黄金の羊亭新館

ガープスルナルのリプレイを公開しています

第3話「白の埋葬者」

女は今まで自分が生きていたと思ったことはなかった。自分の人生は狂っていたのだ、それも生まれてきた時からだ。

実際彼女の人生から不幸をとれば惰性以外残らないほど彼女の人生は不幸だった。そしてその中で彼女は死を迎えようとしている。

アルリアナの娼婦そう言えばまだ尊厳は保てるがその実態は奴隷でしかない、そんな中彼女は今まさに朽ちようとしていた。

トビタイ・・・アノ・・・ソラ・・・ジユウニ・・・トビタイ・・・

死を前にして彼女は一つの願いを神に祈った。それは現実からの逃避かもしれなかった、しかし彼女は生まれて初めて心から願った。

ト・ビ・タ・イィ

そして彼女の願いは叶った。


GM: では成長を申告してくれ。

ラック: わいは前回少し多めにCPを貰ったから、「槍」を上げた。

GM: 前回君は大活躍だったからね。

ガラ: 念願の「覚醒」を覚えた。あとラックの戦闘力強化のために「痛み止め」とその前提呪文の「痛み」も覚えてみた。

ラック: さすがは相棒や。

エルナ: 私も念願だった「空中歩行」と「電光」をとりました。あと「呪文射撃」もとりました。

アイス: まだソードブレイカー貯金は貯まりません。

ラック: わいがそこから抜いとるからな。で、成長もすんだところで前回何があったか話して貰おうか?

アイス: えーと実はですね・・・


前回の回想、というか苦悩


SM: 皆さんは聖堂を目指して山登りをするわけです。

エルナ: 登山用具はどうすればいいんでしょうか?

SM: ラカンさんが一式を用意してくれています。

アイス: さすがだ。じゃあ早速上りましょう。


かくして一行は登山を開始した。とはいっても中腹までは舗装された道を進むハイキングである。


SM: 2時間ほど歩くとラカンさんが大きな岩場の前で止まります。

アイス: どうしたんですか?

ラカン ここで聖堂までの道を聞くのだ。

SM: そう言うとラカンさんは拳大の石を取り出し、岩場に当てます。そうすると岩場の影に人が入れる程度の窪みができます。

ラカン この隙間にはいることで聖堂への道が聞ける。私には少し狭い隙間だが。

アイス: では僕が聞いてきます。

エルナ: お願いしますアイス。


アイスはそう言って、くぼみの中に入る。くぼみの中は不思議な黒い空間で、アイスはそこで脳に直接響く声で「山頂より7番目の杉、左の枝の袂」とのメッセージを聞いた。

アイス: 聞きました。では先を進みましょう。


この後一行は山頂を目指す。中腹以後は荒れた山道で一行は体力を削りながら登っていく。行程自体は順調で夕方近くになって山頂に到着する。


SM: あたりには幾本かの杉の木しかありません。

ラカン アイス君。聖堂はどこかね?

アイス: ・・・・・・・・えーと。

エルナ: ま、まさか忘れたわけではないですよねアイス?

アイス: もちろんです姫様。サブマス、知力チェックやっていいですか?

エルナ: 覚えてないの?

アイス: 実はど忘れしました。

SM: PLが忘れた場合は判定できないんですが・・・簡単なことなので一応判定してみてください。

アイス: コロコロ・・・14(笑)

SM: 覚えてませんね。あの時窪みに入ったのはアイス君だけなので他の方は言わないように。

アイス: どうしようメモとっとけばよかった。えーと確か・・・七番目の杉から進むんです。


かくてアイス君に率いられた一行はまっすぐ直進した。むろんそんなルートで聖堂にたどり着けるわけもなく、それどころか山を下ったところで山賊と遭遇してしまった。


しかしまだ運はあったのか、出会ったのはこの山を根城としている中で最弱の山賊軍団(ボスが30CP、子分は15CPが四体)だった。


ところが!楽勝と思われた戦闘は意外な苦戦になってしまう。自分が間違ってしまったことに感づいていたアイスは、名誉挽回のため無茶な特攻をかけて山賊に集団リンチ状態にあい気絶。


エルナも山歩きの疲れから十分な魔法による援護ができず、戦闘は結局ラカンが山賊全てを倒すまで続いた。


その後アイスを介抱した一行は山道を進むが、間違った道では聖堂などあるはずもなくたまたま見つけた炭焼き小屋で一泊。その次の日仕事のために小屋を訪れた炭焼き職人の口から、昨日自分たちが苦戦したのがこの山の最弱の山賊であったことを知った一行は戦力補強のため町に戻ったのである。


アイス: と言うわけでして。

ラック: このへたれ、へっぽこ。

アイス: うう。

ラック: 重要なことはメモをとる。これは社会の基本やろうが。

ガラ: うむ、今回はラックの言い分が正しいの。

ラカン 前回戦力が足りなかったのも事実だ。そこで特例だが君たちにもついてきてほしい。

ラック: まあええやろ。そんな不甲斐ない話聞いたら行かんわけにはいかん。

アイス: すいません姫。

エルナ: いえ謝らないでくださいアイス。それほど期待は持っていませんでしたから。

アイス: が~~~~ん。

ラック: うわ、姫さん。かわいい顔してえげつないわ。

ガラ: 外面菩薩内面般若とはこのことじゃ。間違いなくトラウマになるな。

エルナ: いえ、そんなつもりじゃなくて。その、聖堂に簡単に着けるわけがないという意味でして。

GM: (ため息をつきながら)ラカンさんは次の登山用の装備を買いに行ったけど君たちはどうするの。

エルナ: あの、次回は一緒に来ていただけるということですよねお二人とも。

ラック: しょうがないやろ。あんなへたれ、へっぽこ、りゃくして「へぽ」には任せられんわ。

ガラ: もう一字でアニメのタイトルじゃな。

アイス: しくしく。

エルナ: では、とりあえず装備を調えましょう。


初めてのお買い物


メンバーで話し合ったすえ、まずは帝国までの船代を尋ねるため(むろん使わない可能性もあるのだが)にラックは前回のセッションで知り合った貨物船の船長を訪ねた。


船長は約束通りガヤンの水上封鎖を回避してくれたラックに感謝し、かなり破格(4人で200ムーナ)な乗船代をしてくれた。


その後メンバー全員で計算した結果、エルナの宝石やラカンから渡された金などをあわせると予備費を抜いても2000ムーナ近くの予算ができた。


ラック: 「けちんぼ」チェック(コロコロ)・・・しょうがないな。わいの金や無いから特別にその金は使ってええわ(笑)

ガラ: 言われんでも使うわ。しかしお主の「けちんぼ」は見える金全てに適応されるのか?

ラック: ミュルーン的にな。無駄金使われると発作が起きるねん。

ガラ: ああ、また一つミュルーンの謎が増えた(笑)


買い物はアイス・エルナペアとラック・ガラペアで行うことになった。アイスは自分の鎧を購入しようとするも、寸法が合うものがなくてあきらめる。エルナは3点分のパワーストーンを購入した。


一方のペアはというと・・・


ラック: 鎧とか見てみたいな、探すで。

GM: では3D6を振ってくれ。

ラック: 幸運は?

GM: 今回はいいよ。3回振って一番低いものを使ってくれ。

ラック: (コロコロ)×3・・・4や。

GM: (またいい目だな)では君たちは店仕舞いセールをしている武具屋を見つける。店内にはミュルーンやドワーフ用の鎧が陳列され人間サイズのものはない。異種族の専門店のようだ。

ガラ: 珍しいの。

ラック: 安いっちゅうことは定価から何割かは利益になるんや、つまり貯蓄が出来るんや。夢のようやー。

GM: 君たちが話していると中から、初老の男性が出てくる。人間だよ。

ガラ: すまんが見させてもらっておるぞ。

店主: ああどうせ今週が終われば店じまいだ。好きなだけ見てくれ。

ラック: なんで閉めるんや?

店主: 帝国の政策のせいさ。

ガラ: なんの事じゃ?

店主: 今の帝国摂政のサーライト様が10年前に出した条例は知っているだろう。

ラック: 10年前の話?

GM: サーライトは摂政になると、それまで「青の月」を崇めることを旗印にしていた国策を緩めようとしたんだ。しかしこれは様々な混乱を招いたため、数年で撤回されている。

ラック: じゃあこの店は?

店主: サーライト様の宣言で異種族がたくさん集まると思たっんだが・・・見込み違いだった。

ガラ: そうじゃな・・・しかしGM、前回の話の時から気になってたんですが、10年前から皇帝の怪我は回復してないんですが?

GM: 回復はしたが体調が優れなくなった。ここら辺には様々な憶測が飛び交ってる。

ガラ: サーライトによる、「皇帝幽閉説」とか?

GM: それほど過激ではないがね。あと祟りとかもあるな。そもそも建国帝自身が復活の儀式も失敗したりしてるから、2代続けて何かに祟られてるんじゃないかと

ラック: オッチャン。大変やな。よしわいもこうたる!その代わり限界まで安くせえよ。死ぬつもりでな。

ガラ: ラックそれでは脅しじゃ。店主大けがでいいぞ(笑)

店主: たまに来ればこんな客ばっかり・・・ああ。


かくしてラックによる値切り合戦が始まった。途中で合流したアイス、エルナを交えて白熱した交渉により(エルナスマイルが非常に効果的であった)サイズのぴったりだったミュルーン用のスケイルメイルと上質のスピアを1400ムーナで購入した。


その後ガラは自分のポケットマネーで「手斧」と「治癒のエリクサー」を購入し、本日の買い物は終了となった。


そして次の日、ラカンを加えた一行は改めて聖堂に向かい始めた。


そして聖堂へ


ラカン 今日こそ聖堂に着かねば。

エルナ: でも山賊が襲ってこないでしょうか?

ラック: 大丈夫や。これだけの人数の武装した集団なら並の連中では襲ってこん。

GM: (そっとダイスを振って・・・気がついているのは弱小集団だけか。こいつらの戦力ではラックの言うとおり襲えないな。)では君たちは前回と同じ窪みのある大岩の前までたどり着く。

ガラ: ここが聖堂か?

アイス: いえ、ここで聖堂への道を聞くんです。

エルナ: では今回こそ私が聞いてきます。

GM: エルナが入るんだね。では窪みの中から・・・

エルナ: 「山頂より7番目の杉、左の枝の袂」という声が聞こえるんですね。

ラック: うおおお!テレパスや!?

エルナ: いえ、前回メモしてましたから。もっともキャラクターが聞いてないのでどうしようもなかったのですが。

ガラ: (エルナのPLの手を取って)それはさぞお辛かったでしょう。

エルナ: ええ、途中からアイスが何時思い出すのか、そればかりが気になって(笑)

ガラ: えーと、僕のせいですか?

ラック: 違うとでも言うんか?とりあえず「ヘポ」いう言葉を心に刻みつけるんや。


こうして一行はやっと聖堂に行くことができるのだった。


GM: さて聖堂は目の前だけどそろそろお昼だよ。

ラック: とりあえず飯を食うてからにするか?

GM: じゃあラカンさんは近くから木々を拾ってきて火をおこす。

ガラ: 茶を飲むか。

エルナ: たき火の近くで食事の準備をします。

ラック: あたりを見回ってくるわ。森やから飛ばんと移動や。

GM: (ふむ頭脳のツートップは火の近くか、ラック君は・・・今回の不幸はここにしておこう)では全員聴力判定。火の近くの二人は-3ね。ラック君は別の方向に偵察に行ってるから判定できないから。

ガラ: 失敗。

エルナ: 失敗です。

アイス: ちょうど成功。

GM: (その成功度では気がつかないな、ラックが飛んでいれば発見の可能性もあるが)では何事もなく昼食を取れた


そして一行はいよいよ山頂へ。


GM: 7番目の杉の左枝の袂からしばらく進んでいくと、突然視界がぶれる。

アイス: 幻覚?

GM: さてどうだろう。でそれまで山道を歩いていたはずの君たちは、突然平地に出ることになる。そこはよく刈り取られた木々が美しい、まるで庭園のような場所だ。そして庭園の先には球形のコテージのような建物がある。

ラック: どこの金持ちの持ち物や?

ガラ: 突っ込むところはそこではないと思うが。

エルナ: あれが「聖堂」なのでしょうか?

ラカン そうです。あれが「聖堂」です。私はここで警護するので、エルナ様はどうぞお入り下さい。

エルナ: は、はい。

アイス: 姫様が行くのなら僕もついて行きます。

ガラ: 個人的にかなり興味があるんじゃが、できれば入らせてくれるとありがたい。

ラック: お前ら入場料とられるで。

ガラ: 誰から?

ラック: わいから(笑)

ガラ: 鳥は無視するとして、エルナ嬢中に入っても構わんか?

エルナ: ええと、「私しか入れない」とかではないならかまいませんよ。

GM: 君がそう言うならラカンは何も言わない。

ラック: おみやげと入場料よろしくなー。

ガラ: お主は入らないのか?

ラック: 後で金とられそうやし。見張ってるわ。

ガラ: だから誰が入場料を取るんだ?

ラック: 話を聞きつけた他のミュルーンや。

アイス: ミュルーンとはいったいどんな生き物ですか?

ラック: (自分を指さしながら)こんなんやで~。

GM: ええい、さっさと入れ。


そして3人は聖堂の中に入っていった。


GM: 聖堂の中は入り口と2回の天窓以外何もない広い部屋だ。その中心部には人が入れるぐらいの銀色の球体があり、その横に黒いローブを着た人物が立っている。

ガラ: あの球体が聖堂か?想像していたものと違うの。

エルナ: では黒いローブの人に、私は現ティーグ家当主、サーライト・ティーグの娘。エルナード=ティーグです。儀式を受けに参りました。と言ってみます。

???: これはこれはようこそ、この聖堂を守っております「サイシ」です。

アイス: サイシさんですか。

GM: いや祭りや儀式を取り仕切る「祭祀」だ。ちなみに声の感じから女性だと思われるが詳しくは不明。それと彼女の体は透けてるから。

ガラ: 残留思念か何かか?

GM: さてね。で祭祀さんは名乗りを上げたエルナの方にスーと近づいてくる。

アイス: 姫をかばいます。

エルナ: 庇おうとするアイスを手で制止して祭祀を待ちます。

ガラ: 相変わらず見事な歯車じゃ。ちっとも一致しない。

アイス: いつかは一致します。

エルナ: 話を聞きましょう。

アイス: あう。

ガラ: 先は長いの。

祭祀: 儀式は簡単です。この銀色の球体に入れば良いのです。心の確かな者であれば自分の中にある別の可能性が見えるでしょう。しかし心を乱せば心の負の面が浮かび上がります。注意してください。

エルナ: つまりこの儀式がどう働くかは本人次第であると。

GM: そだね。さて入るかね。

エルナ: 私がここまで来たのはそのためですから。呼吸を止めて中に入ります。

アイス: 姫様、御武運を。

エルナ: ありがとうアイス、でもたぶん武はいりません。

ガラ: だんだん姫のつっこみも正確さを増してきたようじゃ。これならアイスの首も取れるかもしれん。

アイス: うーむ。姫がたくましくなるのはいいことかもしれません。

GM: ではエルナは中に入るんだね。意思力チェックだ。成功したなら成功度も教えてくれ。

エルナ: (コロコロ)・・・成功度は4です。

GM: (表を取り出しながら)では今度は6面を3回振って。

エルナ: 1と1と5です。

GM: (表を見ながら)君は気がつくと銀色の空間に立っている。そこでは君を中心に様々な映像が流れる。面白いのはそれらの映像に全て君が映っていることだ。

エルナ: 私ですか?

GM: うん。それも何百もだ。映し出されている映像の中の女性たちは顔の作りや体のつくりが君と違ったりするが、君は直感的にそれが自分の別の可能性であるとわかる。

ガラ: パラレルワールドのエルナか。そう言えばルナルはパラレルが存在する。

GM: その中でも君はある映像が気になった。君から見て左端の映像だ、その世界での君は人の心を読むことに長けていた。もう一回意思力チェック。

エルナ: 今度も成功です。

GM: ではその世界のエルナの能力を君は才能として持っていると直感的に感じる。この能力は「感情察知」や「共感」と呼ばれる能力だ。

エルナ: 習得できるんですか?

GM: いや今すぐは無理だ「どうすれば習得できるか、そのコツをつかんだ」と思えばいい。それなりの時間とCPをかければ習得できる。その知識の共有が終わると、君は球体の外に出される。その時自分から見てもっとも大きな映像を映していた世界に、天空から月が落ちていく様が見える。

エルナ: キャアー(すばらしく棒読み)

アイス: 姫様、大丈夫ですか。

エルナ: ええ、少し知った顔がたくさんすぎて疲れました。

ガラ: GM、エルナが中に入っている間に祭祀と話したいんですが。

GM: 出るまで10分ぐらいかかるし、話してたことでいいよ。

ガラ: 祭祀殿。この中にはいることができるのはティーグ家の関係者だけかの?

祭祀: いえティーグ家の許しがあれば。

ガラ: ふむ、では帰ってきたエルナに「入ってみたい」と言ってみよう。

エルナ: 祭祀さんがいいのであればかまいません。

ガラ: かたじけない。では行くぞアイス。

アイス: え、僕もですか?

ガラ: 当然じゃ。お主のへっぽこが直るかもしれん(笑)


かくして二人も銀の球体の中に、ガラは意思力判定の成功度が低く平行世界をかいま見ることしかできなかったが、アイスは「意志の強さ」をさらに得ることのできる可能性を手に入れた。そして彼も月の落ちる世界を見たのだった。


一方外の二人にも危機が迫っていた。


白の埋葬者


GM: 君たちが警備をしていると一陣の風が吹く。ちなみに警備を始めて結構たつがそれまで風が吹いたことは一度もない。

ラック: 嫌な予感がするで。

GM: (あたり)その風と共に敷地の中に一人の女性が入ってくる。ひらひらした衣装を身にまとった見目麗しい女性だ。おそらく人間だろうね。

ラック: お嬢ちゃんここは私有地や、勝手に入ったらいかん。

GM: 君がそう言うと女は背後から強大な扇を取り出す。

ラック: 芭蕉扇?

GM: まんまそんな感じだ。でそれで君たちの方に風を送った瞬間、巨大な暴風が君たちを襲う。敏捷力-2チェックに成功しないと後退ね。

ラック: (コロコロ)・・・失敗。うおー、ずざざー。

GM: ラカンも失敗。二人とも2歩後退ね。でそれを謎の女は愉快そうに見てる。

謎の女: ラキラキラキ、何か言ったか小童。

ラック: また古いネタを。

GM: (ほっとけ)風が止むとその女性は優雅に一礼して君たちに見る。

エアール: ラキラキ、我は「空の七月」が一人葬風のエアール。エルナード姫の命を頂戴に参った、貴様らに用はない命がおしくば道をあけよ。

ラック: 教科書みたいな見事な名乗りありがとうな。でもな、こっちも仕事なんや。わけのわからん奴を通すことはできん。

エアール: 愚かな!我々は世界を救うために新たな秩序を作るのために動いておるのじゃ。

ラック: お前が無政府主義者か革命主義者か知らんが、わいは依頼主の命を守らんほど薄情やないで。

GM: 君がそう言うと、エアールは無言で芭蕉扇(真名:エアスレッジャー)を構える。ここからは戦闘として処理していこう。


このターンはラカン、ラックともエアールに吹き飛ばされた距離を詰めただけで終わった。二人とも未知の敵エアールがどうでるかをうかがっているのである。


GM: ではエアールの攻撃ね。さっきと同じでエアスレッジャーを振るってくる。しかし前回と違い、今度は風と共に真空の刃が君たちの体を切り刻む。とりあえず1D6を振ってくれ。あと敏捷力判定もね

ラック: 2やな。

GM: ではダメージは1D6の「切り」だ。ダメ-ジは自分で振ってくれ。ところで誰かラカンさんのダイスを振ってくれ。

アイス: では僕が・・・6。

ラック: おい。

GM: では3D6の「切り」だ。ダメージも責任を持って振るように。

アイス: (コロコロ)・・・15です。

一同: (苦笑)

GM: では頑強やら鎧の防護点を引いて1,5倍しても15点か。いきなり気絶する可能性が出てきたぞ。

ラック: パーティ1の頑丈さやのに。


次のターンラックとラカンはエアールに攻撃を仕掛けるが、エアールはエアスレッジャーによる「止め」とひらひらした服を硬化させる特殊防御魔法で攻撃を「受け」きる。


GM: ではこちらの攻撃だ。その前に-1で知力判定を行ってくれ。

ラック: 失敗。

GM: (ラカンも失敗かこれではこの技の正体には気がつかないな)

ラック: GMこの攻撃って防御できんの?

GM: 一度受けた後なら「よけ」か「止め」は可能だ。成功するとダメージの大小を決定する1D6の時に出目を-1できる。後退するとさらに-1だ。

ラック: よし後退止めが成功。ダイスが3やから1。

GM: ではダメージは1D6-1。さてラカンさんを振ってくれる方はいるかな?ラカンさんも後退止めが成功してる。

ガラ: 振りましょう。(コロコロ)・・・6。

一同: (爆笑)

GM: では4扱いで2Dの切り。

ガラ: ダメージは(コロコロ)・・・4と6で10点。

アイス: なんかラカンさん関係でダイスにかならず6が出るんですが。

GM: ラカンさんは瀕死だね。

ラック: あかんこれじゃじり貧や。ラカンはん逃げよう。

ラカン いや私は時間を稼ぐ。その間に姫様を逃がしてくれ。

ラック: あんたぼろぼろや。

ラカン 大丈夫だ。

ラック: それを聞いたら、次のターンは無言で屋敷に走ります。


この後ラックは持ち前の逃げ足で屋敷に無事逃走。ラカンはその後気絶もせずよく持ったのだが3度目の死亡判定であえなく月の住人となった。


GM: さて中の君たちが一連の行動を終わった頃に、ラック君が慌てて中に入ってくる。

ガラ: ラック、慌ててどうした。

ラック: 大変なんや~。と言いつつ中に入りドアを閉める。そして事情を話そう。

GM: ラカンさんはどうするの?

ラック: そうやった。この屋敷って窓はあったけ?

アイス: 確か天窓が。

ラック: ではそこまで飛んで天窓からラカンさんの様子を見よう。

GM: (他のゲームならともかくガープスでこの時間ロスは致命的だな)では君が天窓から見ると、エアールに向かって前のめりに倒れているラカンさんを発見する。全身血だらけでぴくりとも動かない。エアールも攻撃してはいないようだ。

ラック: 遅かったか・・・あんたの敵はかならずとるように決意するつもりや。

ガラ: せめて決意ぐらいはしてやれ(笑)

ラック: まじめな話どうしようか?

GM: 君たちがそうやって話していると、扉が風によって大きく揺れる。

ラック: やばいな、そうやそこの人。ここに隠し通路とか秘密のパワーアップアイテムとかないか?と祭祀に聞いてみよう。

GM: 祭祀はエルナの方を見てくるが。

エルナ: 教えてください。

祭祀: 隠し通路はありません。道具でしたらこの館を訪れた過去の人々が残した物が、部屋の隅にある衣装入れに。

ラック: どんな物があるんや?

GM: パッと見たところでは古びた貴族服や毛布・小物だね。本格的に探すには時間が全くないよ。今この瞬間も扉は大きく軋んでいる。

ガラ: 貴族服・・・!あれほどの風なら出口を求めて天窓に殺到するはず、そこに貴族服をおいておけば風で落ちて囮になる。

ラック: そこで表から突っ込めばいけるかもしれんな。

エルナ: それをさらに囮にして、一度服が落ちた天窓からラックさんが滑空して突撃するというのはどうでしょう?

ラック: 姫さん冴えてるで!それで行こう。

アイス: えーと・・・僕は?

ラック: お前は扉が開くと同時に突撃や。なるたけ注意を引きつけろ。

ガラ: そうと決まれば・・・GM扉が壊されるまでの時間は?

GM: 誰か建築学もってる?技能なし値で振っても正確にはわからないよ。

ガラ: では残された時間でラックに「痛み止め」をアイスと自分に「素早さ」をかけよう。それでもまだ時間が残っていたら、扉の近くで隠れる。その後で「治癒」のエリクサーを飲もう。最悪は呪文を維持する必要がある。その後で投げ斧の準備もしよう。

エルナ: 私はアイスに「韋駄天」をかけて時間が残っていればやっぱり非難します。

ラック: 呪文がかかったら、天窓に移動や隠れて様子をうかがうで。

アイス: 僕は扉の近くで待機して、扉が開いた瞬間にエアールにダッシュです。

GM: OK。ところでラック君隠れるのはいいが「忍び」もってる?

ラック: (ベーシックを見ながら)なんちゃって忍び・・・ぴったりで成功や。

GM: (勝手に振るな!しかし・・・ふむふむ)では君たちの行動が終わってから30秒ほどで扉が破れる。そして次の瞬間には天窓付近に置かれた貴族服が風の力で天窓から落ちるが、エアールは何の反応もしない。

ラック: 失敗か?でもここまで来たら引き返せん。


その後呪文によって移動力が上がったアイスがエアールに突っ込むが、待ちかまえていたエアールによって逆に手傷を負う。エルナはアイスへの「大治癒」に集中するが、距離が遠い。ガラは投げ斧を構え狙いをつける。


次のターンいよいよラックが滑空するのだが・・・


ラック: 滑空は成功。距離的にも問題ないやろ。

GM: そうだね。ただ君の飛び出したあたりはちょうど「空気破壊」をこちらの行動でかけたところなのでプチ乱気流ができてるけど。

ラック: え・・・でもその範囲内とはかぎらんやろ?

GM: 大丈夫。エアールの頭上7ヘクス周囲にかけたから。さすがに目立つ青い鳥が天窓から見えたら警戒するよ。

ガラ: わいの姿が見えてたのか?

GM: こっちは目もいいし、「生命感知」とかも使えるんだよ。そう言うわけで-5でもう一度「滑空」ね。

ラック: わが「幸運」をみよ!・・・そんな三回とも失敗。

GM: では屋敷とエアールの中間地点に落下して転倒。ダメージは6点、防護点は半分有効。

ラック: いたい。痛み止め様々や。


その後アイスが全力攻撃を行うも、ラックやラカンと同じように受けられる。このままずるずる行くかと思われた戦闘だが。


ガラ: 正確とは言いかねる命中値じゃがここで投げておいた方がいいじゃろう。(コロコロ)・・・命中。

GM: く、「よけ」以外の回避手段がない・・・回避失敗。

ガラ: ダメージは9点。

GM: く、こいつは打たれ弱いんだ。ああ転倒した。

ラック: ガラようやった。これで勝てる。

GM: ううむ、この状態は非常にまずい。なので彼女は変身する。

ラック: 変身やて!悪魔か?

GM: どうだろう?とりあえず彼女の体は繭のような物に包まれる。今のところとりあえず攻撃してくる様子はないけど。

ラック: ゴジモス見たいに正義の味方やったらいいんやが。

アイス: ごじもすとは何ですが?

ラック: 「ゴOラ」と戦う時の平和を愛する「モ○ラ」の通称。

GM: それはいいが行動は?


このターンはラックが転倒から立ち上がり、アイスは全力攻撃を行うも繭が頑丈なため思ったようなダメージは与えられない。


その次のターン、相変わらず繭の状態にあるエアールにラックとアイスの攻撃が炸裂してかなりのダメージを与える。


この間の後ろの二人だが、ガラが援護のため前列に向かいだし、エルナは距離のために援護をあきらめ雷光を作り始めた。


GM: では繭が割れて中からは4枚の羽を持った姿に変わったエアールが出てくる。両腕も翼に変化しているから、それを合わせると6枚だが。

ラック: 天使にハーピーを掛け合わせたような奴やな。

GM: 外見は天使かな。そして彼女が姿を表したと共に、全方位型の真空刃が来るんだよ。一応「よけ」は可能だけどね。


この一撃によってラックは大ダメ-ジをうけて回復のため一時的に戦線を離脱。エアールその後も腕から風の刃を放ち、アイオスを窮地に追いやる。アイオスは風の刃を防ぐためにエアールに「組み付く」が・・・


GM: ではこちらのターン君とエアールで「体力」の即決勝負ね。柔道とかで代用できるけど。

アイス: 持ってないです(コロコロ)3成功。

GM: こちらは10成功。では君は両腕の翼から発生する激風に吹っ飛ばされる。(コロコロ)7mの高さから錐揉みで落下してる感じだ。さらに1D6を振って1が出れば「脳」から落ちる。

アイス: ・・・1です。

GM: (別にこちらで振ったんだが、まあ自分で振ったのならしょうがない)では脳に8点のダメ-ジだ。

ガラ: アイスの防護点だと16点ダメージですか?

アイス: 死亡判定がいります(泣)頼む(コロコロ)よし成功です!

GM: でも脳にこのダメージを受けたら自動的に気絶だから。


かくしてアイスは戦線離脱、残ったラックは始めの大ダメージを警戒して思い切った攻撃ができず、かえってダメージを増やしていく。


ガラはそんなラックの回復で手一杯のため戦闘の援護はできない。じり貧かと思われた戦闘だったが・・・。


エルナ: やっと完全に狙いがつきました。

GM: 長かったね。

エルナ: (コロコロ)命中です。

GM: 回避できない

エルナ: ダメージは14?

アイス: (気絶しているためルールブックを見ながら)フルパワーならそこから-3してください。

エルナ: では11点です。

ラック: ナイスや姫さん。

ガラ: うむ。やはり情愛の心の内に般若を秘めていたか。


この雷光で大ダメージを受けたエアールは全力攻撃に打って出るが、さほどダメージを与えず終了。逆にラック・ガラの攻撃により大ダメージを受けてしまう。


ガラ: 6点の叩き。

GM: それが決定打だ。彼女の体は崩れ落ち徐々に崩壊する。

ラック: 灰になるんやな?

GM: いや、元に戻る。とは言っても死んでないだけで大ダメージには変わりないが。

ラック: とどめを刺しとかんとな。

GM: 君がそうやって動こうとした瞬間。聖堂と君たちの中間ぐらいに、突然謎の人物が現れる。銀色に磨かれた甲冑に身を包んだ2m近い騎士だ。

ガラ: ほう。

GM: でぼろぼろのエアールが「シルバー様」と言ってそちらを見てる。で男は君たちに話しかけてくる。

???: エアールをこちらに渡せ。

ラック: 何もんやおまえ?

???: 答える必要はない。渡さないのならば力ずくとなるだけだ。

ガラ: 自信があるようじゃな。

エルナ: エアールさんを渡しましょう。これ以上誰かが傷つかないのなら。

ラック: 甘いで姫さん。しかし・・・戦力的には確かにきつい。

ガラ: エアールを渡そう。と言ってエアールの包囲を解きます。

GM: そうすると男はエアールに肩を貸し、そこでかき消える。

ラック: ふぃー。やばかったで。

エルナ: アイスを治療します。

ガラ: ならその間にわしはラカンの遺体を埋移動させる準備をしよう。GM、一応確認なんですがラカンは死んでますか。

GM: ああ。

この後アイスの応急処置を終えた一行はラカンの遺体とともに山を下りた。

ラック: それでこれからどうするんや?

エルナ: とりあえず帝国にいこうと思います。それがラカンさんの望みでもありましたし。

ガラ: しばらくは付き合おう。

アイス: でもあのプレートメイル何ものでしょうか?

ラック: 姫さん心当たりあるか?

エルナ: どうなんでしょうかGM?

GM: 今までの襲撃者は名乗らなかったからねー。判らない。

ガラ: まあ何ものであれ、奴がシルバーならたいしたことはなかろう。

アイス: え?何でです。

ガラ: く、これがジェネレーションギャップというものか(笑)

ラック: 気にしてもしゃーないとりあえず行こか。

 

かくして一行は帝国へと旅だった。しかし彼らに待ち受ける暗雲の暗さを彼らはまだ知らない。

 

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夏野コーパル夢談義(ネタばれ注意)

夏野: では第三回です。ところで先ほどから水ばかり飲んでいますが、どうなさいました?

コーパル: いや、ウォーターローディングと言ってこうすると速くアルコールが抜けるんだよ。

夏野: 30分やそこらでは無理ですよ。

コーパル: 君に任せるよりはマシだ。さて今回の話だが。

夏野: おお、始めてGMから語ってくださいますか?

コーパル: アイス君の行動のため、予定よりかなり早く敵が出てしまったのだ。

夏野: そうですね。はっきり言ってこの段階では展開が唐突すぎます。

コーパル: ただの顔出しのつもりだったのだがまたNPCがやられた。

夏野: しょうがありませんエアールはかなりの敵でしたから。ちなみにデータです。

 

風葬のエアール

変形したエアールです。彼女は「悪魔」ではなく何か別の存在から力を受けてこの姿になっています。

 そのためこの姿になるためには2秒間の時間が必要です。始めの一秒はあらゆる能動的行動が取れませんが、2秒目は「移動」「よけ」ができないだけで普通に行動できます。 変身した彼女は2mほどの身長になり、背中に4枚と両手が変形した二枚の計6枚の羽を持存在に姿を変えます。彼女の美しい容貌はそのままですのでこちらの世界で言う「天使」に近い姿と言えるでしょうか。

 彼女の両手は風邪の刃を生み出すことができ、主のそれを使って行動します。また近接された場合は相手に組み付き、上空に高々と舞上げてしまいます。彼女の両手は翼ですが特殊な空気の力場を形成しているため、人をそれに絡つかせることができます。

 それ以外にも彼女は腕から空気の固まりを打ち出すことで敵の攻撃を無効化することができます。これは「受け」として扱います。

ST:18 DX:15 IQ:13 HT:13/50

有利な特徴:我慢強い 

呪文:風霊系をすべて(18LV、空気破壊は25LV)

移動力:7 よけ/受け/止め:7/10/- 防護点/受動防御:2/2(変形中は4)

風葬:技能LV15:ダメージ2D-2(切り)  最大で4ヘクス先まで効果があるが1ヘクス離れるたびにダメージは-1。射撃攻撃として扱い「受け」は不可。全力攻撃を行うと隣接ヘクスすべてを攻撃でき、「止め」も不可能となる。

鳥葬:技能LV15:この攻撃を行うためには相手と「組み付き」状態になる必要がある組み付き時にこの技能に成功した場合、相手との「体力の即決勝負」を行う。その際にこちらが勝った値を基準として「落下ダメージ」を計算する。

 この攻撃を受けた対象は1D6を振り1が出た場合、対象は「脳」から落下したものとしてダメージを受ける。この攻撃によるダメージは「軽業」などで軽減可能だが、軽業の判定には-3のペナルティを受ける。


夏野: ちなみに人間バージョンのエアールは

 

エアール

ST:9 DX:13 IQ:14 HT:11

有利な特徴:魔法の素質2LV 容貌:美人

呪文:風霊系をすべて(18LV、空気破壊は25LV)とアルリアナの入信者の呪文すべて(15LV)衣服硬化(特殊な鉄の腕15LV)

移動力:6 よけ/受け/止め:7/-/8(エアスレージャー・ブロック)

防護点/受動防御:2/4(エアスレッジャーの2点)

 

夏野: となってます。エアスレッジャーの特赦な攻撃法についてはまた次の機会に書きます。

コーパル: うむ、敵も現れ一行ものんびりできなくなってきたね。

夏野: さて話も済みましたし、帰りましょうか。

コーパル: だから誰が運転するの?

夏野: さっき弟に連絡入れました。

コーパル: (親指を立てて)グッジョブ。

 この後二人は無事コーパル邸につくも、何故か以後コーパル邸の乗り物に夏野兄弟がふれることはなかった。

 

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