第1話【冒険者集う】
【『黄金の羊亭』】
GM はい、では、ガープルナルの新しいキャンペーンを始めるよ。
一同 おー!
GM 舞台はリアド大陸の最西端。紫の群島の西側にあるオリジナル設定の島国、アンリ連邦共和国が舞台だ。
プレイヤーF ふむ。どのような国なのか説明していただきたい。
GM <傭兵都市>オグマや<歓楽都市>ミディアと言った十数からなる都市国家群が集まった国で…
プレイヤーG 待ったGM。その街の名前は何ですか?
GM 何ですかって、多分君が思っていることそのままだけどな(笑)*1 で、<王都>マルスには都市国家群を束ねる大王がいるんだけど、権力は大して強くない。
プレイヤーB 会議で決まったことを、「よきに計らえ」と言って通したりする人か(笑)
GM まあ、そんな感じ(笑) それで君たちは<交易の門>アストリアと、王都を守っている<城壁都市>ドーガの間にある、<中継都市>ジョルジュというところで、専業かどうかはともかく冒険者をしている。じゃあこれからロールを始めてくれ。
一同 はーい
GM <中継都市>ジョルジュは、川沿いに行商人や旅人用の宿屋が出来た所から発展した街だ。定住している人は少ないが、旅人の出入りが激しい。その街の宿場にある『黄金の羊亭』という、宿屋兼酒場に君たちはいる。
サクラ 私たちは、まだ知り合ってないのですか?
GM うん。定住していないなら、『黄金の羊亭』に入ったこと自体が初めてかもしれない。
ディック ワイは、この街のミュルーンギルドに就職しとるちゅうことで。
ダンテス 私はシャストア神殿に勤めていましょう。ここにはよく食事をとりにくるということで。
ジェイル じゃあ、俺は初めてさんだな。
サクラ 私も~。
GM んじゃ、ディックとダンテス先生は顔見知りだな。ディックは金払いがいいから酒場じゃ人気者に違いない。ダンテス先生も「超」がつくほどの美形だから、別の意味で人気だろう。
ダンテス フッ・・・女の子の視線が熱いぜ(笑)
GM そして今日は、いつもは見かけない人が二人ほどいる。
ダンテス お嬢さん。私と一緒にランチはいかがですか?
ディック 早ッ(笑)!
サクラ ほえ~? 私男装しているのに、なんで女の子だって分かったのですか~?
ディック 自分で変装ってばらしとるやん(笑)
GM そうやって三人知り合うわけね。ジェイルは何してる?
ジェイル カウンターでちびちび飲んでます。
GM 昼間から?
ジェイル 昼間から。
GM あ、そう。じゃあ、ミスターホーク、登場してちょうだい。
ホーク じゃあ酒場に入りますが、強そうな奴らいますかね?
GM 鳥に優男、一見フニフニ少年にヤクザ・・・
ホーク ダメダメだねチミ(笑)
ジェイル ヤクザって俺のことか?(笑)
GM テーブルで和気藹々としている三人のうち、二人は槍と刀で武装しているから、それが伊達じゃなければ強いと思えるね。
ホーク では、その三人に声をかけます。あなた達、一仕事やる気はありませんか?
サクラ 何の仕事ですか?
ホーク オーク退治です。もちろん報酬は出ますよ。
ディック ずいぶん基本やな。
GM 実は5年以上TRPGのGMやってて、一度も使ったことないんだよね。このシュチュエーション(笑)
ディック それは意外やな。それはともかく、具体的な仕事の内容と、報酬について聞こか。
ホーク 実は私の村の近くにオークやゴブリン*2が住みついてな。家畜や畑が荒らされている。幸いまだ人に被害はないけど、いつ人が襲われるか分からないから退治したいのだが、いかんせん村人だけじゃ戦力不足なんだ。報酬は1000ムーナ*3用意してある。村までの旅費は最低限はこちらで持つ。
ジェイル 家畜や畑…田舎者か。
ダンテス 数は?
ホーク オークは10匹はいるが、20はいない。ゴブリンは3匹確認している。他の種族は不明だ。
ディック この世界のゴブリンは知力が高こーて厄介やでな。できれば魔術士が欲しいのう(意味ありげにジェイルのプレイヤーを見る)
ジェイル (気付いていない)
ディック GM。そこのサングラスの旦那が魔術師(やって気付いてもええか?
GM まあ注意深く見れば分かるだろう。
ディック そこのあんさん。今の話聞いとったやろ? 乗ってみる気あらへんか?
ジェイル フンッ・・・オーク如きでは俺の相手にもならんが、面白そうだな。手伝ってやるか。
サクラ 私も手伝います。路銀がないですから(笑)
ダンテス お嬢さんが行くのでしたら私も。
ディック 決まりやな。このメンバーで行こか。村まではどれくらい時間がかかる? あ、あと村の名前は?
GM 村までは馬車で一日。村の名前はミシェラン村。馬車の用意はしてある。
ディック やったら出発は明日の朝やな。夜には村に着くやろうで、翌日からゴブリン退治や。
ホーク ではGMそういう日程で。
GM 了解。じゃあ何事もなく予定通り翌日夜には村に着く。森に囲まれた小さな村だ。
サクラ さすが森共和国ですね~。緑がいっぱい。
ダンテス お嬢さん、この国はトリースではなくアンリですよ?
サクラ えぇ~!? 私はお兄様を探してトリース森共和国*4に行く予定だったのですよ~? 早く探しに行かないと~(ふらふらと立ち去ろうとする)
ディック ちょお待ち。兄ちゃんを探しに行くんはゴブリン退治が終わってからにしてくれんか?
サクラ そうですね~。仕事を引き受けた以上は、最後までやり通すべきだとお父様も言っておりました。
ホーク よかった。ここに来て主力が一人減るかと思った。
GM で、これからどうする?
ディック 今は夜なんやんな? 今のうちに村人から聞けることは聞いといて、出発は明日の朝やな。
村人から、ゴブリンどもは山の方からやってくるという情報を入手した一行は、翌朝から山狩りを行うことにする。
【山狩り開始】
GM 朝になって山についたよ。
ホーク 早ッ!
ディック ところで、山の木は乾燥しとるか?
GM ? 乾燥してるけど?
ディック じゃあ火を放って燻り出すことも…
ホーク それはやめてください。山が燃えると、村が存亡の危機に陥ります。
ディック 冗談やて。ほな、ワイが上空から偵察でもしてみるわ。
GM じゃあ視覚チェック*5をどうぞ。
GM じゃあ、山の中腹あたりに人工物らしきものを発見した。
ディック ほな、そっちの方向を覚えとくで。「方向感覚」あるからバッチリや。
ダンテス ほう、見事な偵察係だな。
GM では、ディックの案内で怪しい場所に来てみると、下手くそな偽装がされている洞窟を見つける。結構深そうだ。
ダンテス 周りに足跡はありませんか?
GM あるね。明らかに二足歩行だけど、人間のものとは違うものが。
ディック ワイのやないで(笑)
ダンテス 中に何がいるか分からんからな。少し驚かせてみるか。
サクラ どうやってですか~?
ダンテス (少し考えて)上半身裸の大男が両手に持ったシミターを振り回し、高笑いしながら走る《幻覚》を作ろう。それを洞窟の中に入れる。
一同 (笑)
ジェイル 面白そうだな。やってみろ。
ホーク 上手くいけば、敵を誘い出すことができるが…
ダンテス (コロコロ)呪文の発動は成功だ。
幻覚の男 うわ~ははははは~!!(ドップラー効果)
GM ふむ。幻覚が入っていってしばらくすると、奥のほうから声がするね。誰か<悪魔>語を理解できる人は?
ジェイル 俺だ。
ディック 解るんかい!
ジェイル だが人には言わんぞ。邪術師*8扱いされると嫌だからな。
GM じゃあ、ジェイルにだけは解る。
声1 そんな怪しい奴がいるわけがないだろう。貴様等、また眠っていたのじゃないだろうな。
声2 でもたしかにいたんでオーク。上半身裸の大男が両手に持ったシミターを振り回し、高笑いしながら走っている男でしたでオーク。
一同 (笑)
GM ジェイル以外は何を言っているかは解らんが、誘き出されたのは理解できるわな(笑)
ディック ほな、でてきたところを捕まえて情報聞き出すで。
偵察にきたゴブリン一匹とオーク二匹を難なく捕まえることに成功した一行は、ゴブリンを尋問して話を聞く。洞窟の奥は小さな遺跡につながっており、そこには後8匹のオーク、2匹のゴブリン、一匹のホブゴブリン、ゲルーシャ*9が一人いるという。
一行はダンテス先生に《持続光》*10をかけてもらい、サクラとディックが先頭、ダンテスとジェイルを間にはさみ、ホークがしんがりという隊列で洞窟の奥に。途中、浅い地底湖を渡るさいジェイルが転んで水浸しになり、いつも高慢そうな態度をとる彼が口先だけの男とわかり同情の目が集まったり。
サクラ ほら、私のタオル貸してあげるから。
ジェイル いらん!
遺跡の入口前の小部屋で眠っていた三匹のオークを串刺しにしたり、遺跡入口の松明が永続の《持続光》がかかった棒であると解り、「強欲」なディックが飛びついたりしながら、一行は遺跡の中に入る。
【鉄と虎】
GM 古い遺跡だが<悪魔>戦争*11時代まで遡ることはない。歴史と建築の知識があれば、いつの時代のものかは推測ができるが・・・
ジェイル 歴史の知識はあるが、建築はないな。(ころころ)しかも失敗してる(笑)
足音を忍ばせながら探索を続ける一行。途中二手に分かれていた道を右に曲がったところで宝物庫を発見するも、ものけの空。侵入に気付いたゴブリン1匹とオーク4匹が、後ろから不意打ちをかけようとするが、ジェイルとディックに気付かれあえなく敗北。ばっちり止めまでさされる。
GM さて、宝物庫を出てさらに進むと一際立派な扉がある。奥から声が聞こえるね。<悪魔>語が解るジェイル以外は理解できんが。
ジェイル そうだ、古代神聖語*12で喋っていると言って、通訳すればいいじゃないか。
GM うい。では通訳開始。
声1 侵入者が来たらしいな。
声2 案ずることはない。右の道には見張りどもがいるし、左の部屋にはゴーレムもいる。簡単にここまで来られはせん。来たところで我等にはかなうまいよ。ガッハッハ!
サクラ この奥にボスがいるみたいだね。ゴーレムは私たちが来た道とは逆の道にいたみたいだけど。
ホーク 材質はわからないけど、呼ばれたりすると厄介だな。
ダンテス それに関しては作戦がある。いつで突入できる準備をしておいてくれ。
各々武器の準備を宣言し、突入体制をとる。そして・・・
ダンテス 大変だー! ゴーレムが破壊されたー! と群島語*13で(笑)
ジェイル なるほど。これで雑魚どもが騙されれば、ゴーレムを呼ばれなくていいわけか。(他のキャラクター達に)よし行け、しもべどもよ!
GM 「しもべ」なんて言われてるけど、皆良いの?
サクラ ジェイルさんって、友達作れないかわいそうな人なんですよ。
一同 (ジェイル含む)(笑)
GM では、中から「何ィ!」と驚いた声がする。なまじ群島語が理解できたのが災いした。
ホーク よし。じゃあ、突入しましょう。
サクラ 扉を開けます。バーン!
扉の奥にいた者たちは、ゴブリン・ソーサラー*14一匹に虎の頭のホブゴブリン一匹。それにゲルーシャが一人にゴブリンが二匹。
奇襲されたにもかかわらず、「戦闘即応」を持っていたり、知力が高かったりするゴブリンたちは即座に戦闘体勢に入る。
GM 虎の頭を持ち、チェインメイルとミディアムシールド、ブロードソードで武装したホブゴブリンは名乗る。
ホブゴブリン 俺様の名はタイガ! 今宵、我が血の渇きを癒してくれる者はどいつだ!
ディック こいつの鎧はチェインメイル? やったらワイが相手したる。スピアはチェインに対して強いからな。
GM 肌の色が異様に黒いゲルーシャの全身を、漆黒の装甲のようなものが覆う。そしてグレートソードを振りかざして叫ぶ。
ゲルーシャ 俺は<鉄の魔人>の異名を持つガーゼット! 貴様ら如き、俺の装甲には傷一つつけられんことを思い知らしてやる。
ディック 「くろがねのまじんがーぜっと」…ね(笑)
サクラ あんな奴、私の刀でやっつけてやる!
ホーク じゃあ私は、ゴブリンの足止めでもしましょう。
この戦いで真っ先に倒れたのが、リーダー格のゴブリン・ソーサラー。《爆裂火球》の準備を開始したところ、集中、疲労なしになる25レベルに極めた*15ジェイルの《凍傷》の前に一撃で気絶する。
<鉄の魔人>ガーゼットと切り結んでいるサクラは、ガーゼットの、装甲にすべてを賭けた全力攻撃*16の嵐の前にやや押され気味。自慢するだけのことはあり、ガーゼットの装甲はとてつもなく硬く、サクラの攻撃はろくにダメージが通らないのである。
圧倒的に不利なのがディックVSタイガ。チェインは槍に弱いと踏んで戦いに挑んだディックだが、タイガ自身の皮膚に阻まれ、威力の低いディックの攻撃ではかすり傷すら与えられない。早々にゴブリンを退治しディックの援護に回ったホークも、使用武器がハチェット*17では威力が心もとない。さらにタイガ、ガーゼット共に魔法抵抗値が高く、ジェイルの《凍傷》も抵抗されてしまう。
ちなみにダンテス先生は、サクラに《ぼやけ》をかけた後は特にできることもなく、ガーゼットに流し目を送っていたりした(笑)
ガーゼット 気色の悪いやつめ!
「どうせエネルギー消費しないから」とまぐれ当たり狙いで《凍傷》を連発していたジェイルだが、タイガの攻撃の前にディックとホークが気絶させられては、そんな悠長なことは言っていられない。サクラにフルパワーで《怪力》をかけ、彼女の攻撃力を上昇させる。
そんなことは露知らず全力攻撃を仕掛けるガーゼット。その隙に、天落轟破流奥義<降竜>がガーゼットの脳天に炸裂!
ガーゼット 我が装甲は無敵なり!
サクラ 我が一撃は無敵なり!
気絶中のディック おお、矛盾の戦い(笑)
サクラ てい! やった、ダメージは15点の「切り」です!
GM げ!? 一撃で死亡判定だわ。*18生命力はそれほど高くない…死んだ。
サクラ よし!
タイガ ほう、あのガーゼットを倒したか。次は俺の相手になってもらおうか!
一刀両断にされたガーゼットを見て、意気揚揚と強敵サクラに挑むタイガ。お互い武器の技能が高く、ガーゼットと違い堅実な攻めを行うタイガ。数ターンの間膠着状態が続く。
その膠着を破ったのは、魔法で癒され立ち上がったディックの、文字通り横槍。タイガの後方から全力で突き出したスピアは、脇腹を深深と突き刺した。しかし、タイガの反撃を喰らい、ディックは再び気絶する。
タイガ おのれ、下らぬ横槍を入れおって! 興醒めしたわ! そこの剣士よ、この勝負預けたぞ!
サクラ 私はサクラ・ヒメガミだ覚えておけ!
タイガ サクラ・ヒメガミ。その名覚えた。いずれ決着をつけようぞ。
GM タイガは部屋の奥にある隠し通路から去っていく。
ジェイル 止めをさしたかったが、追うと俺が危ないな(笑) 止めておこう。
ダンテス ふぅ、何とか勝ったな。怪我している皆を呪文で癒そう。
何とか探索の続きができるまでには回復した一行は、行っていない部屋の探索を開始する。ゴブリン・ソーサラーの部屋でいくらかの財宝と霊薬を手に入れた後、タイガが逃げた裏口から外に出た。
ちなみに、遺跡の番人ストーンゴーレムはサイズが大きいため、自身がいた部屋から簡単に出ることは出来ず、遠距離攻撃であっさり倒された。呼ばれていた場合は戦闘中に乱入してきて、強敵になっていたであろうが…
ホーク 私はタイガを追うことにします。獲物に逃げられたままじゃ気分が悪いので。
サクラ 気をつけてくださいね。
ダンテス さて、ジョルジュに帰るとするか。
ジェイル 金も入ったし、しばらくは楽が出来そうだな。
ディック ほな、帰って宴会やるで! ワイのおごりやジャンジャン飲め(笑)
*1:分からない人のために捕捉すると、都市や国の名前は初代ファイヤーエムブレムの登場人物から取っている。
*2:共に黒の月を崇める、人間とは敵対している種族。オークは豚人間といった外見で、タフで力もあるが頭は弱く臆病で卑屈。ゴブリンはぎょろりとした眼を持つ子供程度の大きさの鬼で、力は弱いが頭はいい。
*3:ルナルの通貨単位で1ムーナ100円くらい。
*4:リアド大陸の東側にある、グラダス半島と言われる場所にある国の一つ。本家リプレイ初期の舞台。
*5:GURPSでは6面サイコロを3個振り、基準となる技能や能力の数字以下で成功。値を超えると失敗となる。判定とも。
*6:サイコロをふった擬音
*7:判定の出目が3か4で成功した場合大成功となる。
*8:黒の月の<悪魔>に魂を売った邪悪な魔術師。魔法を使う黒の月の種族を指す場合もある。
*9:いずれも黒の月の種族。ホブゴブリンは虎や狼の頭を持つ獣人で、優秀な戦士。ゲルーシャは長身痩躯で耳が尖った外見をした、様々な特殊能力を持つ怪人。
*10:長時間光り続ける魔法の光。これがあるため、ルナルではランタンを使うことが少ない。
*11:一千年前に、ルナル世界に悪魔が攻めてきたことから勃発した戦争。
*12:遙か古代に創造神とその眷属が使っていたとされる言葉
*13:舞台となる紫の群島で広く使われている言葉。
*14:魔法を使うゴブリンの総称。
*15:魔法はレベルが上がると、集中に必要な時間や疲労が減り、動きや詠唱をしなくても発動可能になる。
*16:回避行動ができなくなる代わりに、攻撃回数を増やしたりダメージを上げたりする攻撃オプション。
*17:小型の手斧。
*18:負傷が生命力の2倍に達すると開始する、生きるか死ぬかの判定