でも持っているのだろうか、怪しく輝く鋭い爪を持った4本の腕と巨大な足。膝からは鋭い棘が突き出している。体重を支えるための尻尾も、攻撃に使えば巨木をもなぎ倒すだろう。さらに、腹部にも一対の漆黒の瞳と牙の生えた巨大な口。毒々しい濁った茶色い肌からは、膿のようなものが滴り落ちている。
GM これこそが<膿の王>バグシーザーの真の姿だ。
カガヤ ば・・・化物・・・。
ジーク 何で敵の総大将がこんなところにいやがる!
レオ→バグシーザー フハハハハ! ラスボスはダンジョンの最深部にでもいろと言うことか? わしら<悪魔>の使者は人の期待を裏切るのも大好きでな。
ケルベロス バグシーザー様。私は森に散らばっている配下どもを指揮してまいります。
バグシーザー うむ、行ってこい。わしはこいつらと遊んでいることにしよう。
GM 頭部と腹部の口が、同時に呪文を唱え始める。しかも、その状態から他の行動もできる。
アージス さすが大ボス。
GM バグシーザーはさっきまで自分が座っていた倒れ木を掴んで、ジークに投げつける。(ころころ)外れ。
ジーク なんつー無茶な攻撃を・・・
カガヤ やらなきゃ、やられる!
一行はバグシーザーの醜悪な外見に臆することなく、戦闘体制に入った。ジークとカガヤは、バグシーザーに接敵。化物の動きを止めるため、足に向かって武器を振るうが、巨木のように丈夫で太い足はびくともしない。ルミノールは、この肝心なときに過去のトラウマのフラッシュバックが発生し、後方支援に移る。先の戦いで、体力を温存していたアージスは、ジークに《盾》をかけるため集中。
そして次のターン。カガヤとジークはもう一度化物を切りつける。巨大なバグシーザーに攻撃を当てることは簡単だが、ダメージはかすり傷ほどしか与えられない。バグシーザーの上二本の腕には、《電光》と《爆裂火球》が出現する。上下の口はさらに呪文の集中。続いて化物の巨大な掌が、足元をうろついているカガヤを叩き潰そうとする!
GM サイズ修正*1でそっちの能動防御は-2。さらに、高い位置からの攻撃なんで-2。
ジーク 合計で-4。洒落にならんペナルティだぜ。
カガヤ (ころころ)ダメだ当たった。
GM ダメージは15点の「叩き」。肋骨が砕けたかもね。しかも、バグシーザーは攻撃した掌を上げようとしない。
バグシーザー このまま押し潰してやろう。
カガヤ なんて非常識な戦法を!
ジークに《盾》をかけたアージスとルミノールは、カガヤに向けて回復呪文の集中。
第3ターン。なんとか刀を持った右手だけは掌から脱したカガヤは、バグシーザーの腕を刺し貫こうとするが、特別力が強いわけでもないカガヤが片手で放つ攻撃ではこの規格外の化物には通じない。
ジークはカガヤの救出に向かおうとするがバグシーザーの左下の手に邪魔され、カガヤの捕らえられた右手側に近づけない。しかも、バグシーザーの放った《電光》を喰らいダメージを受ける。バグシーザーは右下手の掌に力を込め、カガヤを押し潰す。能動防御不可で、プレートアーマー以外の防具の防護点を無視する攻撃だ。カガヤの折れた肋骨が内蔵に突き刺さり、胃液が血と混じり、胃から逆流する。
カガヤ やばい・・・死ぬ・・・。
アージス 大丈夫だ。俺とルミノールの《大治癒》は成功。もう一度《大治癒》に集中する。
ジーク 生殺しじゃねえか。
第4ターン。カガヤはバグシーザーの腕から脱出を試みる。力のありすぎるバグシーザーには、判定の目標値が最高16になる「16のルール」を採用するも、それでも力の差がありすぎ脱出は失敗。ジークは殺られる前に殺れとばかりに攻撃。普通の人間ならば一撃で命を落す可能性もある大きなダメージを与えるが、あいにく相手は「普通」でも「人間」でもない。
バグシーザー おのれちょろちょろと・・・鬱陶しいわ!
GM バグシーザーの口から突風が吹き荒れる。ジークは2メルー吹っ飛んでくれ。
ルミノール 激風のブレス?
GM 実際はただの《空気変化》*3の呪文だが、詠唱だけで呪文を唱えているからブレスに見える。さらにバグシーザーは吹っ飛んだ君の方に向かって行く。
カガヤ 私は解放されたの?
GM うん。で、バグシーザーは転んだジークに足の鉤爪で切りつける。高低差は無いから、能動防御のペナルティはサイズ修正の-2と、転んでいることの-4だけ。
ジーク 合計-6で「だけ」とか言うな! グレートソードブレイカーで受けられそうか?
GM さあ、試してみれば?(折れるかもしれないけどね)
GM ダメージは(ころころ)イマイチ13点の「切り」。さらに、生命力での抵抗に失敗すると、身体が麻痺しダメージを受ける。
アージス そのダメージで「イマイチ」かよ。
ジーク 生命力判定には成功。プレートアーマー着ているってのに、一撃で気絶判定だ。化物め。
カガヤ 何をいまさら(苦笑)。
さらに、バグシーザーの放った《爆裂火球》がアージスに放たれる。《大治癒》の集中を中断し《瞬間回避》で回避を試みるが、文字通り爆発を起こす火球の衝撃波までは避けることができず、ダメージを負う。ルミノールはフラッシュバックと対象の距離、同じ対象に同じ人物が回復呪文をかけた場合に起こるペナルティにより、《大治癒》の目標値はかなり低くなっていたのだが、成功。カガヤのダメージは完全に癒える。そして、回復呪文の対象をジークに変える。
ルミノール もうこれ以上カガヤさんに《大治癒》はかけられません。無茶はしないように。
カガヤ 無茶しないで、どうやって戦えばいいのよこんな奴。
第5ターン。復活と同時にバグシーザーに後ろから切りかかるカガヤ。彼女にとっては最大に近いダメージを出すが、バグシーザーの巨体はそんな攻撃ではびくともしない。ジークは気合で膝立ちになる。バグシーザーは何らかの呪文の集中を始めつつ、後方にいるカガヤを巨木のような尻尾で横殴りに攻撃。カガヤは何とかそれを刀で「受け」るも、衝撃に耐え切れず吹っ飛び転倒。ジークに突き出された鉤爪は、わずかに狙いがそれる。フラッシュバック現象が収まったルミノールは、バグシーザーに接近。アージスはジークに《大治癒》を飛ばし、完全ではないが傷を癒す。
そして第6ターン。吹っ飛んだカガヤは膝をつき、ジークは立ち上がりつつ攻撃。バグシーザーはその攻撃を、指先一本で「受け」流す。そしてバグシーザーの攻撃。
バグシーザー ふん。そろそろ回復呪文が鬱陶しくなってきたな。
GM バグシーザーの、上下の口の中に、炎が見え隠れする。
カガヤ まさか、上下同時に《火吹き》*4?
アージス やばい! 俺、射程内に入ってる?
バグシーザー 死ねい!
アージスを襲う灼熱の炎。一撃目は《瞬間回避》でなんとかかわすも、時間差で放たれた二撃目の炎はまともに浴びてしまう。魔術師としてはタフなアージスだが、しょせんは人並みの生命力。硬い鎧も着ておらず、全身大火傷の重傷を負う。地面を転げまわり、何とか服についた火は消したが、気を失う。さらにバグシーザーは、巨大な腕でジークを掴もうとするが、ジークはそれを回避。ルミノールはバグシーザーに接近し攻撃するが、ダメージが通らない。
第7ターン。カガヤは尻尾攻撃の射程内に入らないように移動しながら、バグシーザーの正面へ回り込む。ジークは相手の隙を誘うために防御に専念。バグシーザーは呪文の集中をしつつ、鉤爪でジークとルミノールに切りかかる。2人はその攻撃を後退しながら回避。ルミノールは後ろに下がったのを良いことに、アージスの治療のため一旦後退。
第8ターン。ジークとカガヤはバグシーザーを攻撃し、傷を負わせる。バグシーザーは鉤爪で2人に反撃。カガヤは回避するも、ジークはまともにダメージを受け、死亡判定に追い込まれる。
ジーク (ころころ)大丈夫、生きてる!
カガヤ ちょっと危ないけど、ひょっとしたら行ける?
GM その言葉にバグシーザーはニヤリと笑う。
バグシーザー 残念だが、この<膿の王>バグシーザーにはこの程度の傷どうということは無いのだよ。
GM 上下の口が呪文の詠唱を終えると、バグシーザーの傷が完全にではないが塞がっていく。さらに上の口は同じ呪文の詠唱に入る。下の口はまた別の呪文を集中し始める。
ジーク 強すぎる!
ルミノール いくら呪文が有限でも、分が悪すぎます。
カガヤ これは、逃げたほうがよさそうね。
バグシーザー おっと、そう簡単に逃げられると思うなよ。
カガヤ なんとか逃げるチャンスを探さないと・・・。
ジーク 転んでくれるのを祈るしかないか。
第9ターン。ジークとカガヤの攻撃は、バグシーザーの指に「受け」られる。バグシーザーは自分の傷を癒し、さらに《脱水》でルミノールにダメージを与える。上下の口は再び呪文の詠唱に入り、腕は手近にあった大岩をジークに投げつけ命中。ジークを二度目の死亡判定に追い込む。
ジーク (ころころ)まだだ、まだ死なん!
ルミノールはジークに回復呪文を飛ばそうとするが、距離がありすぎるため断念。アージスを対象に《大治癒》を集中。
そして、10ターンが過ぎた。
GM (そろそろだな。)
バグシーザー そろそろ遊ぶのにも飽きてきたな。全力でいかせてもらおうか!
GM その言葉と共に、バグシーザーの全身が真っ赤に染まる。
ルミノール まさか3倍!?
ジーク 冗談じゃねぇぞ!
GM しかし次の瞬間、八方からプファイトの実や、ファストボウの矢が雨あられと飛来し、バグシーザーを攻撃する!
カガヤ エルファの援軍!
GM うん。ファストボウはほとんど効いてないけど、プファイトの実はそこそこ有効。しかし、バグシーザーが呪文を唱えると、エルファたちの第2射はバグシーザーにかすりもしなくなる。
気絶中アージス 《矢よけ》か。
GM そんな化物に向かって、一人のエルファが疾風の如く切りかかる! あの筋肉質な体型は見たことがあるね。
カガヤ ケインさん!
ケイン おめえたちは逃げろ! 逃げて街に伝えろ! こいつは規格が違いすぎる!
ジーク 言われなくてもそのつもりだ。
ルミノール アージスさんに《覚醒》をかけて起こします。そして逃げる。
アージス 目を覚ましたなら、後ろを向いて全力前進だ。
GM 他にも何人かのエルファがケインの援護に向かうが、本気を出して小細工を使わなくなった化物が相手では勝負にならない。後ろからバグシーザーの声がする。
バグシーザー ほほう。なかなか歯ごたえのありそうなエルファだな。特別にわしの腹に入ることを許そう。
GM そして、ケインの断末魔の叫び声と、肉と骨を噛み砕くような嫌な音が聞こえる。
アージス 歯ごたえがありそうって、そういう意味か!
ジーク 悔しいが、今の俺たちでは何もできん。逃げるしかない。
エルファたちの援護もあって、一行はボロボロになりながらも、<看護都市>レナへと向かう街道へ逃げ、そこでたまたま通りかかった行商人の馬車に乗せてもらい、無事<看護都市>に到着した。
カガヤ ガヤンと、フォレストガード隊に報告しよう。マチスの森にバグシーザーがいたって。あと、ケインさんが死んだってことも・・・。
ルミノール 森の方角の警戒態勢を強化してもらいましょう。
GM もともと、この街の防衛隊は、ある理由により北側に力を入れているので、森への警戒態勢は素早く取られる。何日か後、仲間の探索に森へ向かったフォレストガード隊のメンバーが帰ってくる。ケインも含め森へ向かったフォレストガード隊は全滅したそうだ。
ジーク 嫌な奴だったが、死んじまったら良い奴だったように思えてくるな(自嘲)。
GM それに、バグシーザーやケルベロスを始め、ゲルーシャたちの姿はどこにも見当たらず、森のエルファたちも困惑していたとのこと。
カガヤ 当面の危険は無くなったようね。
アージス どうかな。消えたってことは、また現れるかもしれないってことでもあるぜ。
ルミノール エルファに化けて森に潜んでいたほどですからね。変装して潜入するのはお手の物でしょう。
ジーク 正直、もう戦いたくはないが・・・。
GM その前に君ら全員入院しとけ。特にカガヤとジークの傷はひどいもんだ。
カガヤ 退院する頃には、ザイン君もこの町に来ているだろうね。今後の計画は、彼も交えて話し合おうか。
ルミノール そうですね。今はゆっくり休みましょう。