黄金の羊亭新館

ガープスルナルのリプレイを公開しています

借免許の英雄たち

外伝(下)「月ノ華ニテ、天ヲ照ス」

始めて会った時はただ彼女に嫉妬した。彼女があまりに強い力を持っていたからである。それからすぐに打算が働き彼女から力を分けて貰おうと思った。 今思えば、彼女の力を通してある「モノ」を自分が追っていたことに気がつく。それに気がつくまでにずいぶん…

外伝(上)「霧の女王」

目が覚めたら知らない世界に一人だった。 それまで頼っていた仲間も、住んでいた場所もなかった。頼れるのは一人だった。 だから彼に頼ろうと思った。 外伝(上)「霧の女王」 GM: さて前回のCPでどう強化したかね? アイス: えーと、今回の成長CPは…

外伝序章 「再動という名のプロローグ」

戦いがあった。世界をかけるほどの巨大な戦いが。 英雄がいた、力を併せその巨大な戦いに臨んだ英雄が。 戦いが終わり、彼らには安息が訪れるはずだった。 だが・・・ 外伝序章「再動という名のプロローグ」 GM: ではゲームを始める。 一同: (歓声) ア…

第20話「借り免許の英雄達」

ここに一つの物語が終わりを迎える。 長き旅の中で彼らは何を思うたか。 長き旅の終わりに彼らは何を得たのか。 全てはここに・・・ 第20話「借り免許の英雄達」 GM: では恒例の成長報告をお願いしようかな。 アイス: 最終回だっていうのになんかいつ…

第19話「英雄免許貸出し中」

「力が欲しい」 そう願ったのは何時だっただろう? もうずっと昔の気もするし、ほんの少し前の気もする。 けれど、一つ言えることは自分は力が必要だったということ。 そしてその力がすぐ目の前にあるということだ。 つまり私の願いは叶うのだ! 第19話「…

第18話「8番目の月」

その空間の外には何もなく、その空間の中には「世界」が広がっていた。ゆえに見ようによってはその世界を統べているのはその男だと言えたかもしれない。 しかし彼はそこでただ動かず、世界をゆっくりと見つめていた。世界にわずかな揺らぎが生じた。 「この…

第17話「ほんの少しの勇気と愛で~後編~」

わたしはくらいところがすきだった。 だってくらければ、なんにもかんがえなくていいから。 むかしはあかるいところにもでたかったけれど、いまはいや。 だってくらいところからでようとすると、ひどいめにあうから。 だからわたしは、くらいところでうごく…

第16話「ほんの少しの愛と勇気で~前編~」

誰かが言った。「知っていて、何もしないことは罪である」と。では私のやったことは罪なのだろうか? 私は知っていた。お父様の中にもう一人の「誰か」がいることも。お父様がその「誰か」と必死に戦っていたことも。 お父様が私のために、たくさんの犠牲を…

15・5話「主なき栄誉」

荒廃した世界には狂気と退廃が蔓延する。そしてこの広場に集まった民衆が持っていたものは間違いなく前者の感情であった。 その感情を一心に受けているのは中央で張りつけにされている男。本来であれば美しいかったであろうその衣装も、手入れが行き届いてい…

第15話「たとえifでも」

w世の中は不確かだ。 一寸先は闇、いかに叩こうがあっけないほど簡単に石橋は落ちる。だから人は灯りを欲して、群れる。そしてたとえそれが一瞬であっても灯りを欲する。 しかしそんな不確かな世界だから起こることもある。 例えば今目の前にいる、異形の一…

第14話「全てはifで」

二つの世界を巡る消滅の噂は徐々に世界に広まっていった。各国のトップはその対応に追われた。しかしその中で一人苦悩する者がいた。 「世界に広まったこの噂を消さねば国中で混乱が起こる」 (しかしそれを広めたのは私だ) 「全ては証拠をともわない虚言だ…

第13話「けものみみ、ふぇすてぃばる」

世界が滅びる! その幻影にうなされる人々は日に日に多くなった。世界は少しづつ混乱に包まれていった。 だがその人達の対応は様々だ。ある者は団結し世界を救おうとし、またある者は信仰を強め、ある者は全てを放棄した。 そしてここにある結論に達した者が…

第12話「甘くて冷たい名探偵」

GMは考えていた。次回のセッションは奇跡的な巡り合わせでいつもの倍近い時間が取れる。ならばシナリオもそれ相応のものを用意せねばいけない。 考えた末にGMはミステリーを選んだ。いつもの時間では消化しきれないこういった類のシナリオこそ長時間のセ…

第11話「変わりゆく時の中で」

月が大きくなる 月がもっと大きくなる 月がもっともっと大きくなる そして世界は滅ぶ それは嫌だ、それはごめんだ せめて私だけでも救うすべはないのか? 第11話「変わりゆく時の中で」 GM: さて、成長報告をしてくれ。 ラック: わいは「槍」を上げた…

第10話「不屈なる者」

「そうだ奪えばいいんだ」 彼女がそれに気がついたのは10歳の時だった。彼女の家は代々ガヤンの家柄で彼女の父親もまた高潔なガヤンの神官だった。 そんな高潔な父から彼女は様々なことを教わった。彼女は父が嫌いだったが家では父の言うことが絶対での父…

第9話「ブレイバー」

え、何ですかお客さん?ええ、その奥にあるのは確かに「イブニング・スター」ですがそれが何か。振ってみたい?どうぞ、どうぞ、ただし店の外でやってくださいよ。 どうでしたか振り心地は・・・ええ、そうでしょうそいつはうちで扱ってる武器の中でもピカ一…

第8話「その一言が言いたくて」

酒場に美しい歌声が響き渡る。その旋律に乗って一つ物語が紡がれだす。それはある島国で起こった冒険譚。 美しい歌声と重厚なストーリーはそれだけでそこを安酒場から島国の戦場に変えた。何時しかヤジやざわめきもなくなり、人々はただ紡がれる叙情詩に心奪…

第7話「真実だけが重すぎて」

私は満足であった。 剣聖。この小さな島国でその名で呼ばれるようになってから幾つの月日がたったか。地に埋もれし流派を独自に再建し、試合いや死合いを重ね幾年月。 気がつけば私は勝利の突端で飽いていた。誰もが望む高みが私にもたらしたものはただの虚…

第6話「金と銀」

エルファとして生まれた彼女は幸せだった。 なぜなら弱い自分を守ってくれるすばらしい人々が周りにはいたからだ。勿論それに甘えることはよいことではないと思っていた。でも周りに頼りになる人々に囲まれて彼女は心強かった。 やがて彼女はその中の一人と…

第5話「クロックナイト・ワンスモア」

魔女は始めから魔女ではなかった。少なくとも彼女の両親が自分の顔を焼くまでは彼女は心優しい少女であった。 両親が彼女の顔を焼いたのは、毒虫に刺された彼女を守るためのやむおえぬ手段であり。事実彼女の顔の傷は腕の良い医者によってほとんど完治した。…

第4話「黄霧の中のアベンジャー」

男は襲われていた。 10年もの間ジェスタの守護騎士として様々な地を渡り歩き、数々の武勲を上げたその強靱な肉体は今や見る影もなく。いかなる時でも折れることのなかったその精神も今は絶望と混乱の極みにあった。 判らない・・・ なぜ自分の斧は敵を捉え…

第3話「白の埋葬者」

女は今まで自分が生きていたと思ったことはなかった。自分の人生は狂っていたのだ、それも生まれてきた時からだ。 実際彼女の人生から不幸をとれば惰性以外残らないほど彼女の人生は不幸だった。そしてその中で彼女は死を迎えようとしている。 アルリアナの…

第2話「たった二つの冴えた選択?」

男はこの町で長いこと故買屋を営んでいた。この商売に必要な者は三つ。客を裏切らない鑑定眼と、客のことをしゃべらない堅い口と、いざという時に嘘をつける軽い口だ。 そう言った意味で言えば20年近くこの町で商売をしている男はその三つに関しては誰より…

第1話「全ては唐突に」

少年はただ少女の手を握って走った。本来であればその行為は僅かばかりの葛藤と、少年の思考を停止させるほどの暖かさを与えてくれるはずだ。 しかし今の少年の心にそれが入る余裕はない。少年の心には熱い鉄の蓋がされていた。 ここに逃れるまでにどれほど…