黄金の羊亭新館

ガープスルナルのリプレイを公開しています

第1話「お嬢と舎弟と貴族と魔術師」

きっかけは小さな乱闘騒ぎ

GM  さて、今回からGURPS4th半対応の新キャンペーンを開始します。

一同  (拍手)

GM  今回のゲームは、戦闘難易度は相当高くする予定。チンピラ程度ならともかく、一般兵っぽい奴らでも正面から無策で戦えば余裕で死ねるレベルだと思って欲しい。では、ヒスミ&ユズキコンビ以外は初顔合わせから始める。自己紹介なんぞは会った時にしてもらうから、早速演技をはじめてくれぃ。

ヒスミ  分かりましたー。

イングリッド  それで、今回の最初の舞台はどこになるの?

GM  おっと、そうだった。時は双月歴1132年。未来のイヴ編終了から2、3年後くらいだね。舞台はあいかわらずの紫の群島、西ネクロス島のアンリ連邦共和国。君たちは、<快楽都市>ミディアにいる。

ユズキ  合法の賭博場がある、ドリームな街ですね。格闘大会も年に何度か行われているはずです。

GM  そうそう。

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アンリ連邦共和国地図

ライン  私はソイル選王国出身ですから、嫁を探してこの街に立ち寄ったのでしょうね。

GM  そだね。んじゃ、まずはラインから話を進めていこうか。君は逃げられた嫁、ジェシカがアンリ連邦に向かったという話を聞き、この国にやって来た。そして、この街にジェシカと風貌がそっくりの女性がいるという話を聞き、今、この街にいるというわけだ。

ライン  嫁には逃げられたわけじゃないですよ。

GM  君の親を騙して金を奪って出奔したのを、逃げたと言わず何と言う? それはともかく、夕飯時だしおなかが空いたからと繁華街を歩いていると思いねぇ。

ライン  はい。

GM  (リアクション薄いなぁ)で、歩いていると、髪は短いがジェシカと瓜二つの人物が目に入った。銀髪でメガネをかけたすごく綺麗な女性と歩いている。

ライン  追いかけて肩を掴みますよ。おい、ジェシカじゃないか?

GM  では、イングリッド。君は、ルームメイトにして「仲間」のレベッカと夕飯の買い物をしていた。すると、いきなりレベッカの肩をつかんで「ジェシカじゃないか?」とか言ってくる奴が現れた。顔は悪くない青年だ。

イングリッド  知り合いと間違えたふりをして話し掛けてくるなんて、実に古びてつまらないナンパテクニックね。

レベッカ  (ラインの手を払って)まったく。同感よ。

ライン  え? ジェシカじゃない?

GM  顔は全く同じ。ただ、雰囲気はかなり違うね。髪もジェシカはポニーテールにできるほど長かったが、目の前の女性はショートカットだ。

イングリッド  でも、今「ジェシカ」って言ったわよね? そのジェシカって娘はこの娘にそっくりなの?

ライン  え? ええ。

レベッカ  これは、話を聞く必要がありそうね。

ライン  え?

イングリッド  「え?」じゃないわ。あなたには話してもらうことがあるんだから、着いてらっしゃい。

ライン  は・・・はぁ・・・

外野のユズキ  怖いお姉さんたちです(笑)

外野のヒスミ  むしろ美人局?(笑)

GM  では、イングリッドレベッカと共にラインをつれてヒスミ嬢が歌っているカフェBARへとやって来た。

ユズキ  ウェイターの仕事しながら、ミスマッチな人たちだなーとでも思っておきます。

ヒスミ  「歌唱」技能で判定してもいいですか?

GM  いいよ。

ヒスミ  では(ころころ)やった、8成功です!

一同  おおー(と軽く拍手してみたり)

GM  ふむ。では、こんな場末のカフェにはもったいない一流の歌声が店内に響いている。ちなみに、歌っている娘はかなり長身。年はイングリッドより若いくらいだ。胸元が下品にならないくらいに開いたドレスを着ていて、鎖骨辺りにある青い蝶の刺青がよく見える

ライン  青い蝶!? ちょっと、それって・・・

GM  何を言ってるのかね君は? 君にとって青い蝶なんて別に珍しくも何とも無いでしょう。

ユズキ  それに、お嬢の青い蝶は、生まれたときからありましたから刺青じゃなくて痣ですよ(笑)

ヒスミ  綺麗な青色の痣ですよ(笑) ほら、今、青って流行なのですよ(笑)

イングリッド  そうそう。PL台詞だけど私だって爪が青いし(笑)

ライン  爪が青い!? それって・・・

GM  PLとPCの知識くらい区別しとけ。

イングリッド  普段は手袋してるから、爪は見えないわよ。

ライン  でも、<聖なる母の結社>のことくらい僕はもちろん知っているでしょう?

GM  いや、知らない。一般人は秘密結社の名前なんて知らないと思うよ。

ライン  私はソイル選王国出身ですよ?

GM  選王国出身ってことと、秘密結社の名を知ってるってことに繋がりは無いだろう。特別な組織に身を置いてるなら話は別だけど、そんなCP払ってないだろ?

ライン  でも・・・

イングリッド  GMが知らないって言ってるんだからそういうことにしときなさいよ。正直しつこいわよ。で、相変わらずいい歌が聞ける店だわ。マスター、いつもの3つお願い。

マスター  分かりました。

GM  いつの間にか常連になってるし(笑)

イングリッド  それで、あなたの言うジェシカは、こっちのレベッカにそっくりなの?

ライン  はい。

レベッカ  その娘、右手の甲に刺青していなかった?

ライン  いえ、右手に火傷の跡はありましたけど・・・

イングリッド  可能性は高いわね。

レベッカ  むしろ、ほぼ正解でしょう。(ラインに)今、ジェシカがどこにいるか知ってるの? ジェシカとどういう関係?

ライン  いえ。私の名前はラインハル・・・

イングリッド  あなたの名前なんて聞いてないわ。ジェシカがどこにいるのか知っているかって聞いてるの。

ライン  でも、私のことを話さないとジェシカがどこにいるのか分かってもらえないのですよ。

レベッカ  だったら、さっさと話なさい。

ライン  (待ってましたとばかりに)分かりました。私の名前はラインハルト・ヨーハン・フォン・シュトゥルムドランク。

イングリッド  (ヒソヒソと)偉そうな名前ね。

レベッカ  (同じく)家柄を自慢したいだけじゃないのかしら。

ライン  私の家は、ソイル選王国にある貴族の家柄でして・・・

 

 この後ラインは、長々と館を抜け出し下町でジェシカと出会ったことから2年前に結婚したこと。そして今、ジェシカは無能な両親から金を奪って逃走しているということを語る。

 

イングリッド  (コーヒーを飲みながら)・・・で、つまり、ジェシカはあんたと結婚したんだけど、あんたの親の財産を奪って逃走した。今の居場所はこの国に来たらしいということ以外分からない。そう言いたいのね。

ライン  ええ。うちの親は無能ですから。

GM (会話がつながってないな・・・)

イングリッド  だったら、あんたとジェシカの馴れ初めなんかを長々語る必要は無いでしょう。名前を名乗ったことと、ジェシカの居場所についても何の関連性もないわ。

レベッカ  ガヤンの癖にずいぶんと説明が下手なのですね。くす。

ユズキ  (端から見ていて)なんかこのレベッカって人、性格掴み辛そうですね。

レベッカ  目指せ萌えキャラ不思議っ子(笑)

イングリッド  いや、その方向ではキャラ立てするのはちょっと(笑)

GM  とか話していると、やや柄の悪い二人組みがイングリッドたちのテーブルに近づいてくる。

柄の悪い男A(ユズキのPL)  ようようにーちゃん。こんな時間から美人2人も侍らせて、いいご身分じゃねーか(PLは笑)

柄の悪い男B(イングリッドのPL)  俺たちにもあやからせてくれよ。なぁ、いいだろぉ?(PLは笑)

GM  そんな感じで(笑)

イングリッド  (ラインに)何か言ったらどうなの?

ライン  いえ、私は内気ですので・・・

柄の悪い男A  どうしたにーちゃん。なに黙ってんだよ。

イングリッド  (ため息ついて)しょうがないわね。お引取り願いなさい。レベッカ

レベッカ  さすがに町中で殺しはまずいですよね。でしたら、両手両足の骨を折るくらいにしておきましょうか?

イングリッド  ・・・ほどほどにね。

GM  てなわけで、ヒスミ&ユズキ。店の中で騒ぎが起こりそうな気配だよ?

ヒスミ  こらぁ! そこのあなたたち!(ステージから降りようとする)

ユズキ  あ! お嬢、だめです。あなたがステージから降りると・・・

ヒスミ  あ!?(ステージの段差で、盛大につまづいて転ぶ)・・・痛いよぅユズキぃ・・・

ユズキ  ああ!? お嬢、大丈夫ですか!? 「応急処置」の技能があるので軽く診断します。骨が折れてたりしたら大変です。

イングリッド  えーっと・・・(展開の変わりようについていけず、呆然としている)

GM  ちなみにヒスミが破滅的にドジなのは店長も知っていることなので、ステージ上でヒスミが転んだときに被害を受ける範囲内には何も置いていない(笑)

ヒスミ  最初の頃は、お皿割っちゃったりしました。てへ。

ユズキ  お嬢はステージにいてください。

ヒスミ  えー? でも、あいつら放っておけないよ?

ユズキ  僕が話をつけてきましょうか?

ヒスミ  そう? じゃあ、お願いねー。

ユズキ  分かりました。ほら、お客さんはお嬢の歌を待ってますよ。

ヒスミ  あ、そうだねー。私はここに歌いに来てるのでしたー。

GM  で、ヒスミの歌声がまた店内に響き始める。柄の悪い男2人組みはさっきのやり取りの前に呆然自失中。

イングリッド  私もなんだけど(笑)

ユズキ  柄の悪い男に話し掛けますね。あなたたち、<風龍会>って知っていますか?

柄の悪い男A  あ? ああ。そりゃもちろん。

柄の悪い男B  この街でその名を知らねぇ奴はもぐりだぜ。

ユズキ  では、この店が<風龍会>のシマのものだというのは知っていましたか?

柄の悪い男A  え? そうなのか?

柄の悪い男B  い・・・いや。な・・・なぁ、もう帰らねぇか?

柄の悪い男A  あ・・・ああ、そうだな。

GM  女顔の少年に何か言われると、2人組みは急におどおどと立ち去った。

イングリッド  ふぅん。この子、ヤクザ屋さんかしら? そうは見えないけど。

レベッカ  どうしますイングリッド。これ以上こいつ(ライン)といても、有益なことはなさそうですけれど。

イングリッド  そうね。コーヒーだけ戴いて帰りましょうか。

ユズキのPL  (ラインのPLに)この2人があんたが探してる嫁とどういう関係なのか聞かないのか?

ライン  でも私、内気ですから・・・

GM  内気な奴が嫁との半生を初対面の相手に語るのもどうかと思うがな。さて、そんなこんなで時間がたって、ヒスミはもう上がりの時間だ。

ヒスミ  てんちょぉ、ありがとうございました。

マスター  ああ、お疲れ様。あ、帰るときは気をつけてくださいよ。

ユズキ  大丈夫です。お嬢が転んでも大丈夫なように道を作るのも僕の役目ですから(笑)

GM  では、何度か転んだりひっかけたりしそうになりながらも、店のドアの前まで着いた。

ユズキ  ドアを開けて、エスコートします。

GM  と、ユズキがドアを開けて外に出ようとすると、いきなり誰かが殴りかかってくる!

ユズキ  え? とっさによけま・・・

GM  あ、その必要は無い。ファンブルした(苦笑) えーっと、自分の手か足に命中? 殴りかかったらよけられて、ドアをぶん殴ったって感じかな?

ユズキ  いきなり何をするんです!

GM (ころころ) 殴りかかってきた男は、腕を押さえて悶絶してる。最高ダメージが出たから手首が折れた。

一同  (笑)

GM  ただ、チンピラ風の男が3人。君を囲みこむ。

チンピラ  おう。よくも俺の仲間をやってくれたな!

ユズキ  仲間? さっき追い払った、柄の悪い2人組みのことですか?

チンピラ  とぼけんな! そこで腕押さえてうずくまってる奴だよ!

ユズキ  あれは、僕がやったんじゃないですよ!(思わず叫ぶ)

一同  (笑)

イングリッド  見事な作戦ね。1人を犠牲にすることで、合法的に対象にインネンをつけられる(笑)

GM  合法的にインネン?(笑)

ヒスミ  ユズキ、下がってて。

ユズキ  お嬢、気をつけてください。

イングリッド  普通この場合、男女の立場逆なんじゃない? そんなことよりレベッカ。さっき助けてもらった恩は返さないとね。

レベッカ  そうね。

ライン  私も行きましょう。困っている人を放ってはおけませんから。

ヒスミ  別に困ってないよぉ。GM、武器は?

GM  持ってるよ。君らの立場上、歌っているときも手の届く所にはあるだろう。チンピラたちはナイフを抜いている。

チンピラ  けっ! 弱虫ナイトを守るおてんばお姫様の登場ってか? 二人まとめて痛い目見てもらうか!

ヒスミ  私の方が先に動けますよね? だったら、「準備/両手剣」で刀を抜いて・・・

GM  抜くのか!?

ヒスミ  あ、いつもの癖で抜いちゃったけど、街中で刃傷沙汰はまずいよね。てへ。

ユズキ  峰打ちで殴ることもできるはずですよ。僕は、匕首持ってお嬢の後ろに隠れています(笑)

イングリッド  匕首とか刀とか、やっぱりヤクザ屋さんかしら。

ヒスミ  じゃあ、峰打ちで殴って、12点ダメージ!

イングリッド  えぇー!?

GM  ぐわばっ!? 2メルー近く吹っ飛んで、一撃で気絶ダメージ入った!? 確実に肋骨折れたぞそのダメージ。こうなったら、兄貴の仇とばかりに、チンピラーズはナイフを振るう! (ころころ)あ・・・

ヒスミ  「あ」ってなにー!?

GM  うむ。チンピラーズの1人は、ナイフを弄んでいたら手を滑らせて、自分の足に刺してしまった。しかもダメージでかいから、片足がつかえなくなった。

一同  (爆笑)

 

 そして、イングリッドレベッカ、ラインも喧嘩の場に到着。

 

ユズキ  まだ続けますか?

チンピラ  ちくしょう! 何てやつらだ! 1人で3人も片付けただって?

イングリッド  いや、半分自滅だった気もするけど(笑)

ユズキ  諦めてください。あなたたちでは赤子の手すら捻れませんよ(笑)

GM  とか話してると、喧嘩だ喧嘩だと遠巻きに見ていた人たちの中からガヤンの人が現れる。

ガヤン  や。これはいかんねぇ。こんな所で刃傷沙汰の喧嘩だなんて。

ユズキ  知ってる人ですか?

GM  いや、知らない。

ガヤン  聞けばどうも、このチンピラが一方的に襲ってきたから、君たちは自衛のために戦ったみたいだね。

ヒスミ  自衛の必要無かった気がするケドね(笑)

ガヤン  こいつらはガヤンで話を聞くことにするよ。君たちは気をつけて帰ってくれたまえ。

ユズキ  ちょっと怪しいけど、ここで断るのもおかしいですね・・・。ええ、お願いします。

イングリッド  ふん。大したことの無いやつらだったわね。

ヒスミ  危ない所を助けていただいて、ありがとうございました(深々)

ライン  何もしてませんけどね。

ヒスミ  いえ。助けに来てくれた気持ちだけでも、すごく嬉しいです。あ、お礼にうちでお夕食でもいかがですか?

ユズキ  あ、それは良い考えです。さすがはお嬢!

イングリッド  丁度良いわね。あの蝶の痣、実は気になってたし。あ、今のは口には出さないから。

レベッカ  イングリッド。私、いま、きっとあなたと同じこと考えてたわ。

イングリッド  そうね。

レベッカ  ええ。夕飯のおかず買い忘れてたけど、何とかなりそうね。

イングリッド  いえ、多分それ、私と考えてること違う(笑)

ライン  えっと、私は・・・

ユズキ  さあさあ、そんなに遠くありませんから。

 

 と、半ば強引に誘われて一行は移動を開始。移動の途中、お互いに自己紹介を始める。

 

イングリッド  私はイングリッド。こっちが、ルームメイトのレベッカ。で、今肩に乗っているのが、私の使い魔。猫のシュレディンガーよ。

シュレディンガー  にゃー。

ヒスミ  わー、猫さんだー(なでなで)

ライン  猫にシュレディンガーなんて、ありがちな名前ですね。

GM  そうか? 僕はシュレディンガーて名前の猫は聞いたこと無いが。

ライン  シュレディンガーの猫も知らないんですか?

GM  あれは、シュレディンガーって名前の猫の話じゃないぞ。

ユズキ  シュレディンガーという名の人間が説いた例え話です。

ライン  でもシュレディンガーには違いないじゃないですか・・・(ブツブツ)

 

 などと、和気藹々と話しながら(1人ぶつぶつ文句ばかり言っている男がいたが)、やって来たその家とは・・・

 

風 龍 会

GM  街の東側の中心部。長く高い塀に囲まれ、頑丈そうな鉄の扉に守られた館。その扉が開くと、屈強な男達がずらりと並んでいる(仁義亡き戦いのテーマを流して)

男達  (一斉に頭を下げて)お帰りなさいませ、お嬢様!

ヒスミ  (男達に手を振って)ただいまー。

イングリッド  想像はしてたけど、本当にヤクザ屋さん? しかも、組長の娘っぽい?

GM  そんな様子だね。ミディアで1、2を争う裏タマット*1組織<風龍会>の。

ライン  こ、怖いんですけど・・・

ヒスミ  怖くないですよー。みんな良い人たちばっかりです。

ユズキ  あ、イングリッドさんたちはこちらへ。

 

 そして、イングリッドレベッカ、ラインが案内された部屋にいたのは・・・

 

GM  初老に入りかかっていながらも、二の腕太く、眼光鋭い、覇者の風格を漂わせた男が座っている。<風龍会>組長のゴウケンだ。

ゴウケン  娘の危ない所を救ってくれたそうだな。礼を言わせてくれ。

ライン  い・・・いえ。

イングリッド  挨拶はさせてもらうわ。中々の迫力ね。でも、まだまだって、思ってましょう。

ゴウケン  ほう。お嬢さんは、相当に肝が据わっておられるようだ。

イングリッド  これでも、それなりの修羅場は潜り抜けてきたつもりだからね。

ゴウケン  はっはっは! 気に入ったぞ。

イングリッド  そう? ありがとう。

ユズキ  あ、組長。このラインさんは、人を探しているらしいのですよ。

GM  (ユズキのPLは優しいなぁ)

ゴウケン  ほぅ。そうなのかね? 我々で力になれることがあれば、手を貸そう。

ライン  本当ですか?

ゴウケン  うむ。

ライン  では、私の名前はラインハルト・ヨー・・・

イングリッド  それはもう聞いたから、かくかくしかじかで十分よ。

ライン  でも、この人には言ってないですよ。

GM  他のPLは全員聞いたんだよ。

ライン  (不満そうに)では、かくかくしかじかで、この街に来た理由を説明します。

ユズキ  まずは、モンタージュ写真でも作ってはどうですか?

イングリッド  ここに、そっくりさんがいるから、簡単にできると思うわよ(笑)

ユズキ  ところで、さっきのカフェで話を聞いていたのですけど、レベッカさんと、ジェシカさんとはどのような関係で?

レベッカ  生き別れの双子の妹よ。姉かも知れないけど。

ライン  そうだったのですか。

 

 <風龍会>の絵師を呼んで、ラインは妻のモンタージュ写真を書いてもらった。

 

GM  ところで、「会」なのに「組長」ってのも変だよな?

ユズキ  新撰組は、〇番隊組長ですし、良いんじゃないですか?

ヒスミ  会長よりは組長の方が任侠っぽいので、組長がいいです。

GM  OK。じゃあ、組長で行こう。多分「会」の中にいくつも「組」があるんだろう。その中でもトップってことで。ラインの嫁のことだが、ゴウケンは裏タマットでも少しは情報を集めておいてやるってさ。

ライン  おお、それは助かります。

ヒスミ  (和服に着替えて登場)あ、皆様、先ほどは危ない所をどうもありがとうございました。どうぞ、ゆっくりして行ってください。

ライン  内気ですから、ここでゆっくりなんてできません~。

GM  和服の時も、刺青見えるようにしてるの?

ヒスミ  してませんよぉ。さすがに和服でそれは下品です。

ゴウケン  娘の礼もかねて、ささやかな宴会を開くとしよう。ぜひ、参加していってくれ。

イングリッド  参加したいのは山々だけど、うちに1人待たせているのよ。

ゴウケン  その者も呼んでみてはいかがかな?

イングリッド  ヤクザ屋さんに囲まれたんじゃ、あの子、暴走しかねないわね。

GM  ここで彼女が暴走したら、<風龍会>が壊滅の危機に陥るのは間違いないね(笑)

ユズキ  あなたの家は、どんな猛獣を飼っているのですか(笑)

イングリッド  今のは心の中のセリフ。誘ってくれるのは嬉しいけど、あの娘、体も弱いし気も弱いから、ここに連れてくるのはちょっとね・・・

ゴウケン  ならば仕方が無い。弁当箱に詰めて持っていくといい。家にいるというお嬢さんの分もな。

イングリッド  そうさせてもらうわ。

GM  そんなわけで、軽い宴会が始まる。

レベッカ  (箱に詰めながらつまみ食い)イングリッド、これ、すごくおいしいわよ。

イングリッド  あなたにとっては、無料の食べ物は何でもおいしいでしょう(笑)

レベッカ  そうだけど、これは本当においしいわ。

ゴウケン  はっはっは。気に入ってもらえたようだな。こちらとしても、ジンバチェーンの料理人を呼んだかいがあったというものだ。

イングリッド  なるほど。道理でおいしいわけね。

 

 ちなみに、ジンバチェーンとは、アンリ連邦最大の料理人集団のこと。創設者のハザン・ジンバはイングリッドのPLが以前演じていたキャラクターである。

 

GM  イングリッドは、家の近くまで馬車で送ってもらえた。宴のほうは、みんな酒が入って最高潮に達した所かな。

ライン  私はあまり飲んでいません。レベッカさんの横顔でも眺めて、ジェシカを思い出していましょう。

レベッカ  人の顔をじっと見ることが失礼なことだって、教えられてないのかしら。

イングリッド  貴族にしては礼儀知らずね。もしくは、ただのむっつり助平ね。

レベッカ  そうね。

ライン  顔は同じでも、ジェシカとは全然違いますね。ジェシカはもっと優しかった。

イングリッド  当たり前じゃない。双子でも別人なんだから。

レベッカ  そんなことも分からないなんて、ひょっとして彼、頭悪いのかもしれませんね。

ライン  知力11ですから頭いいですよ。

イングリッド  ああ、ヒビト・リョウヤ*2と同じ知力ね。

一同  (爆笑)

ユズキ  僕も知力は11ですけどね(笑)

GM  知力の高低=頭の良し悪しは直結しないからなぁ。ケルナー*3なんて知力14もあるんだし。

ヒスミ  (かなり酔っ払って)おらぁ、ユズキぃー、あたしのさけがのめんのかー?

ユズキ  の・・・飲んでますよ? 飲んでますので、もう勘弁してください・・・

ヒスミ  おー、のんでるかー。だったら脱げー!

ユズキ  え? いや、それは・・・

ヒスミ  あたしのいうことがきけんのかぁー! だったらぁ・・・とりゃ!(ユズキにのしかかって、服を剥ぎ取り始める)

ユズキ  お、お嬢! 止めてください!

ヒスミ  きゃはははは! ・・・ばたっ。くーくー。(眠ったらしい)

ユズキ  ああ! お嬢、こんなところで寝たら風邪ひきますよ! 寝室まで引っ張っていきましょう。

ヒスミ  寝ぼけてユズキを抱き枕にしよー。

ユズキ  え? あれ? ちょっと、お嬢離してください。

ヒスミ  くーくー。

ユズキ  ・・・朝、起きた時が怖いです(泣)

 

 そんなこんなで夜も深けて朝がくる・・・

 

GM  翌朝。

ヒスミ  おはよー。あれぇ? なんでユズキが一緒に寝てるのぉ?

ユズキ  お嬢に抱き枕にされていました(苦笑)

ヒスミ  ・・・ユズキのえっちぃ。

ユズキ  ええ? ぼ・・・僕は何もしていませんよ?

ヒスミ  女の子と一緒に寝てなにもしないなんて、甲斐性無しぃ。

ユズキ  なんだか、すごく理不尽な気がします(笑)

イングリッド  がんばれ少年!(笑)

GM  とりあえずヒスミとユズキは二日酔い判定ね。

ヒスミ  あうー・・・飲み過ぎたけど大丈夫ぅ~(成功)

ユズキ  うぅ・・・頭が痛いです・・・(失敗)

ヒスミ  情けないなぁユズキは。はい、お水。

ユズキ  あ、ありがとうございます・・・

ライン  私は途中で抜けたと思います。

GM  ふむ。ならば、<風龍会>が経営している高級なホテルの一室を用意してあげようじゃないか。

ライン  う・・・貧乏性なので落ち着きません。備え付けの石鹸とシャンプーだけもらって、飲み物とかには手をつけられないでいます。

イングリッド  確かに、貧乏臭いわね(笑)

ユズキ  ホテルの冷蔵庫は開けないに限りますよ(笑)

ライン  朝になったら、他にすることもありませんし<風龍会>に行きます。

イングリッド  他にすること無いって、本気で言ってる?

ライン  まだ、事件も起こってないじゃないですか。

GM  君は、何のためにこの街に来たんだ? 嫁探しはしないのか?

ライン  探そうにも、方法がないでしょう。<風龍会>は、庭に犬飼ってますよね?

GM  ドーベルマンをね。君にとっては嫁探しより犬を愛でることの方が重要なのか?

ライン  かわいいですねー。撫でに行きましょう。

ユズキ  止めとけ。ドーベルマンは飼い主ですら噛み付きかねない、獰猛な犬ですよ。

ライン  ちぇ。じゃあ、門から眺めていよう。

GM  すると、門番の初老の男が話し掛けてくる。

門番  にいちゃん。犬が好きなのかい?

ライン  ええ。

門番  犬は良いね。猫と違って、私たちに忠実だ。

ライン  そうですねー。

GM  さて、朝のまったりした空気が流れる<風龍会>に、1人の中年男が訪ねてくる。サングラスをかけてベージュのコートでビシッと決めた男、ユズキの情報面での「後援者」ガヤン神官のショウ・ソロゥリバーさんだ。

ユズキ  イメージは、まんま哀川翔です。

ライン  なんで哀川翔がガヤンなんですか?

GM  彼は警察役もよくやってるよ。ちなみに、ユズキの親父さんとは強敵と書いて“友”と呼ぶ関係だったらしい。

ユズキ  嫌いな人じゃないですが、怖い感じの人なので少し苦手です。

GM  そんなんで、よくヤクザ屋さんをやってられるな(笑)

ショウ  よう。ユズキとお嬢さんはいるか?

ユズキ  は・・・はい。

ヒスミ  あ、ショウさん。おはようございます。

ショウ  おう、おはよう。

ヒスミ  何かご用ですか?

ショウ  朝から悪いが、ちょっと頼みたいことと聞きたいことがあってな。昨日の乱闘騒ぎのことだが・・・

ユズキ  昨日の連中がどうかしましたか?

ショウ  ああ。あんたらを襲った連中は、ガヤンが連れて行ったという話だったな?

ヒスミ  はい。

ユズキ  ただ、見たことの無い顔でした。

ショウ  そうか・・・やっぱりな。そいつは恐らく、偽ガヤンだ。

ヒスミ  偽者?

ショウ  ああ。あの乱闘騒ぎでヒスミ嬢たちが撃退した・・・というか、自滅したチンピラ集団。そいつらを連れて行ったていうガヤン信者は、うちに来てねぇんだ。

ユズキ  他の地区のガヤンの人では?

ショウ  すでに確認したがそんなチンピラを連れてきたって奴は見つからねぇ。その様子じゃあ、あんたらも奴らがどこに行ったかは知らねぇみたいだな。

ヒスミ  はい。

ユズキ  では、頼みたいことと言うのは・・・

ショウ  チンピラやガヤン信者の行方を、あんたらのほうで探して欲しい。うち(ガヤン)の方でも、チンピラを連れて行ったガヤン信者って奴は探してみるが、偽ガヤンかもしれねぇって方向からだ。<風龍会>のお嬢さんを狙ったって方向からじゃねぇ。

ユズキ  どうします、お嬢?

ヒスミ  もちろん探しますよ。私のことを知っていて狙ったのでしたら、家に対する挑戦です!

ユズキ  そうですよね。舐められっぱなしじゃ、この社会じゃやっていけませんものね。

ショウ  頼んだぜ。見つけたら、ガヤンから報酬も出るだろう。スズメの涙だがな。

ユズキ  組の者たちにも知らせておきます。

ヒスミ  私たちは直接顔見たんだし、探しに行こうよ。

ユズキ  そうですね。でも2人だけでは心もとないです。

 

 ヒスミとユズキは、件のガヤン信者を見ていて、近くにいたラインも捜査の協力をしてもらえないか誘ってみることにする。

 

ライン  いいですよ。どうせ、他にやることもありませんし。

外野のイングリッド  一宿一飯の恩って言わないあたりが、やっぱりボンボンって感じよね。

ライン  助けてあげたのですから正当な報酬じゃないのですか?

外野のイングリッド  (ため息ついて)さあね。

GM  つか、ジェシカの「お祭り好き」って特徴。嫁探しをしやすくするためにつけた設定じゃないみたいだな。

ライン  「お祭り好き」だからって見つけやすくなるものじゃないでしょう。

GM  (いかん。こいつ想像力が低すぎる。何言ってもピントのずれた反論するから、周りもフォローする気無くなってるし。)

 

 そして、ユズキはヒスミの命により、組織の馬車で郊外の家にまで行きイングリッドレベッカも誘う。

 

イングリッド  OK、手伝うわ。(小声で)ヒスミちゃんの刺青のこともあるしね。ひょっとしたら、あのガヤン信者<風龍会>が目的じゃないかもしれないし・・・

ユズキ  もう一人ルームメイトがいるという話でしたね? 1人にさせて大丈夫なのですか?

イングリッド  ええ。今日は夕食までに戻れば大丈夫よ。

ユズキ  魔法使いが仲間になれば、事件は解決したも同然です。イングリッドさん、魔法で真犯人を見つけてください(PLは笑)

イングリッド  (苦笑して)魔法はそんなに便利なものじゃないわよ。

ヒスミ  あ、そうだ。マスターにお店休むって言っておかないと。

GM  お嬢はボランティアであの店で歌ってるんだよな。だったら、こっちは止める権利はない。ただ・・・

マスター  そうか。君の歌が聞けないのは残念だ。

ヒスミ  大丈夫ですよー。問題が解決したら、また歌わせてもらいます。

マスター  ああ。そのときは頼むよ。気をつけてくださいよ。

ヒスミ  はーい。

イングリッド  んじゃ、偽ガヤン探しを始めましょうか。

ヒスミ  事件捜査は現場からです。まずは周辺の聞き込みをしましょう。

ユズキ  分かりました。聞き込みは任せてください。

 

 一行はとりあえず、チンピラたちがどこの者かを知っている人間がいないか、乱闘騒ぎの現場周辺および裏通りで聞き込みをする。

 乱闘騒ぎがあった周辺では大した話は聞けなかったが、裏通りでは彼らは余所者でこの街にギャンブルで金を稼ぎに来ていた人たちという話が聞ける。通っていた賭博場の情報も得る。

 

ユズキ  その賭博場は、うちのシマですか?

GM  「地域知識/ミディア」で判定かな?

ユズキ  地域知識は持っていません。技能なし値で(ころころ)失敗。分かりませ・・・いえ、この店は、きっとうちのシマじゃないのですよ(笑)

イングリッド  その判定値だと、この街の70%は「うちのシマじゃない」になるわね(笑)

GM  あ、「裏社会」でもいいや。

ユズキ  それなら成功しました。この店は、うちの管轄です。話を聞きに行きませんか?

ヒスミ  あ、ユズキだけ遊びに行くなんてずるいー。私も行くー。

ユズキ  いえ、お嬢、遊びに行くのじゃないのですよ?

レベッカ  ねえ、ヒスミさん。あのお店に特大パフェってあるみたいだけど、食べてみない?

ヒスミ  ホント? 食べる食べるー。

ユズキ  レベッカさん、ナイス(親指を立てる)

イングリッド  あの娘が賭博場に入ると、転んで客のチップばら撒きかねないわね(笑)

ユズキ  ええ。ですから、近づかせないようにしています(笑) あ、レベッカさん。パフェのお皿に気をつけてくださいね。

レベッカ  (親指を立てて答える)あ、イングリッド。必要経費ってことでお金頂戴。

イングリッド  分かったわよ。まったく自分の財布は固いくせに(苦笑)

ユズキ  僕たちは賭博場に向かいますね。

GM  OK。中はなんてことのない平均的な賭博場だ。店員が声をかけてくるよ。

店員  申し訳ございません。当店は夜のガヤンの刻*4からの営業となっておりまして・・・

ユズキ  いえ。今日は聞きたいことがあってきたのです。僕は<風龍会>でヒスミお嬢の護衛をしている者なのですが。

店員  ああ、<風龍会>の。いつもお世話になっております。それで、聞きたいこととは?

ユズキ  かくかくしかじかで、その4人組を探しているのです。

店員  ええ、その人たちでしたら、確かによくうちにいらっしゃいました。

 

 店員達の話によると、チンピラたちがこの店に通うようになったのは1巡りほど前。やや負け気味で、1000ムーナ(約20万円)強の借金を背負っていたのだが、2日前まとめて返済したのだという。だが、周辺の賭博場で勝ったという噂も聞かないので、どこかから盗んできたのだとか、やばい仕事を引き受けたんじゃないかと噂する。

 ユズキとイングリッドは、チンピラたちは金をもらってお嬢襲撃を請け負ったのであろうと推測するが、それ以上の事は分からない。

 

イングリッド  その人たちが、どこに住んでいるとかは分かる?

店員  泊まっているホテルの場所でしたら分かります。借金が返せなかった場合、その宿で借金分働くという契約でしたので。

ユズキ  ずいぶんと良心的だなぁ。

店員  そこがうちの売りですから。

イングリッド  その宿に行ってみる?

ユズキ  そうですね。お嬢にどうするか聞きましょう(笑)

ヒスミ  パフェおいしー。あむあむ(笑)

 

 合流後件の宿に向かってみるが、チンピラたちが帰った形跡は無い。行き詰った一行は、裏タマット(別名自分の家のコネ)から情報を仕入れてみることに。

 

GM  後援の組織で話を聞くのに、「裏社会」判定は不要だ。

イングリッド  便利ね。

GM  実質そのために後援者にCP払ってるんだからね。技能で取るよりも多少は有利でないと。で、チンピラたちの情報だったね?

ユズキ  はい。

情報屋  お嬢様を襲った連中だな。あいつらならサリカの病院に入院してるぜ。

一同  (爆笑)

ユズキ  考えてみれば、あれだけの怪我を負ったのですから病院に行くのは当たり前ですね(笑)

GM  なんで誰もそれを思いつかないのかなーって、ずっと思ってたよ(笑)

イングリッド  PC側にはたいてい回復魔法があるからね。瀕死の重傷でも負わない限り無縁の場所だから(笑)

情報屋  そいつらから話を聞きたいんだったら早く行った方が良いぜ。奴らの場所はもう割れてるからな。若い組員は何をしでかすか分かったもんじゃねぇ。

ヒスミ  急ぎましょう。うちの馬車を使えば、すぐに着きます。

 

 一行はヒスミの仲間集団の1人、月の操る馬車を使って病院に直行。

 病院周辺をうろついていた<風龍会>の血気盛んな組員達に待ったをかけ、チンピラたちの病室を訪れる。

 

GM  チンピラたちは、君たちの訪問に驚いている。

ライン  そりゃそうでしょう。

ユズキ  別に、僕たちはあなたたちをどうこうするつもりはありません。ただ、質問に答えて欲しいのですよ。何故、お嬢を襲ったか。そして、あのガヤン信者は誰なのかです。

チンピラ  (目をそらして)・・・知らねぇよ・・・

イングリッド  あなたたち、自分が誰を襲ったのか知らないの?

ユズキ  こちらのお嬢は、<風龍会>組長の娘なのですよ?

ヒスミ  (胸を張って)その通りです。

チンピラ  とてもそうは見え・・・

ユズキ  (匕首をベッドに突き刺して睨みつけて)・・・何か言いましたか?

チンピラ  ひぃぃ!? いえ、何も・・・

イングリッド  そういえば、組の若い連中が外をうろついていたわね。呼んできましょうか?

ヒスミ  そうですね。そうしましょう。

チンピラ  い、いや待て、待ってくれ! 話す! 全部話すよ!

ユズキ  あ、ここにいるイングリッドさんは魔術師です。嘘をついてもムダですよ(PLは笑)

チンピラ  ま・・・魔術師!?

イングリッド  (苦笑して小声で)《読心》は使えないけどね。

ライン  魔術師ってだけで、そんなに驚くものですかね?

GM  魔法に無知なチンピラからしてみれば、ヤクザも魔法も両方怖いよ。

ライン そうですかぁ?

 

 チンピラたちの話は、一行が推理したこととほぼ一致する。

 乱闘事件の前日、金をやるから青い蝶の痣を持った女の子を襲えと頼まれたとのことである。依頼主は先日乱闘騒ぎの後に現れたガヤン信者だが、どこの誰かは分からないとのこと。

 ただ、チンピラの1人が、依頼主がグレートソードブレイカーを背負って歩いているのを見かけたことがあると言う。

 

ライン  グレートソードとグレートソードブレイカーは鞘の上から判別のつくものなのですか?

GM  つくよ。ソードブレイカーは両刃の剣とは形が違うから。もちろん偽装は可能だろうけど。

ヒスミ  といういことは、真犯人は本物のガヤン信者?

ユズキ  その可能性は十分にあります。相手が本職となると、厄介ですね。

イングリッド  でも、グレートソードブレイカーなんて使っている奴はそんなにたくさんはいないんじゃない?

GM  ま、うちのルナルでは特別珍しい武器ではないが、使う人は少ないだろうな。

イングリッド  だったら、絞込みはそれほど難しいものじゃないと思うわ。

ユズキ  どうします、お嬢? ショウさんに相談に行きませんか?

ヒスミ  そうですね。それが良いと思います。

ユズキ  外の組員に、あいつら適当に痛めつけて置いてくださいとだけ言ってガヤン神殿に向かいましょう。

ライン  さっき、どうこうする気はないって言ってたじゃないですか(笑)

ユズキ  ええ。確かに言いましたよ。ですから、「僕たちは」何もしません。

ライン  この悪党が。

ユズキ  別に否定しませんよ。

GM  助けに行く気は無いのか?

ライン  助ける必要は無いでしょう。

GM  「困っている人を見捨てない」誓いを持っているのにか?

ライン  別に困っていないでしょう。

 

 その後もGMは不利特徴通りに演じるようラインに言うが、屁理屈をこねて「誓い」を守ろうとするそぶりを見せないため、「誓い」を強制買戻しリストに追加することに決める。*5

 ガヤン神殿に場所を移した一行は、ショウに調査状況を話し、該当する人物に心辺りがないか尋ねてみる。

 彼の話によると、ミディア東区管轄のガヤン神殿内にグレートソードブレイカーを使う人物はニュウ・シンジャーとシン・カーンの2人しかいないらしい。

 

イングリッド  また、名前考えて無かったわね。

GM  何を言う。2人ともデータにその名が書かれているんだぞ。

ヒスミ  それって、考えてないのと大して変わらないんじゃ(笑)

GM  うぐ・・・

ユズキ  その2人、遠くから面通ししてみませんか?

ヒスミ  それが良いですね。

イングリッド  あ、ヒスミはここで待ってたほうが良いわよ。離れてても大抵気付かれるから(笑)

ヒスミ  えぇー!(PLは笑)

ユズキ  お嬢、僕の分のお茶菓子も食べてください。

ヒスミ  ホント? ラッキー(笑)

 

 その隙に面通しをする一行。

 ニュウ・シンジャーは歳も背格好も全然別人だったが、シン・カーンが件のガヤン信者と顔がそっくりであることを確認する。

 

GM  ちなみに、シン・カーンは経理部の人間で、外回りはやらないそうだ。

イングリッド  なるほど。道理で聞き込みしても誰も知らなかったわけね。

ユズキ  パトロールしてたら、大抵顔は誰かに覚えられるものですからね。

イングリッド  さて、どうやって追い詰める?

ユズキ  ここは、イングリッドさんも魔法でバーンと・・・

イングリッド  だから、魔法はそんなに便利じゃないわよ。

ヒスミ  余の顔見忘れたかー! ってやってみたいなぁ(笑)

イングリッド  今回の場合は証拠がないと白をきられて終わりよ(苦笑)

GM  (実はそれやると、すごく揺さぶられるんだけどね(笑))

ユズキ  経理部って、そんなに儲かるのですか?

ショウ  いや。普通だな。

ユズキ  1000ムーナ(約20万円)のお金を、どこで手に入れたのでしょうね? そこそこ大金ですよ。

イングリッド  まさか、横領?

GM  まあ、1000ムーナくらいだったら、貯めようと思えば普通に貯められる額だけどな。平均収入が週給・・・ルナルじゃ巡り給だろうけど約200。1人暮らしなら1巡り70もあれば生活できるから8巡り(2ヶ月)もあれば貯まる。

ユズキ  シン・カーンはお金を溜めるタイプだったか周りに聞いてみましょう。

GM  ふむ。すると、シン・カーンはアルリアナ神殿にお気に入りの子がいて、その子にかなりの額つぎ込んでいたし、ギャンブルも好きだったからとてもじゃないがお金を溜めているようには見えなかったという話が聞ける。

ユズキ  ショウさん、偽造を見抜いたりするのは得意ですか?

ショウ  ああ。

ユズキ  でしたら、シン・カーンがいなくなったときに2巡り分ほどで良いので書類のチェックを行ってもらえませんか?

ショウ  ああ、分かった。

ユズキ  お嬢、それで良いですか?

ヒスミ  もちろんですよ。

 

 その夜、シン・カーンが定時で帰った後に、ショウは偽造の証拠を探し書類と睨めっこを開始する。

 ショウの変わりにユズキに偽造チェックの「管理」判定を行わせてみた所クリティカル成功。書類の中に、わずかな額ではあるが横領を隠した痕跡が見つかった。

 

ユズキ  襲撃の証拠ではありませんが、これで拘留できます。

イングリッド  別件逮捕って奴ね。

ヒスミ  なんで私を襲ったかは取調べで吐いてもらいましょう。

 

Blue Spider

 

 そして翌日。ガヤン神殿に出勤してきたシン・カーンは、昨夜家に帰ったレベッカを除く一行が見守る中、昨日まで同僚だったガヤン信者たちに囲まれることになる。

 

GM  証拠を突きつけられてシン・カーンは観念したのか取調室で話すと言っているね。Yシャツとズボンの軽装にさせられ取調室へ向かうのだが・・・全員視覚で判定。

イングリッド  視力は低いのよね。あ、でも5成功。

ユズキ  僕も同じです。

GM  だったら、Yシャツの隙間からちらりと青い蜘蛛の刺青が見えた気がする。

イングリッド  何っ!?

ユズキ  蜘蛛!? 蜘蛛は怖いので見なかったことにします!

ヒスミ  ユズキって、昔から蜘蛛嫌いだったもんねー。

ユズキ  そのことで、お嬢にいじめられたこともあります(笑)

ライン  青い蜘蛛はガヤンの使いですよね?

ヒスミ  ほらほら、やっぱり今は青が流行なのですよー(笑)

イングリッド  気をつけてみんな。あいつ、まだ奥の手を隠している可能性があるわ。私たちも取調室の前に行くわよ。

ヒスミ  そうですね。話も聞きたいですし。

ユズキ  ・・・

GM  さて、では狭い廊下の奥にある取調室の前に君たちが辿り着いた時、中から机が倒れて壊れるような音と、ショウさんと書記の驚愕の声が聞こえる。

ヒスミ  ドアを開けます!

GM  部屋は3メルー四方もない小さな部屋なんだが、その部屋にギリギリは入れるほどの巨大な青い蜘蛛がいる! その蜘蛛には頭部が無く、その代わりに本来頭がある場所からシン・カーンの上半身が生えている。シン・カーンの背中から、さらに4本の蜘蛛の足が生えているね。合計12本の蜘蛛の足があるわけだ。

ユズキ  く・・・蜘蛛!? 恐怖判定には成功しましたが、く・・・蜘蛛は・・・蜘蛛は怖いんですよー! てか、なんで今日データ見せたばかりなのに、ピンポイントで弱点突くことができるんですかこのGMは(笑)

GM  第1話に蜘蛛は、王道中の王道だ! 君のデータ見て「蜘蛛恐怖症」があったときは笑いかけたよ。

イングリッド  特撮ファンにしか分からない理論ね(笑)

ヒスミ  そんなことより、ショウさん書記さん、早く外へ!

ショウ  す・・・すまねぇな。俺は投極術は得意だが人型で無い化け物と戦う手段は持ってねぇんだ。

ヒスミ  うわ、役に立たねー(笑)

イングリッド  無能ね無能(笑)

ショウ  そりゃねぇだろ、嬢ちゃんたち(苦笑)

シン・カーン  すまないが君たち。このまま俺が逃げるのを黙って見過ごしてはくれないか?

ユズキ  僕は逃げてくれるなら喜んで見逃します。

イングリッド  同感。

ライン  <悪魔>を見逃すわけには行きませんよ!

シン・カーン  この力は<悪魔>のものじゃないよ。

ライン  だからと言って見過ごすわけには行きません! 自分に《すばやさ》をかけて切りかかります!

ユズキ  あ! バカ!

シン・カーン  ま・・・

ライン  ダメージは7点!

GM  ふむ。4点止めて、「切り」だから4点ダメージか。(あーあ、やっちまった・・・)

ライン  よし。この程度の防護点なら勝てる。

ユズキ  僕たちは避難していましょう。

ヒスミ  そうだねー。

ライン  なんで援護しないんですか!

イングリッド  話も聞かないで1人で勝手に切りかかっていくような奴と一緒に戦う義理はないわ。

ヒスミ  うんうん。

ライン  相手は怪物ですよ!?

イングリッド  怪物だからって、理性のある相手の話も聞かずに切りかかったの?

ライン  <悪魔>かもしれないじゃないですか! それなら普通戦おうとするでしょう!?

ユズキ  (ため息)それを判断する話しすら聞こうとしなかったでしょうが。

GM  (<悪魔>を見かけたら、逃げることを考える方がよほど普通だと思うがなぁ。)

シン・カーン  (頭を押さえて苦しそうに)ぐっ・・・バカが・・・人の・・・話を・・・聞かないから・・・。も・・・もう止められんぞおおぉぉぉぉ!!

GM  叫び声をあげてシン・カーンはバーサーク! とりあえず、目の前のラインに蜘蛛の足4本+蜘蛛の糸の5回攻撃。

ライン  げ?

 

 5回攻撃全てを回避できるほど強いわけでないライン。妙な理屈でごねてくるので、屋内でしかも話し合いに向かう途中であったにもかかわらずフル装備であることは認めたが、蜘蛛の足で2回殴られてしまう。

 

GM  ダメージは(ころころ)低っ! 8点と11点。

イングリッド  気のせいかしら? 今、GMサイコロ4個振ってなかった?

GM  (爽やか笑顔で)あ、気のせい気のせい。5個ふってたから。

イングリッド  うわ。むかつくくらいあっさり言いやがったわ(苦笑)

ユズキ  やっぱり蜘蛛は怖い(苦笑)

ヒスミ  戦わなくて良かったぁ・・・

ライン  なんで第1回から、こんな強い敵を出すんですか!

GM  (文句多いなこいつ・・・)第1回に強い敵を出してはいけないなんて誰が決めた? それにゲームが始まる前に警告したはずだぞ。さらにシン・カーン自身の指先から蜘蛛の糸が放たれ、君を絡め取る。

ライン  だめです。当たりました。

GM  じゃあ、こちらの蜘蛛糸の体力15と即決勝負*6に勝って引きちぎるか、切るか焼くかするまで動きを阻害されるから、敏捷力に-4ね。移動もできない。あ、バーサーク中だったのに全力攻撃し忘れてた。次は6回攻撃だわ。

ライン  死・・・死ぬ! このままじゃ死ぬ!

ユズキ  (ため息ついて)さすがに何もしないのは気が引けるなぁ・・・しょうがないか。第1回から使うことになるとは思わなかったけど、切り札を使わせてもらおう。魔銃の「火球弾」で蜘蛛の糸を焼く!

GM  「優柔不断」の自制判定を。焼く以外に引っ張る、短剣で切るなどの方法も考えられるからー4で。

ユズキ  失敗・・・いえ、幸運を使って成功。 「準備」、「再装填」、命中判定(ころころ)全部成功。ダメージは9点。

GM  うむ。蜘蛛の糸は8点ダメージで切れるから、君の魔法の銃から放たれた炎の弾丸は蜘蛛の糸を焼き切った。

ヒスミ  そして、私がこいつ(ライン)を引っ張って・・・

イングリッド  私がドアを閉める! 

GM  ナイスコンビネーション。

イングリッド  それにしてもユズキくん、そんなもの持っていたのね。

ユズキ  切り札ですから、あまり使いたくなかったのですけどね(苦笑)

ライン  助かったぁ・・・

GM  中のシン・カーンはドアをガンガン叩いている。丈夫そうなドアだけど壊されそうだ。

イングリッド  逃げるわよ。廊下は狭いから、あいつじゃ追って来れないでしょう。

GM  正解だ。ドアは壊されたけど部屋から出られない。ガヤンの人たちは、クロスボウを持って集まってくるけど、向こうさんが吐いた蜘蛛の糸で1人が危うく引き込まれそうになったので、遠巻きに見ているしかない。しばらくするとバーサーク状態が収まり、取調室の壁をぶち壊して外へ逃げていったみたいだ。

イングリッド  ちなみに聞くけど、あの蜘蛛に勝てる可能性ってあった? クリティカル連発とかは無しで。

GM  一応、ガヤン神殿内の広い場所で戦うことになれば、周りのガヤンが総出でガヤンネットを被せて動きを阻害したから、その隙に倒せる可能性はあった。

ユズキ  「取調室で全て話す」って言ってましたからね。恐らく、全部計算のうちだったのですよ。完全に僕たちの詰めが甘かった。

GM  もし倒せてたら、かなり多めにCPあげるつもりなくらい倒すのは難しかったんだけどね。

ライン  (イングリッドに)あの、気絶しそうなので回復呪文かけてください。

イングリッド  (睨みつけて)なんで私があんたの尻拭いをしなきゃなんないのよ?

ライン  仲間じゃないですか!

イングリッド  あんたの仲間になった覚えはないわ。

ライン  分かりました。サリカ神殿で回復魔法かけてもらいましょう。

GM  治療費は払っておけよ。紹介料+HPフル回復セットで300ムーナ。

ライン  高すぎですよ!

GM  保険もないのに、高等医療を受けるにしちゃ破格に安いよ。通常速度で回復したいなら払わなくてもいいよ。君の場合は生命力から考えても3巡りはかかるだろうけど。

ライン  けちんぼの自制判定は成功したので払いますよ。イングリッドさんが治してくれれば、こんなお金払わなくて良かったのに・・・(ぶつぶつ)

イングリッド これに懲りたら、今後無謀な行動は慎むことね。

ユズキ  ところで、イングリッドさん。あなた、取調室に行く前に「奥の手を隠しているかも」と言いましたよね? シン・カーンが変身することを知っていたのですか?

イングリッド  ・・・・・・

ユズキ  あいつは蜘蛛の刺青をしていましたが、あれと何か関係があるのでしょうか? たしか、ジェシカさんの手の甲の刺青がどうとかという話もしていましたよね?

イングリッド  (ユズキから目をそらす)

ユズキ  ・・・話したくないのでしたら、これ以上は聞きません。ただ、お嬢の青い蝶は違いますよね?

ヒスミ  (心配そうに)ユズキぃ・・・私、蝶々になっちゃうのかな?

ユズキ  お嬢・・・

イングリッド  ・・・・・・

ヒスミ  ・・・素敵だよねぇ・・・

一同  は?

ヒスミ  青い羽が背中から生えてくるといいなぁ。空が飛べるようになったら、すごいと思わないユズキ?

ユズキ  そうですね。お嬢が変身したら、きっと素敵ですよ!

ヒスミ  蝶サイコー

ユズキ  その言葉は変態が使うものです。お嬢が使うべきではありません(笑)

ヒスミ  ぶー。

イングリッド  (苦笑して)・・・ずいぶん変わった子ね。

ヒスミ  変わってませんよー。普通ですよー。

ユズキ  そうですよ。お嬢は、ヤクザの組長の娘で、細腕で大剣振り回して、鎖骨に露骨に怪しい青い蝶の痣があって、ちょっと世間からずれてるだけの、普通の女の子ですよ!

ヒスミ  なんかひどいこと言ってる気がするけど、まあいいやー。

イングリッド  そういうのを変わってるって言う気がするんだけど(苦笑)

 

 ヒスミの持つ蝶の痣は何なのか? シン・カーンがヒスミを襲わせた理由とは? そして、イングリッドは一体何を知っているのか?

 様々な謎を抱えつつ、物語は始まった。

 

ユズキ  何なのかも何も、お嬢の鎖骨の痣はただの痣ですって(笑)

ヒスミ  そうそう。生まれたときからあって、成長すると大きくなって、綺麗な青い色してるだけだよぉ(笑)

イングリッド  こいつら・・・(苦笑)

  

次回に続く

*1:裏社会を生きるものが所属する組織。大抵は多くのファンタジー世界にある盗賊ギルドに近い。

*2:ルナルリプレイや小説版のカルシファードシリーズの主人公。ことあるごとに仲間の魔術師に魔法で解決できないか尋ねるなど、あまり頭が良くは見えない方向にキャラ立てしている。

*3:ルナルリプレイ第2部に登場した魔術師。多数の呪文を覚えているが、いまいち使いこなせていない。

*4:この世界は、日が昇っている時間と日が沈んだ時間の二つに分けた後、赤と青の月に住む8大神の名前を付けた時間で区切るようにしている。なので一刻は1時間半となる。季節にもよるが、夜のガヤンの刻は18時ごろ。

*5:GURPSでは特徴を演じることがシナリオ達成より重要にすることを推奨されている。プレイヤーがキャラクターの特徴通りに演じられなかった場合、シナリオ終了後の成長CPを減らしたり、不利特徴の買戻させることができる。

*6:特定の能力、技能等を基準にしたサイコロの振り合い。成功度が高かったほうが勝つ。